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2014.10.27
[イベントレポート]
「ドリアンって私たちマレーシア人にそっくりだなと思って。」コンペティション『破裂するドリアンの河の記憶』-10/24(金):Q&A

 
Drian

©2014 TIFF

10月24日(金)、コンペティション『破裂するドリアンの河の記憶』の上映後、エドモンド・ヨウ監督とミン・ジン・ウー プロデューサーのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
Q:監督、(ワールド・プレミア上映で完成版を初めて)ご覧になった感想を一言お願いいたします。
 
エドモンド・ヨウ監督(以下、ヨウ監督):言葉を失ってしまいました。今回、初めて、キャスト、クルーの・・・私たちのファミリーのみなさんにやっと作品を見てもらえて良かったなと、まずそれを一番最初に感じました。本当にみなさんのおかげでここまでくることができました。
 
Q:どこからこの脚本を始められたのか、それは青春映画の部分だったのか、歴史の部分だったのか。どのように脚本を書いていったかというプロセスを教えていただけますでしょうか。
 
ヨウ監督:ちょっと信じられないかもしれませんが、ストーリーは(プロデューサーと)一緒に作ったのですが、昨年の5月頃から構想を練り始めまして、数ヶ月間でストーリーを仕上げて、そして2ヶ月ぐらいで脚本そのものを書きました。脚本を書くのに数ヶ月かけて、撮影にすぐ入りました。ただ歴史的な事象としていろいろ出てくるのですが、それについてずっと長い間リサーチをしていて、ほかの脚本に使おうと思ってリサーチをしていたのですが、今回の脚本は、前に書き終えることのできなかった脚本を集めて作ったようなところがあるので、期間としては全部で25年ぐらいかかっているかなと思います。
edmund

©2014 TIFF

 
Q:マレーシアのドリアンはタイのドリアンに比べると結構値段が高いけどすごく美味しい、何倍も美味しいと聞いていますが、ドリアンという果物をどういうイメージで、どういうシンボルとして使われたかということを教えていただけたらと思います。
 
ヨウ監督:確かマレーシアのドリアンはタイよりは安かったのではないかと思いますが。モノによります、すみません(笑)。どちらも同じぐらい美味しいはずです。ドリアンはすごく重要な役割を担っておりまして、マレーシアを象徴していると考えております。私たちにとってはフルーツの王様だと思っていて、よくよく考えてみると、ドリアンって私たちマレーシア人にそっくりだなと思って。ぱっと見、不思議な形をしていて、匂いもかなり強いのだけれども、内側の果肉は柔らかくて甘くて美味しい。食べれば食べるほど好きになっていく、きっとこの作品の方も見れば見るほど好きになってもらえるかなと思います。
 
Q:複雑なマレーシアの状況だと思うんですけど、高校生はマレー人がひとりしかいなかったですよね。中華系の子がみんなデモをしていて。人種的な難しさがあるのかなと思い、そこをお伺いしたいです。
 
ヨウ監督:マレーシアは他民族国家なので、マレー系の人たち、中華系の人たち、インド系の人たちというのが主な人種構成で、それ以外にも少数民族の方がいらっしゃいます。今回この作品では、意図的に工場のマネージャーにマレーシア人を選んだということではなくて、通常そのような立場になる人にはマレー系が多いということがあります。学校は中華系の学校で、主に中華系の人たちが住んでいる町の中にあって、私自身は中華系で、中華系の学校に通っていたので、できるだけそのリアリティに近づけるために、自分のことを振り返っても、学校の周りには一人、二人のマレー人の友人がいるという感じだったので、それを忠実に描きました。
マレーシアでは、どちらかというと一般的に皆さんおっとりとしていて、特に人種差別があるというわけではないのですが、最近では若干一部の政党がアグレッシブで、それによって人種間の緊張感は若干高まっているということはあります。
 
Q:あなたにとって中華系マレー人のアイデンティティというのはどういうものでしょうか。社会的にも、言語統制もあると思いますが、この映画がマレーシアでちゃんと上映できるのか、聞かせていただければと思います。
 
ヨウ監督:2つ目の質問から先にお答えしたいと思います。できる限りのことをして、マレーシアでもこの作品が上映できるようにしたいと思っていますが、どうなるかちょっとわかりません。確かにセンシティブな内容もあって、本来問うべきではないような疑問を呈しておりますし、本来語るべきではないような歴史にも触れていて、どうなるかわかりません。
次に中華系マレー人のアイデンティティについてですが、父方の祖父が中国出身でそういう意味では三世なのかもしれませんが、母方はさらに遡ります。私は自分のことは「マレーシア人」だと考えています。中国系ではあるのですが。中国や香港、台湾の人たちと同じ言葉を話しているのですが、文化的にはあまりにも違うので、ある意味ではアイデンティティ・クライシスに陥っていると言えないかもしれません。できるだけ中国、香港、台湾の人たちと同じようなことをしようと思っても、文化的にとても異なるので、まったく同じにはなれない。それが私たち。この作品の中国語のタイトルとも絡んでいるのですが、中国語では「ノスタルジア」というような言葉を使っているのですが、最初の2つの言葉をドリアンに置き換えて、ドリアンがどこへ向かって行けばいいのかわからない、漂っているというようなタイトルになって、それがまさに私たちなのではないかなと思います。
 
Q:先ほど作るのに25年かかったとおっしゃっていましたが、青春ドラマで打って出ようと思ったのはなぜですか。出発の仕方について、プロデューサーとどの程度議論がありましたか。
 
ミン・ジン・ウー プロデューサー:プロデューサーとしてエドモンドと7、8年ぐらいやり取りしていて、3年ぐらい前にこういうプロジェクトの可能性があるのではないかという議論をしていて、そのときのいろいろな議論というのが契機になったと思います。エドモンド側としては、これまで手がけてきた作品を寄せ集めてストーリーを作ってきたということなんですが、青春モノで、すごくパワフルなラブストーリーになっています。この続きはエドモンドに答えてもらおうと思います。
 
ヨウ監督:作るときに、自分の人生のライフステージにおいて、それぞれ違った作品を作りたいと考えています。あまり時間をかけて脚本を書くということはあまり好まないので、2年も経てば自分のライフステージが変わっていますし、考え方も変わっていると思うので、あまり時間をかけたいと思っておりません。去年この作品を書いているときは、ちょうどそういう人生の段階で、そろそろ自分も30近くなってきたし、ちょっとノスタルジックな気分であまりにもいっつも映画ばっかりに集中しすぎていて愛することを忘れてしまったんじゃないかなとそのとき思っていたんです。あと4人のキャラクター、先生1人と学生が3人いますけれども、それぞれが自分のいろいろな部分を代表していて、知識的には先生、メイ・アンが私の知識的なところを反映していると思いますし、感情的にはフイ・リンとミンが私をすごく反映していて、やりたいことはあるんだけどいつもちょっと一歩遅れてしまっているというか、意識的には変えたいんだけどなかなかできないとか、そして質問的には先生やメイ・アンが聞いているような質問を私も常に投げかけていて、レアメタルの工場の問題というのは今実際にマレーシアでも起きていて、そういったことも表現したかったですし、歴史のことをこの映画を通じて保存していきたいということも、気持ちとしてはあったので、それが全部まとまってこういう作品に仕上がりました。

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