作品解説
成功を収めている作家が、自分のアルコール依存症体験を語る。自らが収容された施設での他の患者たちのエピソードを交え、底辺でもがく人間たちの心の闇を描くドラマ。
『失われた週末』(45)や『リービング・ラスベガス』(95)など、アルコール依存症と作家(後者は脚本家)を描いた名作は多いが、本作もその系譜に連なる作品である。原作小説はフィクションではあるが、作者は愛飲家で知られ、自身の体験が多少なりとも反映されていると推察される。本作の描写の過激度は突出しており、時に正視が辛いほど露悪的である。しかし、『ダーク・ハウス/暗い家』で09年の東京国際映画祭に参加したスマルゾフスキ監督の映像感覚は冴えを増しており、依存症に陥る過程や、そこから脱しようとする苦しみを描くことで人間の本質に迫ろうとしながらも、映像的なカタルシスを追求する姿勢は徹底している。時制を頻繁に入れ替え、微細に編集を繋ぎ、時間の感覚を失ってしまった劇中の人物たちと同じような感覚に観客を誘う。過激に見えながらも人間の心の脆い部分を丁寧に紡ぎ、愛の力に希望を託しつつ、人間の闇に真正面から向き合い、圧倒的な強度を備えた作家映画である。
●東京国際映画祭オフィシャルニュース 映画.com ニュース
⇒ 10/30:アルコール依存をリアルに描くポーランド映画監督「老若男女、貧富も関係ないすべての人間の問題」
○オフィシャルレポート
→11/11:「一番の狙いは、直線的な時間というものをなくしてしまうという事でした。」コンペティション『マイティ・エンジェル』-10/27(月):Q&A
→10/28:「どんな作品であっても挑発しなければいけない。軽いテーマで映画を作ることにはまったく興味がないのです。」公式インタビュー コンペティション 『マイティ・エンジェル』
→10/27:「この映画は、実際は私についての映画です。」コンペティション『マイティ・エンジェル』10/24(金):Q&A