作品解説

『赤とんぼ』（TIFF10出品）のリャオ監督の2本目。幼なじみのグオフイとペイリンの出会いと別れを3つのパートに分け、過去と現在を往還して描く、ノスタルジー感覚と実験精神に溢れた青春ドラマ。シンガポールの南、セント・ジョーンズ島の風景が懐かしさを誘う。

あらすじ

シンガポールの南にあるセント・ジョーンズ島を舞台にした、緩やかにつながる3つのストーリー。「第1話：はみ出し者の丘」では、島にある更生施設の少年たちが制服で教練を受けているなか、ひとりの少年が隊列を抜け出し、海を泳いで島から脱走する。向こう岸の花火が夜空を染める。「第2話：明日の歌」は、グオフイとペイリンの恋の顛末。子供時代を仲良く一緒に過ごしたのちに疎遠になり、いま再び付き合うふたりだが、その間にふたりにもコントロールできない冷たい風が吹きはじめていた。「第3話：あの頃のように」では、島を訪れたジャズ歌手のレイチェルが溺れかけているところをグオフイが助け、ふたりは仲良くなるが、キャンプファイヤーの夜、グオフイはペイリンの幻影を見る…。『赤とんぼ』(TIFF10出品)に続くリャオ監督の2作目は、前作と同様、人間の記憶と愛の不毛に関する静謐な物語が展開されているが、闇を切り裂く炎や光の鮮烈さなど、前作より一層スケールアップしている。

◆監督メッセージ
アメリカで3年を過ごしシンガポールに帰ってきた時、子供の頃に育った町が違うものになっていることに気付きました。この映画においてロマンスは変化を語るための手段です。互いに分かりあえなかったせいで別れたふたりの恋人たち、最も親密な関係のなかにさえ存在する壁――。心は変わってしまい、思い出は色あせてしまう。子供の頃になじんだ場所が都会へと変貌していく。子供の時に泳ぎを学んだプール、シンガポールと沖合の島とを隔てる海。水というモチーフだけが変わらずにそこに留まり続けています。

●東京国際映画祭オフィシャルニュース　映画.com ニュース
⇒ 10/29:「あの頃のように」リャオ・チエカイ監督がセント・ジョーンズ島を舞台にした理由
⇒ 10/27:「あの頃のように」監督、舞台のセント・ジョーンズ島は「シンガポールの歴史が刻まれている」

○オフィシャルレポート
→11/12:「人間、変わるのが自然な姿ですよね。」アジアの未来『あの頃のように』-10/29(水)：Q&A