左からヴォイテク・スマルゾフスキ監督とヤツェック・ジェハックさん
10/27(月)、コンペティション『マイティ・エンジェル』の上映後、ヴォイテク・スマルゾフスキ監督とプロデューサーのヤツェック・ジェハックさんのQ&Aが行われました。
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Q:監督には『ダークハウス』という作品で東京国際映画祭のコンペティション部門にご参加いただいたことがあります。今回はそれ以来の来日で、誠に強烈な作品を作っていただきました。15本のコンペティションの中でももっとも個性的な作品の一つだと思っております。
ヴォイテク・スマルゾフスキ監督(以下、監督):ご招待いただきまして、ありがとうございました。皆さんと今日ご一緒できて光栄に思っております。まず私から皆さんに質問したいのですが、主人公イエジが飲むことをやめられると思う方は手を挙げていただけますか?この前よりもずっと多いですね。
もう一つ質問です。直接的に、あるいは間接的にアルコール依存症に関わった方がいらっしゃったら手を挙げていただけますか?この前よりもちょっと良いようですが、あまり嬉しい結果ではないですね。
Q:プロデューサーのヤツェック・ジェハックさん、一言いただけますか?
ヤツェック・ジェハックさん:東京国際映画祭に選ばれたと聞いたときに、びっくりしたと同時に非常に光栄に思いました。というのも東京国際映画祭はとても評判がいいのです。皆さんがこの映画を観て下さったことをとても嬉しく思いますし、この作品が多くの日本の皆様にとって大事な一本になることを願っています。
Q:これほど強烈な人の心をえぐる作品を作られたということは、プロデューサーか監督が、アルコールの後遺症で苦しまれた過去があるからなのでしょうか?
監督:私はお酒の専門家が勢ぞろいしている国で生活していますし、私もそれなりに専門家なのですが、トップリーグでプレーしているというわけではないです。私の趣味が転じてこの作品を撮ったということで、ここでこの話は打ち切りにしましょう。
Q:私の仕事は精神病院でのソーシャルワーカーで、とくにアルコール依存症と薬物依存症が専門です。私にとってこの映画はとくに特別なものではなく、まさに起こっている事です。その現実をきっちり描いていただいたことは非常に意味があり、ありがたいと思いました。
監督:私は警鐘を鳴らしたいと思ってこの映画を撮りました。お客様一人ひとりとこういうかたちで質問を受けて答えるというのは、感情が直接伝わってきます。そういう方のために映画を作ったんです。アルコール依存症という病気になったこともなく、認識がない方には、この映画はあまり意味がないでしょうし、映像の美的感覚が違っていたらこの映画を見てもあまり強い印象はないと思います。
Q:ちょうど昨日『神様なんかくそくらえ』という映画を観たのですが、どうして観客も映画監督もこういう依存症の話に興味があるのだと思われますか?先ほど飲酒はポーランドの国技であるというお言葉がありましたが、どうしてそういうことに興味がおありなのでしょうか。
監督:アーティストや映画監督を一括りにすることはできないので、私個人の立場からしかお答えできませんが、私の作品のどれをとってもお酒はつきもので、私が育ったのもお酒の匂いがプンプンするところでした。それで今回はお酒について映画を作ってみようと思ったまでです。今さらという感じですが、闇と悪は明るさと光よりも面白いのではないかと個人的に思っています。もちろん映像的にという意味ですが。
Q:素晴らしい作品をほかにも撮っていらっしゃいますが、コメディーはどうなのでしょうか?
監督:僕は毎回毎回コメディーを作る予定でいるんです(笑)
Q:作家という人が本当にいるのか、お酒を飲んでいる人の妄想で作家なのかが分からなくて、その答えとなるキーパーソンがATMで出会った女性なのだと思うのですが、その女性の作品における存在というのを教えていただけますか?
監督:この作品を作ったときの一番の狙いは、直線的な時間というものをなくしてしまうという事でした。時間の境目がはっきりとしたものではなく、流れるようにしたいと思ったのです。結局、観ている方に、彼はまだ飲んでいていいのか、それとももうやめたほうがいいのかという問いを投げかけたつもりです。実在する人物、それと作家の想像力の産物でいろいろな人物が登場してきますし、カフカとかナボコフとかも出てきますけれども、それを基準にして、観る方がどの部分が現実で、どの部分が主人公の想像なのかを捉えていただければと思います。最後のシーンに近づくと、時間がまた直線的になるんですね。私の希望としては、ようやく主人公が治療をまた始めようと思い立った瞬間だと信じたいんです。