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2014.10.28
[イベントレポート]
「食物に対する偏見は、食物が作られた国に対する偏見でもあるのではないかと思います。」アジアの未来『メイド・イン・チャイナ』-10/25(土):Q&A

 
madeinchina

©2014 TIFF
左からキム・ドンフ監督、キム・ギドクさん

10月25日(土)、アジアの未来『メイド・イン・チャイナ』の上映後に、キム・ドンフ監督とエグゼクティブ・プロデューサーのキム・ギドクさんのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
Q:エグゼクティブ・プロデューサであり脚本を担当されたキム・ギドクさんです。昨年もキム・ギドク監督・脚本の作品『レッド・ファミリー』が観客賞を受賞して、日本で公開中(2014年10月時点)ですが、その時プロデューサを担当されたのがキム・ドンフ監督ですが、キム・ギドク・フィルムに属されていて、助監督、プロデューサを経て監督デビューということでプレミアとして日本にお越しいただきました。ここまでに至る道のりはいかがだったでしょうか。今のお気持ちをみなさんにお伝えいただけますでしょうか。
 
キム・ドンフ監督(以下、監督):みなさんこんにちは、『メイド・イン・チャイナ』の監督をしましたキム・ドンフと申します。去年に引き続きまして、今年も(作品の)初めての上映がこの東京の場ということで、心から感謝しております。本当に最初の上映、最初のみなさんとの出会いというのがこの場であるということは、とても意味があることだと考えております。
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©2014 TIFF

 
Q:キム・ギドク監督は皆さんにおなじみだと思いますので、キム・ギドク監督からキム・ドンフ監督のことを、すでにキム・ギドク・フィルムで長年の秘蔵っ子なのではないかと思いますが、ご紹介いただけますか。
 
キム・ギドク(エグゼクティブ・プロデューサー)(以下、ギドクさん):皆さんこんにちは、この東京国際映画祭で『メイド・イン・チャイナ』を上映、しかもプレミアで上映していただいて、この映画祭の皆様に感謝したいと思います。そしてこの作品をご覧いただいた観客の皆様にも心から感謝申し上げたいと思います。キム・ドンフ監督とは2006年に初めて仕事を共にしました。韓国でのタイトルは『時間』でしたが邦題は『絶対の愛』という作品で、(キム・ドンフには)演出部に初めて来てもらい、一緒に仕事をしました。その後は映画の勉強を一生懸命され、去年『レッド・ファミリー』のプロデューサーを務め、今回『メイド・イン・チャイナ』の監督を引き受けていただきました。彼はイギリスで映画の勉強をしていたのですが、本当に誠実に映画に取り組まれ、今回私が書いたシナリオをうまく映画化してくれたと思います。
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©2014 TIFF

 
Q:『レッド・ファミリー』で最初に家族で食事をしているシーン、確かあのシーンではウナギを食べていたと思うんですが、何かその辺は関連を意識されたのでしょうか。(注:『メイド・イン・チャイナ』はウナギの養殖業に関する映画であるため)
 
ギドクさん:映画をもう一度見直さなければならないですね(笑)。
 
監督:確かに食べていたかもしれませんね。しかしシナリオ自体はこの『メイド・イン・チャイナ』の方が『レッド・ファミリー』よりも先に書かれていたので、その関連はあまりないのではないかと思います。ちなみになのですが、『レッド・ファミリー』で食べられていたウナギというのはイムジン河(注:『臨津江』と書くらしい)のウナギと呼ばれているもので、イムジン河というのは北朝鮮と韓国の境界線のあたりにあるところなんですが、そこにウナギの通りというか、ウナギのお店が立ち並ぶエリアがあり、そこのウナギを食べているという設定になっています。撮影自体もそこで行いました。
 
Q:キム・ドンフ監督はキム・ギドクさんの会社にいらっしゃるということで、やり方とかは熟知していらっしゃると思うんですが、毎回題材が特異なものが多いので、監督としてこの脚本を映画化するにあたり苦労した点があれば聞かせてほしいです。
 
監督:今回のシナリオはキム・ギドク監督が手がけられたんですが、キム・ギドク監督と私の見ている世界には違いやずれがあると考えています。そのためそのギャップというのを理解していくということが最初は難しく感じました。そしてその違いの幅を徐々に狭めていくにはどうしたらよいのかを考えながら映画の製作をスタートしました。
 
Q:キム・ギドク監督に質問です。日本でも(食品の品質に関する)問題が最近話題になっているのですが、キム・ギドク監督は今回の作品のシナリオを書くにあたりどういったきっかけがあったのかお伺いしてもよろしいでしょうか。
 
ギドクさん:この『メイド・イン・チャイナ』のシナリオを書いたのは確か5年ほど前のことだったと思います。そのきっかけというのが、実際に韓国に中国製のウナギというのが入ってきて検査をしたところ、これは不正だ、よくない食品だという判定が下り、新聞に載ったことでした。その新聞記事を見たときに私は、このウナギを育てていた人たちは悔しい気持ちになったのではないかと考えました。ウナギを育てるためにすべてを懸けてきたにもかかわらず、こうした不正だという判定が下り、どういった心境なのだろうかと想像しました。そこから発想がふくらみ、その家族がウナギの再検査の為に韓国にやってくる、という話があったらどうなるかを考えました。メイド・イン・チャイナ、メイド・イン・コリア、メイド・イン・ジャパン、といったテーマを裏に据えて、人間とは何かということを問いかけてみたいと思いました。ただ単にウナギの問題というだけではなく、アジアの中でチャイナ、コリア、ジャパンがお互いどのように考えているか、どのように思っているかということをウナギの話を通して映画にしてみたいと思いました。今の日本でもメイド・イン・チャイナのマクドナルドの鶏肉の問題があったと話をききましたが、韓国でも最近、よく福島産の食品がよくニュースに出ています。魚や米など、福島産の食品がたくさんニュースに取り上げられており、日本でも同じような状況になっているのではないかと思います。その食物に対する偏見というのはどこにでもあるものだと思うのですが、メイド・イン・チャイナ、メイド・イン・コリア、メイド・イン・ジャパンなど、食物に対する偏見は、食物が作られた国に対する偏見でもあるのではないかと思います。そこに住んでいる人たちに対する偏見も含めて、食物に対する偏見が生まれてくるのではないかと考えています。韓国が日本を見ているとき、中国を見ているとき、それぞれに偏見を持ってしまっているのではないかと考えました。そのため、今回のウナギを通して、見た人々にそうしたことを問いかけることで、各自が答えを見つけてほしい、偏見について考えてみてほしい、そうした思いがありました。説明が長くなってしまい大変恐縮なのですが、もう一つ付け加えさせていただきますと、タイトルは『メイド・イン・チャイナ』なのですが、逆説的にメイド・イン・コリアの食品は果たしてきれいなのだろうか、清潔なのだろうかということを大きく問いかけたいと思いました。
 
Q:監督に質問です。主演に2人に、どのように役に入り込ませるというアプローチをしたのか聞かせてください。
 
監督:まず男性の主人公のパク・ギウンさんなんですが、今回は準備の時間が十分になかったので、短期間で中国語を習得するというのが大きなミッションがありました。1週間程度のうちに、すべての中国語の台詞を記憶し、正確に発音するという努力を重ねてもらいました。そしてそうした中国語の練習をする中で、演技のトーンやシナリオへの理解を深めること、感情をつかむということをしっかりとやってくださいました。そしてもちろん、撮影に入ってからも彼はずっと中国語を勉強していました。女優のハン・チェアさんですが、彼女はもともとはつらつとしたフレッシュで都会的な女性の役をすることが多かったので、今回の作品の役を演じるのはとても大変そうでした。私も彼女と色んな会話をし、彼女が感情をつかむために十分な時間をかけました。その結果、彼女はとてもよい演技を見せてくれて、私も満足しています。
 
Q:パク・ギウンさんは中国語学科卒業ということをうかがったのですが、素地はあったのでしょうか。吹き替えではないですよね。
 
監督:私も彼は中国語ができるとてっきり思い込んでいたのですが、まったくできなかったので、また一から勉強し直してもらいました(笑)
 
Q:脚本について質問なのですが、主人公の男女が最初に惹かれあうきっかけは、女性の方が、主人公の姿勢に惹かれたということでよいのでしょうか。あるいは何となく、というふうに考えたほうがよいのでしょうか。
 
ギドクさん:私が最初にシナリオを書いたときのことをお話ししましょう。主人公の男性の年齢は22か23くらい、女性の年齢はそれよりも上くらいがよいのではないかと考えました。40歳くらいの女性、つまり人生を知り尽くして心にも傷を負っていて、心を閉ざしてしまった女性という設定でシナリオを書きました。そんな心を閉ざしている女性が心を開くきっかけというのが、ウナギの検査をした後に主人公の男性が自分の体も調べてみて、自分も汚染されてしまったことがわかったときに、その男性に哀れみを感じたと思うんですね。その哀れみをきっかけに心を開いたという設定でシナリオは発展させて書きました。
 
監督:私も今の話と同じ考えでした。さらにそこに行きつくまでに、それ以前にもたくさんの感情を積み重ねていくように映画を作りました。でも一番のポイントというのは、やはり女性が男性に哀れみを感じたというところだと思います。
 
Q:お二人に質問です。映画の中で、朝鮮族の中国人女性が割りと重要な役柄で登場しますが、韓国の方から見た朝鮮族の中国人というのはどういったものなのでしょうか。思いや考えがあれば聞かせてください。
 
ギドクさん:映画の中でも説明しているところがあるんですが、朝鮮族の方々というのは中国から出稼ぎにやってきます。一般的には手段を問わずにとにかくお金を稼ぎにくるという印象が強いです。中国から来た朝鮮族に対しては貧しいところからきた、という見方や偏見があり、そうした感情が以前にもまして強まっていると思っています。今も多くの朝鮮族が韓国へやってきているのですが、不信感がどんどん強くなってきています。そうなっている理由の一つに、ただでさえ各国には就職できない人たちがいるというのに、朝鮮族の人たちが来ることによって、ますます就職の機会がなくなってしまうという背景があると考えています。そうしたあまりよくないイメージが定着することが、朝鮮族に対する不信感を強めることになっています。
 
監督:現実では朝鮮族の人が韓国に来て働くということになると、食堂で働くことが多いということがあります。そうした人をたくさん見てきたんですが、他の国で朝鮮族の人を見かけると、彼らは自分たちが中国人であるという主張をします。つまり、韓国に来ると自分たちは朝鮮族、外国に行くと自分たちは中国人だと名乗ることが多いようで、朝鮮族の人たちは自分たちのアイデンティティについて凄く悩んでいるのではないかと考えています。日本にも在日韓国人の方がいると思うんですが、彼らは日本にいると日本人と同じように暮らし、韓国に来ると韓国人です、と名乗ると思います。それと通じるものがあると考えています。
 
Q:今後の抱負ですとか、韓国・中国・日本のことについての投げかけもあると思いますので、何か提言があればお二人から一言ずついただけますでしょうか。
 
監督:去年もこの東京国際映画祭で私の作品を上映していただいたときにはソールドアウトになり、今年もこの上映はソールドアウトになったようです。こうして私が手がけた2本の作品が日本で上映される際にソールドアウトになるというのは、本当に意味のあることだと考えていますので、見てくださったすべての方々に感謝したいと思います。これからも意味のある映画を撮れるように努力していきたいと思います。
 
ギドクさん:実は韓国では今回の『メイド・イン・チャイナ』や昨年の『レッド・ファミリー』のような作品を公開することが難しい状況にあります。どちらかといえばメジャーな、エンターテインメント性や娯楽性の高い作品でなければなかなか上映できないという状況にあります。こうした社会問題を取り扱った作品というのは敬遠されがちになっています。しかし去年は『レッド・ファミリー』が東京国際映画祭で観客賞をいただいたことによって、日本でも劇場公開できるようになりました。ですのでこの『メイド・イン・チャイナ』もぜひ日本でよい結果をいただき、日本で劇場公開できればよいと考えています。今日この作品を見て、この映画の中には真実がある、誠意があると感じた方はどうか周りの方々に知らせてください。

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