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2014.10.29
[イベントレポート]
「自分の子供が新しく生まれ変わって現れたような気がして、とても嬉しかったです。」特別上映作品『炎のランナー』-10/25(土):Q&A

 
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©2014 TIFF

10/25(土)、特別上映作品『炎のランナー』の上映後に、プロデューサーのデヴィッド・パットナムさんのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
Q:パットナムさんですが、この東京国際映画祭とは縁の深い方なんです。記念すべき第一回では審査委員長を務め、第4回では黒澤明賞受賞を受賞されました。
 
デヴィッド・パットナムプロデューサー(以下、パットナムさん):大変嬉しく思っています。お迎えいただき、ありがとうございます。実は、今皆さんとこの映画を拝見していたわけなんですけれども、なんと製作から34年が経っているわけです。今まででこんなにきれいな映像で見たことはないぐらい今日の上映はきれいでした。正直言ってこの20年間ぐらい、映像も悪くなってしまって、映像も荒かったんです。それを修復しまして、今回サブタイトルも素晴らしかったですし、映像も素晴らしかった。自分の子供が新しく生まれ変わって現れたような気がして、とても嬉しかったです。
Puttnam

©2014 TIFF

 
Q:ロンドンオリンピックの時に修復をなさったということで、本当にきれいですよね。こんなに美しくなるんだと感動しています。
 
パットナムさん:2020年の東京オリンピックが開催されるということですけれど、市川崑監督のドキュメンタリーがありますよね?あれも是非、この作品のように修復して生まれ変わらせてほしいです。
 
Q:この映画の中のスローモーションも市川崑監督にすごくインスパイアーされてやったそうです。質問が二つあるんですけれども、一つはデヴィッドさんは何のために映画をつくるのかということ。もう一つは、映画にしたいというところの決め手はいったいどこに置いているのか。
 
パットナムさん:わたしは本当にラッキーだったんです。実は、キャリアの早い頃にフランソワ・トリュフォー監督に会う機会がありまして、それから彼の言葉を受けまして、ずっとプロデューサーをしているわけなんです。その言葉というのが「本当に自分の心の中に何か伝えたいものがあったら、それを信じてその映画を作りなさい。それは、必ずその世界を変える力があるから。」と言ってくれたんですね。それと同時に映画人というのはある意味、とても自信を持ってなければいけない。そして、その自信というのは何かというと、自分の伝えたいことを聞きたい人がいて、それを聞けば絶対に世界は変わるという。それだけすばらしいものが自分の中にはあるんだという自信を持てと。ある意味傲慢さですね。それを持てという風に思えました。で、それをずっと考えながら、僕は映画を作り続けてきました。
あともう一つ加えさせていただきたいことがありまして、黒澤監督のインタビューがありまして、それに書かれた彼の言葉なんですけれども、人間として生きるのはとても大変だ。苦労が多い。だけれども、映画を一つのナビ、人生の指標として持って、そしてそれに学んで生きていければかなり簡単になる、ということを黒澤監督はおっしゃっていました。ですから言い換えれば、映画というものは、いかに人間がどうやって生きていくかを助けてくれる一つのツールなんです。
 
Q:映画にするかしないかの決め手はなんですか?
 
パットナムさん:それはとても簡単なことです。何か自分が本当に作りたいものがあったらそれは、選択肢はないんです。作らざるを得ないんです。ですから、決め手はないです。自分が感じた通りにやるということ。それで、例えば一億ドルで作れなければ、なんとか五千万ドルで作る方法を探す。五千万で作れなければ、二千万ドルでつくる。それもできなければ、一千万で作る。そのお金さえなければ、週末に自分が自宅で作れば良いわけです。とにかくある題材があって、それを作りたいと思ったら、それは作らざるを得なくなる。それだけの思い入れを思って作ります。
 
Q:この映画をずっと見ていていろんな役者さんの顔を見て、本当に役にぴったりでした。主人公だけではなく、脇役の人たちもみんな含めて。これだけぴったりの顔を捜すのは苦労なさったでしょうか。
 
パットナムさん:大変素晴らしい質問だったのですが、簡単に答えようとは思うのですが、難しいと思います。まず、1977年のことです。リドリー・スコットのデビュー作『デュエリスト』という作品なんですけれども、これを彼は、プロデュースなさったんですね。で、そのときには本当にその制作費がなくて。どうしたかというと、スタッフも自分も含めまして、必ずどこかのシーンには誰かが出てたと、で、それは背中だけかもしれない、そういうボディー、体が必要だったんですね、そのシーンのなかに。そのときには必ず誰かが出演していた。そういう工夫がされてたんですね。だから、本当にデビュー作にお金がなかった。それが一つのトラウマになって、それ以降は彼はとんでもない金額ををかけるようにしたんだと僕は思います。それで、僕自身もつらい経験でしたり、お金がなくて、自分たちも出なければならないという、だからなるべくそれ以降は自分の作品に出ないような、予算が増えるように努力したわけですけれども。ただ、正直言ってこの作品に関しましては最後の教会のシーン、あのシーンには、自分は出てみたかったというふうに思います。もちろん、カメラには手を振ることはしなかったと思いますが、出てみたかったと思いました。それで、二つ目の質問が本当に時間をかけてキャスティングなさったんではないかなと。あれだけの顔を集めるのは、どれだけのご苦労があったかと思うんですけれども、とても時間がかかりました。
ひとつのキャラクターのお話をさせて下さい。凄く時間をかけて色々なキャラクターにあった顔の俳優さんを探したんですけれども、それはニコラス・ファレル。オーブリーを演じている俳優さんです。オーブリーっていうのは僕にとってはこの映画の中でも最も重要なキャラクターだという風に思うんです。皆さん今ご覧になったので覚えていらっしゃると思いますが、彼はレースの中で転びます。それで、我々人生の中でとレースがあって、勝者っていないと思うんです。我々はその人生に中々勝つことができない。彼もレースで負けてしまうわけです。それでエブラハムとオーブリーが話すシーンがありまして、その中で、エブラハムはオーブリーに「僕は君の事を本当に尊敬している。君はとても満足して生きているよな、とても幸せだと見受けられる。僕は君の事をとてもに尊敬している。」と言う訳なんですけれども、オーブリーを演じたニコラス・ファレルの演技というのは僕はとっても素晴らしいと思うんです。最後のほうの教会から彼が歩き出すシーンなんですけれども、あの中でニコラス・ファレルという俳優はオーブリーになりきっているわけです。ワゴンが来て手を挙げるようなシーンがあります。あの時も、周りの人達は彼を勝者の一人のとして見るのだけれども、彼自身はそうではないと思う訳なんです。ここにいてはいけないのではないだろうかという、ちょっと恥ずかしそうな表情をしている。ずっと彼はその気持ちを引きずって、オーブリーの気持ちをニコラス・ファレルがずっと演じきっていると思いました。あのシーンを見るたびに今でも凄く感動します。
『デュエリスト』の話に戻るんですけど、彼がエキストラとして色々なシーンに出たって言いましたけれども、その演じた役のひとつが売春宿の主だったんです。そのシーンはカットされたんです。ですから、その後の自分のキャリアを考えても、やはりそのシーンはカットされてよかったなと(笑)
 
Q:この作品でアカデミー賞を取られたということなんですが、それは意外でしたか?それと同時に観客に大変感動をもたらす音楽ですが、ヴァンゲリスの曲を使おうと誰が決めたのでしょうか?
 
パットナムさん:この曲を使うのは決して難しい判断ではなかったです。そもそもこの映画を作るにあたって、ヒュー・ハドソンと色々お話をしていた際に僕が一番したくなかったのは、1924年の物語であるから、その当時の全てを再現するような映画は絶対に作りたくないと思った訳なんです。とにかく、とてもモダンで、この若者達はその当時を生きていたけれども、彼らの生き様というのは十分現代の我々でも学ぶことができるという事をこの映画を通して、皆さんに伝えたいという風に思ったので、20年代の古い感じの音楽は僕は絶対に使いたくないという風に思いました。その為に2つ僕は判断しました。1つはですね、頭と終わりに必ずお葬式のシーンを入れたいと思いました。ちょうどこの映画の撮影、制作に入った時にエブラハムが亡くなったんですよね。それで、脚本家のコリン・ウェランドが彼のお葬式に出席いたしました。ですから、そのお葬式のシーンも絶対に入れたいと思ったんです。それで、この人は本当に生きていたんだよ、こういうお葬式もあげられたぐらい、実際に生きていたという事を示したかった訳です。唯一この映画の製作にあたって、20世紀FOXと喧嘩したのがそのシーンでした。なぜなら、20世紀FOXはあれは全体のペースを落とすからカットしてくれと言ったんだけれども、僕は絶対NOと言ったんですね。もう一つの判断というのがこの音楽を使うことでした。やはり裁判の実話も入れまして、どんどん現実味を与えたかったわけなんだけれども、ちょっとこれは逸話なんですけれども、この作曲家にミッドナイト・エクスプレスの作曲も依頼したんです。けれどもスケジュール的にだめで、それで結果的に他の作曲家にミッドナイト・エクスプレスの作曲を依頼したところ、彼はなんとアカデミー賞をそれで取ったわけなんですけれども。それは、ちょっとさておきまして。どうしてヴァンゲリスに曲をお願いしたかというと、とにかくエレクトロ二クスの感じの曲を使いたかった。ビーチのシーンで走っているシーンありますね。あの中でも、あの曲っていうのは一つのアイコンみたいになって、お客さんがあの曲を聴くと笑いだすわけなんですけれども。やっぱり、この現代的なアレンジをしたい、いれたいということで、曲をあえて使いたいと思いました。
それでちょっと今皆さんが、この浜辺を走っているシーンとこの有名な曲は違うじゃないかと思われたでしょう。では、どうしてこのエンドタイトルで流れる曲が入ったかというと、また更に面白いエピソードがありましてですね。この映画がほぼ完成に近づいたときに、とにかく自分はもっといい曲が書けるはずだってずっといい続けていたんですね。それでたまたま彼のお父様が亡くなりました。お父様というのはアスリートだったそうです。そして彼の父親の為にレクイエムを作ったということを僕に話してくれて、「この映画の中に入れることは無理かな?」僕は「無理だよ」と答えたことがあった。けれども、妻と彼とでご飯を食べていて、それで夕食の後に、レストランから出て、彼の車のところに行ったら、その曲があるからぜひ聞いてくれと言いまして、車のカセットでこのエンドタイトルの曲が流れたわけです。これをどうしても、入れてもらえないか、と言ったら、映画の頭と終わりだったら、なんとかくっつけることが出来ると僕は言ったんですね。それで、この曲がこの映画に入ることになったんですけれども。たぶん、最も重要なテーマ、そして、最も重要な音楽が映画の本編の中に入っていない作品はたぶんこれが唯一だと思います。
受賞の発表のとき、僕は本当に呆然としました。もしこの映像がYouTubeのどこか残っていて皆さんご覧になっていただけたらお分かりだと思いますけれども、発表があって、その受賞作品が『炎のランナー』って言われたときに、僕は本当に倒れこんでるんです。それで、おかしいことにスピルバーグがちょうど後ろに座っていて、彼が『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』でノミネートされているんですけれども、後ろからどんどん僕の肩をたたいて「君が勝つよ!君なら受賞するよ!」ってずっといっぱい言ってまして「こいつうるさいやつだな」と僕は思ってたわけですけど、最終的に、正解だったということです。
最後に言いたいことは、もし、『小さな恋のメロディ』が日本でヒットしなければ、僕は今日、この場に立つことも、そして、『炎のランナー』が制作されることも、また、僕のこれまでの映画が全部制作されることもたぶん、なかったと思います。僕の人生、そして僕の映画人としてのキャリアというのは本当に日本の皆様方が『小さな恋のメロディ』を、ヨーロッパでは全然ヒットしなかったにもかかわらず、深く愛してくださったおかげだと思っております。心からお礼を申し上げます。

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