Home > ニュース > 日本映画唯一のコンペティションノミネート、『紙の月』吉田大八監督インタビュー
ニュース一覧へ 前のページへ戻る
2014.10.09
[インタビュー]
日本映画唯一のコンペティションノミネート、『紙の月』吉田大八監督インタビュー

yoshidaD

©2014 TIFF

 
第27回東京国際映画祭 コンペティション部門出品作品
紙の月
吉田大八監督インタビュー
 
吉田大八監督は2007年、カンヌ国際映画祭批評家週間正式招待作品『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で映画監督デビュー。その後、『クヒオ大佐』(2009年)や『パーマネント野ばら』(2010年)を監督し、4作目『桐島、部活やめるってよ。』(2012年)で第36回日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ数多くの賞を受賞。今、最も注目を集めているクリエイターの一人である。
傑作『桐島、部活やめるってよ』を送り出し、次回作が熱望されていた監督の最新作『紙の月』では「八日目の蟬」をはじめ、女性を中心に抜群の人気を誇る直木賞作家、角田光代の長編小説の映画化にあたり、日本を代表する女優として多方面に活躍する宮沢りえが7年ぶりの映画主演を務める。
「宮沢りえさんは、映画のために自分が何をすればいいのかということだけ、考えてくれました。」と語る吉田監督。
今回はコンペティションに出品した作品への思いを伺いました。
 
――主演の宮沢りえさんについて伺います。キャスティングした時のイメージと、実際に会われた宮沢さんという女優に対する印象を聞かせてください。

吉田大八監督(以下、吉田監督):最近の彼女は、蜷川幸雄さんや野田秀樹さん演出の舞台でヒロインとして活躍している印象があって、初めは少し緊張しました。でも現場に入ってすぐ強い信頼関係を結ぶことができたので、いい意味で責任を感じつつ、気持ちよく撮影が進みました。
 
――宮沢さんご自身から演じ方の提案や、相談するようなことはあったのでしょうか。

吉田監督:具体的に演技プランの相談をしたわけではありませんが、僕の演出と彼女のプランが違った場合にも、それをまず受け入れようとしてくれました。映画のために自分が何をすればいいのかということだけを考えていたのだと思います。
 
――宮沢さんの表情の変化が凄いと、映画祭の記者会見でもおっしゃっていましたが、どのあたりで監督はそう思われましたか。

吉田監督:順撮りではないので、本当に凄いと感じたのは編集していた時かもしれません。彼女は自分の見せ方を本当によく分かっていて、表情の変遷をたどると完璧だと感じました。
 
――原作にはない役で大島優子さんも出演されていますが、彼女の印象はいかがでしたか。

吉田監督:AKBをよく知っていたわけではないのですが、「大島優子は芝居が上手い」という話は周りから聞いていました。出演作品を観る機会がなかなかなかったのですが、キャスティングを考えている時にその話を思い出し、出演作品を観て決めました。
現場に入ってからは、限られた撮影時間の中で最初から正確に役の位置や意図を掴み、集中力を持って演じていました。短い時間で集中して結果をだす、そういう意味では今、一番磨かれている女優さんだと思いますね。
 
――大島さんの演じた役(相川恵子)を脚本の中で入れたのはどうしてでしょうか。

吉田監督:小説ではモノローグという形で自分の心の内を伝えることができますが、映画だと、犯罪に関することなどは他人と会話することも難しいので、彼女が言いたいことを代弁するような存在が必要でした。それは小林聡美さんが演じた、隅(すみ)という役にも言えることです。宮沢さん演じる梅澤梨花の背中を押していく、心の影のような感じです。
 
――先に配信されたニュースで、「この作品はサスペンスだがメロドラマとしてやっていきたい」とありましたが、その辺りのことは?

吉田監督:確かに最初はそう思いました。ただ、物語に寄り添っていくうちに、メロドラマかどうかをあまり意識しなくなりました。一見、通俗的な悲劇という意味ではメロドラマかもしれませんが、イメージする昼メロとかよろめき(笑)とかを、2014年の映画として、アップデートしなきゃいけないと思っていました。
 
――昨年の賞を総ナメにした『桐島、部活やめるってよ』と同様に、今作品の終わりも去っていく背中で終わっていて、とても映画的です。

吉田監督:意識したわけではないのですが、そういえば『桐島』も背中で始まって背中で終わっていますね(笑)。背中を見せると、どうしても表情を想像させることになります。映画が終わった後も主人公の物語はまだ続くんだという、思い入れなのでしょうか。
 
紙の月

©2014「紙の月」製作委員会

 
――宮沢さんに関して、一番印象に残ったエピソードがあったら教えてください。

吉田監督:彼女は、現場でほとんど鏡を見ないんです。女優さんは、自分がどう映っているかを気にする人が多い印象がありますが、宮沢さんは、準備をしてカメラの前に立ったら後は好きなように撮って、という潔さが気持ちよかったです。
ベッドシーンについても躊躇はなく、やると決めたら飛び込む姿勢でした。その姿勢に周りのスタッフも乗せられたようでした。
 
――ところで、今年の映画祭の他のコンペ作品は鑑賞できそうですか?

吉田監督:できるだけ観たいと思っています。せっかくの機会だし、自分の作品を応援しつつ、勝った負けたを心の中で楽しみたいなと。
 
 
2014年9月30日(火) 虎の門ホール 
(取材/構成:制作 小出幸子)
 
【上映スケジュール】
10/25(土) 14:00~ TOHOシネマズ六本木ヒルズ Screen7
10/29(水) 13:45~ TOHOシネマズ六本木ヒルズ Screen6
10/30(金) 17:15~ TOHOシネマズ日本橋 Screen6
 
【作品詳細】
紙の月
監督:吉田大八
原作:角田光代
キャスト:宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司

木下グループ 日本コカ・コーラ株式会社 キヤノン株式会社 株式会社WOWOW フィールズ株式会社 アウディジャパン株式会社 大和証券グループ ソニー株式会社 株式会社TASAKI ソニーPCL株式会社 株式会社ぐるなび カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 松竹株式会社 東宝株式会社 東映株式会社 株式会社KADOKAWA 日活株式会社 森ビル株式会社 TOHOシネマズ株式会社 一般社団法人映画演劇文化協会 読売新聞 J-WAVE 株式会社ドワンゴ スカパーJSAT株式会社 THE WALL STREET JOURNAL テレビ朝日 LINE株式会社 BS日本映画専門チャンネル セイコーホールディングス株式会社 株式会社エアウィーヴ MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社 CineGrid ゲッティ イメージズ ジャパン株式会社 株式会社クララオンライン
KEIRIN.JP本映画祭は、競輪の補助を受けて開催します。TIFF History
第26回 東京国際映画祭(2013年度)