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2014.11.13
[イベントレポート]
「映画の歴史の中で、私たちの記憶に残るものはハッピーエンドの映画ではない」コンペティション『メルボルン』-10/30(木):Q&A

Melbourne

©2014 TIFF

10/30(木)、コンペティション『メルボルン』の上映後、ニマ・ジャウィディ監督のQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
ニマ・ジャウィディ監督(以下、監督):みなさんこんばんは、今日は私の作品を見に来ていただいて本当にありがとうございます。実はこの会場にはイラン映画の巨匠、アミール・ナデリ監督が来ています。私は小さい頃、アミール・ナデリ監督の作品に強く感動をして映画館に足を運ぶようになりました。今日はここまで来ていただいたことについて、ナデリ監督にもお礼を言いたいと思います。
 
司会:矢田部PD:ありがとうございます。1問目は私から伺いたいと思います。まずタイトルの『メルボルン』という言葉なのですが、これはやはりイランの若者たちにとって海外に行くということは大きなことであって、その重大さゆえに(作中のような)ああいった行動に出てしまう、ということを強調するためにあえて『メルボルン』というタイトルを使われたのでしょうか。
 
監督:『メルボルン』というタイトルにしたのは2つの理由があります。1つは、メルボルンが10年前から世界で最も住みやすい都市にノミネートされていることにより、イランの若者の間で海外に移住するときにはメルボルンに住もうという考えが広がっているということが挙げられます。もう1つの理由はメルボルンという発音や語感が、私自身小さい頃から好きだったからです。
 
Q:このストーリーは何かきっかけがあったのでしょうか。
 
監督:本作の脚本は私が書いています。4~5年前に友達と別荘へ遊びに行ったとき、1組の夫婦が小さな赤ちゃんを連れていて、ある日私は赤ちゃんの面倒を見ておいてくれと言われました。私と赤ちゃんの2人きりになったのですが、赤ちゃんが眠ったままなかなか起きないので、心配になって音を立てたところ、無事赤ちゃんが起きたということがありました。そのときはそれで安心をしたのですが、なかなか赤ちゃんが起きなかったことがとても私は心配になって、もしこのまま赤ちゃんが起きなかったとしたら私はどうしていただろうと考えたことがこの作品のきっかけになっています。
 
Q:冒頭と最後に女性の調査員が出てきます。彼女の存在は、インターネットとか携帯の世界と対比させるために出したのでしょうか。
 
監督:最初に調査員の女性が来ます。その女性を使って、すべての前提になる情報を簡単に説明させています。この2人はどこでどうするのか、どこに行くのかといったことです。派手に情報を説明させるのではなく、さりげなく情報を知らせようと入れました。携帯・ネットワークとの関係はなく、狭い場所での撮影なので、外の情報を入れるために携帯・ネットワークを使用しています。中にいる彼らと外の関係をつなぐものは窓だけです。携帯・インターネットを使って、イランの中・海外とのつながりで幅広く。またローバジェット(低予算)で、いろいろな場所には行けなかったため、それを使いました。
 
Q:一番最後のエンドシーンが後味悪くて仕方がなかったのですが、メッセージとか教訓めいたものというのは入っているのでしょうか。
 
監督:気を悪くさせてしまってすみません。特にメッセージを伝えようとか、そういう目的はなく、魅力的な物語を語ろうと一生懸命作った話なんです。または小さい狭いところで説明をしないといけないので、狭いところで観客は最後まで映画を見てくれる、そういう映画を作りたいなと思ったんです。
特に最後のシーンは、一番いいエンディングではないかと思ったんです。
映画の歴史の中で、私たちの記憶に残るものはハッピーエンドの映画ではないんですね。ハッピーエンドの映画では記憶に残らないかもしれない。観客が想像できないようなエンディングを考えていたんです。
 
Q:若い世代の人たちが外に出ようとするのを、家族だったり親戚だったり、周りの人たちが阻むというか、そういうことが若者との世代間の価値観の差とか対立とか、そういう今のイランの空気が詰まっているのかなという事を感じました。監督はその辺を意識されたましたか。
 
監督:イランの中では、もし若者が海外に旅をするとか移民をするとかあっても、家族は必ず猛反対するというわけではないです。誰も彼らを止めないかもしれない。移民することは悪いことではない。大変さとか苦労もあるでしょうけれども、いいところもあるのでしょう。
イランの中ではイランの家族の絆によって、家族はやはりとても近い関係であり、支えあっているので、家族の中から誰かが離れていくことは、戸惑ったりするかもしれません。ただイラン人は理想家なので、もっといいところに行って住んでみたい、そのような考えもあります。世界中でいろんな方が移民するし、若者がいろんなところに行って住むのは、イランだけではなくグローバルに行われているのではないかと思います。
 
Q(アミール・ナデリ監督):この映画を今日ここで見ることができてとても嬉しいです。ベネチアで上映されたと思いますが、そこでは見逃してしまったので、やっとここで見ることができた。演出が素晴らしくて、ポランスキーの映画を思い起こさせました。素晴らしい若手の監督で、頭のよさを使って演出をしてこの映画を作ったことはとても嬉しいです。
 
監督:今伺った話は一生忘れません。お礼を申し上げます。
 
Q:監督もナデリ監督をはじめ、いろんな方の影響を受けて今の監督がおありかと思うんですが。できましたら、日本の監督・作品でお好きな方、お好きな作品などを挙げていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
 
監督:日本の映画はとても豊かな映画で、小さな頃から日本の映画を観て学んだことも多いです。一番最初に頭に浮かぶ名前はやはり黒澤明監督と小津安二郎監督。映画でしたら『東京物語』です。
 
Q:3ヶ月かけてこのエンディングにされたそうですが、ちなみに他のエンディングの候補があったのかどうか。監督の考えられたエンディングの他のパターンがあればお聞かせ願いたいと思います。
 
監督:もちろん3ヶ月間の中では、エンディングを想像したり考えたりしました。ただ、先ほども申し上げたように、見る側がそのエンディングを予測できるようなものにはしたくないと思っていました。考えていたエンディングは、今のエンディングよりもすぐに終わり方を想像できるモノだったので、つまらないと思います。一番大切なエンディングは、今のエンディングです。

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