10/24(金)、日本映画スプラッシュ『チョコリエッタ』の上映後に、風間志織監督のQ&Aが行われました。
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風間志織監督(以下、監督):皆様、今日はありがとうございます。本日はじめて一般のお客様にご覧いただきました。ここまでやっとたどり着いたなと思い、非常にうれしいです。どうもありがとうございました。
Q:10年の時を置いてなぜ「チョコリエッタ」だったか、作品の生まれる過程などを最初お伺いしてもよろしいですか。
監督:もともとこの企画自体は10年とは言わないけど、7、8年前にその原作者の方とお話しする機会があって「あっ、これやらせて、やらせて」っていう話があったんです。それから完成までにここまでかかってしまったと、そういうことなんです。
Q:じゃあ、もう7、8年前から取り組み始めていらしゃったということなんですね。
監督:そうなんです。
Q:本格的に行けるぞってなったのがいつぐらいだったんですか?
監督:撮影が去年の8月の終わりから9月の真ん中辺までなんですけど、去年の春あたりですね。
Q:10年振りの現場はいかがでしたか?
監督:浦島太郎みたいでしたよ。なんか勝手が違うような感じがしてましたけど、まあ、面白かったです。
Q:7、8年前の脚本的なものがあったとすればずっと手を加えながら、何項くらいまできたんでしょうか?
監督:最初に書いてしばらく置いておいたというか結局そのまま撮れないまま置いておいておきまして、結局は3.11以降、なんか撮りたいな撮らないとちょっとなと思いまして、それでその時に『チョコリエッタ』を思い出してちょっと書きかえて、ということですね。
Q:フェリーニ愛というのが特に全編そうですけど序盤にもあふれているんですけども、これは当初からあったんですか?
監督:これは原作にあるんですよ。
Q:そこの部分に風間監督も惹かれたというのはあるのですか?
監督:そうです。そうです。そういうことなんです。映画を撮っている青年が映画を別に好きではないような女の子を撮るっていうようなああいう話なんです。ほとんど原作通りなんですよ。あの筋仕立てはね。
Q:監督は「道」に対する思い入れというのは?
監督:「道」に対する思い入れというのはあの市川さんのお母さん役で言った通りのあれが私の高校の時の感想なんですよ。
Q:では、世代もあそこら辺に重ねているという感じで。
監督:そうですね。高校の時に観ていて、まあこんな感想だったからなぁと。
Q:ちょうどその発見されたフィルムの話になったので、その点に関してなんですけども、あのフィルムもそうですし劇中に出てくる菅さんが回しているあのキャメラっていうのは本編に出てきますよね、あの映像が。あれはやっぱり菅さんなり、宮川さんなりがお撮りになった映像なんでしょうか。
監督:それはね、そういうものがあるし色々混ざっていますね。
Q:山で菅さんが突き放して、たまたまだったのかあのヘルメットが突き放した彼女の頭に、あれは狙ってたのかそれとも偶然ですか?
監督:あれね、本当に偶然なんです。カットかかってみんな「だ、大丈夫?」ってなったけど、意外に本人がケロッとしていましたね。
Q:監督としてはやったというかおいしいっていう。
監督:そう。
Q:かなり前からその脚本を書かれて今回実際に映画化できたということなんですけども、今回2時間40分、これは最初から脚本を書いた段階からこの尺を想定されていたのか、それとも撮っているうちに「あっ、これもやっぱりカットできないな」みたいな形で2時間40分になったのか、というところを教えていただければと思います。
監督:最初の想定はね、1時間52分くらいを想定していました。で、脚本自体は90ページしかないんですよ。すんごい短いの。だから普通に1ページ1分で考えると90分の作品になるんですけど、私の場合はちょっと長めにするんで、まあ、2時間いくかいかないかなと思っていたんです。ただその撮りながらどんどん長くなっていって、あの記録のスクリプターの子がこそこそ「もう3時間越えましたよ。3時間越えましたよ」って後半言われて。そんな感じでした。
Q:監督としては「もういいよ。もう10年振りだし。やりたいことやるんだ」っていう。
監督:でも3時間は越えたくないなとは思いましたけどね。
Q:現場でもわりと脚本にない部分を足してっちゃおうっていうような、現場での即興的な膨らみがあったんですか?
監督:お芝居の中だけですね。そのなんて言うんだろう。間みたいなものですね。そういうところでのびていくというか本当に、台詞だけで撮っちゃうと本当に短くなっちゃうと思うんですけど、森川の間がね、とても気持ちよかったんですよね。彼女の間に合わせていって、のびていったという感じですよね。
Q:あの間は彼女の素の間で、素の間というか彼女の役作りの芝居の間。
監督:そうです。
Q:監督はそんなに指導はしていない?
監督:うん。しないですよ。なんか嫌がるくらいやらせるけど、基本的にそんなにしないんじゃないのかな。
Q:テイクはすごくたくさん?
監督:うん。あと、話はする。お話はするけど、指導というようなものじゃないですね。こんな感じですよ。
Q:こんな感じ?
監督:こんな感じ。
Q:それは役柄の今のその人が、チョコリエッタが感じている心情について、というようなことについての話ではなく?
監督:そういう話はしない。
Q:任せるっていうかそれは俳優の仕事っていうふうに?
監督:うん。あとはこれはどっちか任せるとかそういう感じですね。どっちとるか任せる。こっちとこっち、好きにどっちとる?って。
Q:監督してはどっちもありだなと思ってらっしゃる?
監督:そうそうそうそう。
Q:それで役者さんの選択に対して監督自身がなんか驚きをもらうみたいなことも?
監督:面白かったのはあのホテルのシーン。森川最後に寝てるじゃないですか。あれね、脚本にはもうぐうが先に寝ちゃっているって書いてあるんですね。で、ここ本当に寝てる?起きてるんじゃない?どっち?って聞いて、そしたら彼女考えて「いや、寝てますよ。知世子だもん」って言って。ああそう、寝るんだと思ったら、本番になったら起きてるの。起きてたじゃんと思って言ったら、「なんか起きてましたね」みたいに言ってましたよ。
Q:監督としてはあの役はあそこではやっぱり起きてるだろうなと?
監督:起きてるだろうなと思いましたね。
Q:先ほどの俳優さんへ指導されるって話を聞いたんですけども、個人的な感想なんですけどもその正宗先輩が出てくるとちょっと二人の関係がすごくシリアスな台詞とかもコミカルに見えたんですね。そういうのっていうのは何か指導とかされたんでしょうか?
監督:そのシリアスになりすぎちゃうとあれなんで、まあそれは脚本にまずなんでしたっけ、そうね、特にあの正座をするところとかもあれは分かります?ああいうのはね自然に最初、リハーサルの時に彼の動きで出てきたんです。菅くんの正宗を探りながらこうリハーサルしている時に彼が正座してなんか話し始めてそれを覚えていて、ああ面白いなこの若い子なのにこんな正座して話してるよって思ってそれであの現場に入った時に、ここ正座してみる?っていう話になって彼はそういうシーンでっていうか、なんか正座しちゃう、シリアスなんだけどちょっと面白いんじゃないのかなっていうのもありますよね。
Q:二人のキャスティングはどのようなプロセスで決めたんですか?
監督:森川さんはまず髪の毛を切ってくださるとこから。それでもう人数がすごい絞られてしまって、オーディションも5、6人お会いして、もうこの子しかいないなって。
Q:オーディションしてる段階ではまだみなさん髪長いわけで、じゃあその切った時をイメージしながら?
監督:もう別に顔自体はどうでもいいんですよね。似合おうが似合うまいが。そうそうそう。ただその子が持っているもの。うん。非常に面白かったんで。
Q:正宗といいますか、菅田くんは?
監督:菅田くんはね、全然いい子がいなくて、こう探しているうちに、菅田くんはこの時期だったら、空いててやってくれそうだよっていう情報をもらって。よし、菅田くんにしようって。今のってるし、そうしようって。あと子どもが仮面ライダーのファンだって言っててですね。それでいいじゃないかってなってですね。
Q:菅田さんと森川さんの相性はどうですか?最初から二人の相性を調べてから決めたわけではない?
監督:ないですね。
Q:それは不安とかはどうですか?
監督:決めたあとにですね、35歳の女子高生というドラマで共演してたんですよね。それでちょうどいいか、二人みれるって思って二人の芝居を見ていたんですけれど、なんかもうお知り合いで、二人とも。それで会ってるんで、「あ~久しぶり」みたいな感じでしたよ。
Q:主演の二人が演技をしていて、台本以外のところとか、このふたりのシーンとかで二人がつくってきたような何か台本以外に何かあったところは?
監督:あぁ~分かった。あります。
Q:間っていうのはありますか?
監督:間っていうかね、台詞。で、えーとどれだっけなぁ。あの二人で旅にでようっていうところのシーンで、正宗の部屋で。で、あれは、「そこらへんのとなりの、そこの、スーパーでも行ってアイスでも食うか」って正宗が言うんですけれども、あれはあのときの彼のリハーサルのときに出たここなんか自分で考えてっていったあれ、出てきましたね。「どっかいくか」っていうのをどこ行くかちょっとやってって言ったらほんとうに隣がスーパーで待ち時間にアイスを食べに行ってたんですよ。それだけなんですけど。
Q:原作を読みましたけれど、あの映画のなかでは最後ジュリエッタのあのお家を燃やしているじゃないですか。あれはあの監督の考えで、実際にほんとうにあの映画の撮影の中で燃やして撮影したんですか?
監督:ええ。そうですね。あれ一個しかなくてね、あれは失敗するとどうなっちゃうんだろうって。もうガンガンに燃やしましたね。こんなに燃えるとは思わなかったって言うくらいに燃えましたね。
Q:この映画の最後のシーンを見て、青少年たちが今の時代を回復するのはかなり難しいのではないかという感想を持ちました。監督からのメッセージとしては、今の時代の青少年の痛みや悲しみの回復の可能性はあるか、それとも今の世の中では青少年の痛みや世の中の悲しみを回復するのはまだまだ難しいのか、どちらの方に重点を置いているのか知りたいです。
監督:どちらの方にお感じになったんでしたっけ?難しい方?
Q:難しい方です。なかなか難しい世の中だというメッセージを受けました。
監督:そうですね。どちらかというとそんなに簡単には回復しないと思うけど、でも回復しないと生きていけないからなんとかしないといけないけど、何ができるのだろうというと、今は叫ぶしかないんじゃないかなというか。とにかく叫ぶこと。私としては回復してほしいという望みはあります。ただ若い子の立場に立つとそんなに簡単に回復するものではないから、とにかく叫べ。そういう感じです。
Q:最後の主題歌を森川さんが歌ってらっしゃいますが、決まった経緯がありましたら教えてください。
監督:すごく大変な現場だったんですね。現場の行ったり来たりもあり、彼女は肉体的にも精神的にもギリギリでやっていたんですね。美しいなと思いながら見ていたんですけど、そういうときに自分を鼓舞するために彼女はよく一人で歌を歌っていた。でも彼女は、私は音楽が嫌いだし歌が嫌いだと言うんです。なのにいつも歌を歌っている。そこもまた千代子っぽいなと思います。それでその歌っている感じがすごく良かったんですね。映画の撮影も終わってある程度本編が固まったときに、最後に何か音楽が必要だと。新たにどうしようかというときに、森川に歌わせてみようと思い聞きましたら、絶対に嫌だ、って(笑)。それだけは絶対に嫌だ、親からもやめなさいと言われています、って。でも事務所がOKを出してくれたんで、無理矢理やっていただきましたね。
Q:正宗先輩のシーンで、部屋の中で自分が撮った映像を見ていて慟哭するシーンというか、狂気的なシーンがあったかと思いますが、それがとても印象的でした。原作を読んでおり、そういうシーンがなかったような。読んだのが結構前だったので何とも言えませんが、そういったシーンがなかったような気がして。監督はどのようなイメージでそのシーンを挟み込んだのかお聞きしたいと思いました。
監督:原作の方は確か正宗くんはそんなにどのような人かまでわからないような雰囲気で終わるんですよね。完全に女の子が中心じゃないですか。正宗(役を演じるの)が菅田くんになって。「名前を言え」と言うところがありますよね。その辺から原作と変わっていて。正宗は撮られるのが嫌いというようにしているんですね。撮られるとこういう風に(カメラを避けるような素振り)するし。知世子も嫌い。お互いに。それで知世子を撮りながらいつもお前の名前を言えと聞いていて、知世子は自分を見つけたような感じになる。知世子は逆に正宗に名前を聞くんですよね。正宗はそのときに自分の名前を言えないんですよ。結局知世子は俺の知らない間に違っちゃったな、一個突き抜けちゃった。自分の立場を考えたときに、俺進んでねぇじゃん、と思うわけですよ。俺進んでねぇよ、俺誰だよ、俺、正岡正宗かよ、俺何だよ、という感じに最後壊してみようかなと。それでああいうシーンを入れてみました。