作品解説
両親が草原で放牧をしているため、兄のバルテルは祖父母のもとで暮らし、弟のアディケルは学校の寮に住んでいる。兄は弟がひいきされていると嫉妬している。夏休みが来るが父が迎えに来ない。親のもとに帰ることを決めた弟は、すねる兄を説得して、ラクダにまたがる…。
中国北西部の乾いた大地を行く少年とラクダの魅力が、スクリーンいっぱいに広がるドラマである。辺境の地で素朴に暮らす少数民族にも時代の波が確実に押し寄せる様を、実際に現地の人間を起用しながら描いてゆく。人々の暮らしをリアリズムで描く一方で、夢や不安が交差する少年たちの旅路にはファンタジー風味を加味することで、広がりのある世界が展開していく。兄弟のキャラクター設定がしっかりしているために、冒険を通じた成長のドラマとして見応えがある上に、ラクダにまできちんと演技をつけているユーモアも楽しい。しかしながら、本作の神髄は数を減らしていく少数民族への哀感の情であり、変貌を遂げる大地への痛恨の思いである。大画面に映え、ストレートな感動を味わうことの出来る、映画らしい映画である。
●東京国際映画祭オフィシャルニュース 映画.com ニュース
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○オフィシャルレポート
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