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2014.11.13
[イベントレポート]
「彼らからは「この映画は作らない方が良い」と言われてしまいました」アジアの未来『ゼロ地帯の子どもたち』-10/30(木):Q&A

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©2014 TIFF

10/30(木)、アジアの未来『ゼロ地帯の子どもたち』の上映後、アミールフセイン・アシュガリ監督のQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
アミールフセイン・アシュガリ監督(以下、監督):みなさんこんばんわ。私の映画をこんなに遅くまでご覧になっていただいてありがとうございます。そして、この会場に、個人的に会いたかったイラン映画の偉大な監督、アミール・ナデリさんと、偉大な女優さんファテメ・モタメド・アリアさんがいらしてますので、とても光栄です。ありがとうございます。そしてもちろんコンペティション『メルボルン』の監督もいらっしゃると思います。なのでとても緊張しています。
 
司会:石坂PD:いくつか基本的な質問をさせていただきます。これはイランとイラクの国境線の話ということですよね。
 
監督:はい、設定のまま、ロケ地もイランとイラクの国境線です。
 
司会:石坂PD:それから出演者ですけれども、少年と少女、そして兵士が出てきますけれども、これはプロの俳優さんなのでしょうか。アマチュアなのでしょうか。
 
監督:最初からアマチュアを使ってこの映画を撮ろうと思っていました。ですから、地元から子どもを選ぼうと思いました。大勢の子どもに会って、そして絞って、この2人を選びました。兵士役ですが、海外から役者を呼んでこの映画に出演してもらおうと思ったのですが予算的に無理だったので、最終的には自分の友達に夜中に電話して「明日から撮影ですけどお願いします」と(笑)。
自分のデビュー作だったので、一番難しかったのは役者を選ぶということでした。その役にぴったり合う人に出会うのは、一番苦労しました。
 
司会:石坂PD:そして船ですが、船も大きな役割を担う登場人物の一人だと思うのですけれども、これは映画のためにああいう風にしたのか、ああいうものが残っていてそれを使ったのでしょうか。
 
監督:最初にこの脚本を書いていて、今おっしゃった通り、大きなキャラクターの1つはこの廃船でした。プロダクションと話しまして「廃船が見つからなければこの映画を作るのは不可能です」と言っていたのです。廃船を探しに、国境のところにペルシャ湾まで流れている川があるのですが、ずっと探し回りました。最終的には、タバコを吸っていたとあるおじいさんに「この辺に廃船はありますか」と聞いたら、言葉も言わずに指さしたのです。そして、その指さした先にあったのがこの廃船でした。
 
司会:石坂PD:あれだけ古くなっているということは、いつあの様に廃船になってしまったのでしょうか。
 
監督:この船は漁船なのですが、イラン・イラク戦争が始まる頃にイラクにやられたということなので、約34年か35年くらい前から、そこに壊れたままで放置されています。
 
Q:2つ質問があるのですが、アドバイザーとしてアボルファズル・ジャリリ監督の名前があるのですが彼はどのような役割をしていたのかということと、セリフが極力省かれているように感じたのですが、どういう演出をされていたのでしょうか。
 
監督:小さい頃、私のお母さんはテレビをつけていても、テレビの映像は見ないで聞いていたのです。それについていつもイライラしていました。なので、いつか好きな文学を描きたいと思っていたのです。そしてその物語ですが、物語によってあまりセリフは要らないと思いました。例えば、今私は東京にいて、言葉はもちろん分からないため、目と心を使って人とコミュニケーションを取ろうとしています。なのでこの物語は、あまりセリフを入れない方が伝わるのではないかと思いました。
ジャリリ監督との関係ですが、実はイランではデビュー作を作るときは、ベテラン監督のサインがなければ撮影許可が下りません。ですから、撮影許可が下りるために2、3人の監督に脚本を送ってアドバイザーになってほしいと依頼したのですが、彼らからは「この映画は作らない方が良い」と言われてしまいました。仕方がないので、私はすごくジャリリ監督が好きだったので、夜の7時か8時くらいにジャリリ監督に電話して話しましたら「すぐ来てください」と言われました。すぐに飛んでジャリリさんのもとに行ったら、アドバイザーとして就いていただけることになりました。
 
Q:緊張感溢れる力強い映像でとても面白かったです。少年と少女の力強い表情・目力がとても印象的でしたが、アマチュアから選ばれたということでしたけれども、どのような演出をされてあのような力強い子どもの表情を引き出したのでしょうか。
 
監督:ご存じの通り、イラン映画には我々の参考になる映画があります。私たちはそういう映画を見て、色々な資料を読んで、素人の子どもをどう扱うかということを巨匠たちから学びました。それと今回の場合は、主役の男の子は映画の撮影がクランクアップするまで、この映画が撮影されていることは知りませんでした。ですから、映画の撮影が終わったときに「いつ撮るのですか」と聞かれました。要するに、彼にはとても静かな状況を作ってあげて、小さなカメラを使い「カット」や「スタート」といった声を一切出さず、映画を撮っている雰囲気は一切見せずに撮影しました。主役の女の子にも「船の半分は彼女に、半分は彼に」と言っていたので、主演の2人は本気で自分のテリトリーを守ろうとして戦っていたのです。
 
Q:非常に素晴らしい映画で楽しませていただきました。印象に残ったのが、最初はもの凄い緊張感があって2人とも恐怖感を抱えていたのが、次第に信頼関係が出来上がっていくところでした。そういった2人の関係の変化を演出する上で何か難しいところなどはありましたか。
 
監督:子どもの純粋な気持ちをそのまま取り出して使った、と言えます。例えば、今でも男の子は、相手の女の子をまだ男の子だと思っています。とても純粋です。また、2人はとてもこの映画に出たかったというのがあって、最初お互いが敵意を持っているというところは「あなたたち2人のうち1人を選ばなければならない」と言って、映画の半分まで撮っていました。あの2人は一生懸命に自分をアピールして勝とうとしていました。後半には男の子に「あなたは要らない、女の子だけ残ればいい」と伝えて撮りました。
私の世代では戦争が起きまして、爆弾がたくさん落とされた地域では、自分の身を守るために隠れなければならない。聞こえる音は戦争の音、サイレンの音、爆弾の音。そして見る映像というのはそういった関係の映像ばかりでした。全世界の人類は平和を大切にしているし、平和を手に入れなけばいけないと思っているのですが、私にとってもそれは大きなチャレンジであり、それを目的としています。平和を手に入れたい、平和について語りたいです。
 
Q:作中で魚を捕っていますが、予め準備していたものでしょうか、それとも実際に捕まるのを待っていたのでしょうか。
 
監督:魚ですが、私たちが男の子のフックに魚をぶら下げました。男の子は実際に捕ったと思っていたのですが、実際は私たちがちゃんと用意したものでした。

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