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2014.11.13
[イベントレポート]
「自分は、どの国でも、どの地域でも、子どもたちが父親を失わないように、戦争が起きないようにずっと祈っているのです」アジアの未来『ゼロ地帯の子どもたち』-10/29(水):Q&A

borderless

©2014 TIFF

10/29(水)、アジアの未来『ゼロ地帯の子どもたち』の上映後、アミールフセイン・アシュガリ監督のQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
アミールフセイン・アシュガリ監督(以下、監督):皆様こんにちは、映画を最後までご覧になっていただいて本当にありがとうございます。
 
Q:舞台となった場所ですが、アラビア語が出てきましたので、イラクとの国境線ということでよろしいのでしょうか。
 
監督:場所を決めてから脚本を書きました。本当に国境ラインのところです。30年前からあの船はあそこで壊れてしまっているのですけど、その当時はイラン・イラク戦争でした。
イラン・イラクの国境には河が流れていて、そこにある船を探していました。上からペルシャ湾まで川が流れているのですが、15日間ほどずっと探していたらこの船に出会いました。船が見つかったらこの映画をつくる、見つからなかったらやめる、と決心して行きました。
 
Q:少年と少女は役者さんなのか、そうではないのか教えてください。
 
監督:まず、最初から役者は絶対に使わないつもりでした。素人に純粋な気持ちで演じてもらわないといけないと思い、その地域を20日以上探しまわって2500人くらいの中からまず4人にしぼりました。そしてその4人の中から、この2人をやっと選びました。この2人の子どもを現場に連れてきて映画を撮るとき、彼らには予備知識を全く与えませんでした。これから何を撮るのか、何をするのか全く教えませんでした。自分たちも本当に経験がないかのように撮影しようと思いました。要するに「よーい、スタート」などはやめましょうと。その方が彼らの自然の動きを撮れるのではないかと思いました。
ですからとても小さなカメラを選んで撮影しました。子どもたちはあくまで彼らの自然な姿を撮っているのだと思っていたんですね。なので撮影が終わったところで、子ども二人は、「いつ撮影が始まるんですか?」と聞いてきました。
 
Q:ふたつ質問があります。一つ目は銃を持った女の子を私はずっと男の子だと思っていて、サプライズで女の子だというのがわかって、それは私が特別わからなかったのか、それともサプライズは狙いだったのでしょうか。二つ目の質問はこの映画はイランではどのように受け入れられるものだとお考えでしょうか。
 
監督:今回の上映は海外では初めての上映です。この初めての上映を日本の皆さんと見た事は大変光栄ですしとても嬉しいです。日本の映画監督たちは、よく映画を見て質問するのですと友達にも聞いているので、期待しています。それで答えなのですが、中近東は色んな戦争がいつも起きてます。なので、女の子が仕事をする際、色んなことから自分の身を守るために、男の子の格好をして仕事をすることがそんなに不自然ではないです。その不自然でないことをわざわざ映画の中で描いてサプライズさせるのではなく、自然な形を語ろうとして、最初から男の子の格好をして出てきます。その地域は自分たちの国の人々だけではなく、15カ所くらいの場所から色々な人々が来ています。どこで何をされるか分からないから、男の子の格好をしています。(それが自然だから私が)物語を書くときは自然にそのように現れるのですね。
もう一つの質問なのですが、イランではまだこの映画は上映されてないですし、イラン人はまだこの映画を見てないのです。本当の本当に最初の上映が今の上映なのです。映画祭にもまだ回っていませんし、イランの反応もまだわからないですね。

 
Q:本作途中から涙がとまらなくて、久々にこんなに心震える映画を見ました。序盤、ヘリを見ているときの仕草とか、彼がちょっと出ている釘を触っている仕草とか、日常的で、馴染んでいる彼の仕草だなと思って、すごく実在感がありました。それらの作業も全て彼らに任せたのでしょうか。アドバイスをしたところも?
 
監督:今のお話を聞いてとても嬉しいです。そのように映画を見ていただいて、本当に感謝しております。子どもなのですが、実際子どもと映画を撮るのはとても難しいです。映画だけでなく普通の生活の中でも子どもを指導するのはとても難しいのだと思います。色々もちろん、テクニックは使っているのですが、子どもの演技を自然のまま撮ろうとしたら、やはり、彼らが普通に生活しているときとか動いているときに、どんな癖をしているのか、どんな動きをしているのかをずっと見ていたんですね。それを見て、自分は覚えていて、彼らがその癖を出すような映画を撮っていたんですね。カメラを全然意識させないような撮り方をしないといけないんだろうなと思ったのです。私は、リピートアクションと言うのですけども、一つのアクションを何度もリピートして、その中から一番いい演技をとるような方法をすごく信じています。自然の演技を撮るというのはやはり、子どもから自分が学んだところで、カメラを回すしかないんですよね。面白いのは、映画の撮影が終わった今でも、男の子の方が、相手の子が女の子だったのか男の子だったのか全くわからないのです(笑)。
私たちの文化のなかでは女の子は本当に尊重するんですよね。だから男の子に相手役は女の子ですよ、と言うと殴るときにすごく遠慮してしまうのです。だから、最初から教えないし、今でも彼は分かっていません
 
Q:作中では少年と少女と兵士の言語が違うから、言葉が伝わっていなかったのですが、伝わってないのが、演技だったのか、本当に言葉が通じないまま撮影していたのか教えていただきたいです。
 
監督:見に来ていただいてありがとうございます。まずですね、この3人はイラン人です。なので、リアルではお互いに言葉を理解できます。設定の上では言語を分けて、言葉がわからないように見せかけているのですけども。ただ、現実的に演じていただいてるロケのなかでも、男の子と女の子2人は、大人の男性の人を、本物の兵士だと思っていました。役者だと思っていないですから。だからなんとなく(男の子と女の子は)軍隊だと思って怖かったんです。だからその恐れている気持ちをずっと保つことができていました。このひとは本物の兵士です、って思わせたのです。イランは色んな国と国境を持っています。国境に近くの人々というのはそっちの国の言葉も話すのです。イラン側のイラクと近い町っていうのは、アラビア語もしゃべれるんです。女の子はその地域の子どもたちですので、アラビア語も話せるんです。
 
Q:英語のタイトルは『Borderless』ですけど、船のなかで、3人はボーダレスの状態になりますが、一方は言葉というボーダーはありますよね。その中でタイトルに込めた思いをお聞かせください。
 
監督:何故『Borderless』というタイトルを選んだかというと、自分の夢、希望なんです。要するに、国境がなくなったら、どのくらい皆幸せに暮らせるのだろうと。その心の希望を、タイトルにしただけなので。その言語の問題はもちろんありますし、言語の国境を壊す事ができないのは、現実としてあるのですけども、いつかなくなってほしいとずっと思っています。なくせなくても、せめて人々の心は通じ合えば、それで国境はなくなったのだという希望は叶うだろうと思っています。自分がこの映画をつくるときは、どの国にいっても人々の心をつかめるようにしたいと思って、このタイトルを選びました。
色々な国を旅して、今も日本にいるのですが、人には壁がないと思うんです。私がここに座っていて、向かいにいる人々は自分の兄弟だったり、母だったりと、そんなに全然変わらないと思うのです。ですから、例えば他の国にいって、貧しいひととか、助けを求めている人を見たら、自然に手を延ばす。人々の間には、全く壁がなくて、そのラインをひいたのは国民ではないですよね。
 
Q;先ほど、イラン本国でもまだ上映が決まっていないとおっしゃっていたのですが、昨年東京国際映画祭で上映された『ルールを曲げろ』も見させていただいていて、イランでの表現の自由みたいなところでの、この映画を上映するところでご苦労がありましたら教えてください。あと、映画を作る上で、決意や思い入れがあればお聞かせください。
 
監督:ありがとうございます。まずイランだけでなくどの国でも、映画を作るときには様々な決まりがありますし、それは検閲だけではなく、色々な壁を超えなくてはいけないですよね。例えばフランスの友達が短編を作るためにお金にとても苦労して、自分のピアノを売った。それもひとつの検閲だと思います。
どの国でも、インディペンデント映画を作るのには、監督たちはとても苦労していると思います。私もその点では苦労しました。要するに、出資者がうまく集まらなくて。それでもこの映画をつくりたい、絶対作りたいという仲間を集めてこの映画を撮りました。この映画の中には男の子が、とてもわずかな食事をとっているシーンがありますけども、実際に私たち(スタッフ)も撮影現場ではそういう時があったのです。でも、皆絶対この映画を完成させるというエネルギーと気持ちがあったので、この映画が出来上がったのです。
今、去年の『Bending the Rules』(『ルールを曲げろ』)を見たとおっしゃいましたが、ベーナム・ベーザディ監督のような、私のような監督はたくさんいるのだと思います。アッバス・キアロスタミ監督、アミール・ナデリ監督、アボルファズル・ジャリリ監督(いずれもイランの映画監督)の名前を皆さん聞いていると思うのですが、彼らも最初は、自分のインディペンデントの映画を作るためにすごく苦労したのだと思います。だから、このようなインディペンデントの映画を作るときは、皆苦労しているのだと思います。
何故このテーマを映画にしたのかという質問だったのだと思うんですけども、自分はいつも、もしどこかで、自分と違う言語を喋る人と、二人っきりになったらどうなるのだろうといつも考えていました。要するに、ふたりとも言葉の通じ合わないまま、喧嘩はできるのかな、恋に落ちるのかな、とか、コミュニケーションとれるかな、と様々なことを考えていたんですよね。それで、色々考えた上で、人間ですので、ひとつの神様が人間を作っているので、だから、言葉は問題なく、心は通じ合えばなんとかなるんじゃないかなというテーマを考えて、この話を書いたのです。どの国でも戦争になると、被害者になるのは普通の人々だと思います。戦争をおこした人々ではなく、私たちが被害者になってしまうのです。戦争があるから、私たちは平和の本当の意味を手に入れようとしているのですし、平和について考えるのだと思います。国境があるから、戦争が起きるのです。だから自分は、どの国でも、どの地域でも、子どもたちが父親を失わないように、戦争が起きないようにずっと祈っているのです。

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