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2014.11.05
[イベントレポート]
「元々は、もっとコメディを作りたかったんです。」日本映画スプラッシュ『愛の小さな歴史』-10/26(日):Q&A

augustintokyo

©2014 TIFF

10/26(日)、日本映画スプラッシュ『愛の小さな歴史』の上映後、中川龍太郎監督のQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
Q:改めてスクリーンでご覧になられて、今のご感想をお願いいたします。
 
中川龍太郎監督(以下、監督):大きな画面で見たのは初めてでした。「こういうところは反省すべきだな」というところが多かったです。
 
Q:作品の構造のお話なのですが、こういった2つのカップルを描いてこうというアイディアは、最初からあってこのような映画になっていったのか、脚本を書かれたときの経緯を教えていただけますか?
 
監督:大事な家族と死別して、そのあとに一人の男性と女性が出会うという、最初の出会いのシーンから書き始めまして、そこから広げていって、それぞれのお互いのエピソードをつけたして、建て増し工事みたいに作りましたが、最初のコンセプトがありました。120分撮ったものもあります。
 
Q:どうして80分になったのか、その経緯を教えて下さい。
 
監督:自分の周りの人間であったり、プロデューサーであったりが、長すぎると。出会うところがピークなので、そこで終わらせた方がいいのではないかと言われ、そのようになりました。
 
Q:では、ディレクターズカットが見られるわけですね。
 
監督:そうですね(笑)。1週間でも、2週間でもいいので、どこかでレイトショー公開できたら自分としてはすっきりするんですけれども。でも、これはこれで一つのものとして良いなというか、嫌々切ったのではないので。もし気に入ってくださったらそちらのほうも、見てください。
 
Q:キャスティングが皆さん凄い迫力なんですけれども、どのようにキャスティングを考えられたか教えて下さい。
 
監督:主人公をやってくれた中村映里子さん。彼女を撮るということは自分の中で前提にあって、そのような物語があったので、彼女から計算して、他に誰がいるだろうかというように作っていきました。色々幸運なこともあって、もともと決まっていた役とは違う役でお願いしたりとか、紆余曲折はあったのですが、プロで活躍されている方から、今まで自費製作で一緒にやってきた仲間と、混成部隊のキャスティングになっておりますので、自分としても新鮮です。楽しかったです。
 
Q:二つのカップル、二つのエピソードは、ほとんど別々に撮っているわけですよね。しかし、二人の男女の相性というものはやはり最初に気にされた事なんでしょうか。
 
監督:要するに、あまりちゃんとした教育を受けていない、社会的なステータスが高いとは言えない連中のお話なので、だけれども下品にはならないようにしたいというのはありまして、沖渡さんもそうですし、中村さんもそうですけど、二人とも非常に荒々しい感じを出せながら、下品にはならないように、ギリギリのところで出来るというのがとても素晴らしいと思い、お願いしました。
 
Q:監督はどの程度役者さんに演出をするのでしょうか。それとも、割と任せるタイプなのでしょうか。
 
監督:今反省しているところなのですが。この作品は今までの自分のやり方であった、かなり細かい、台詞の言い方だったり、トーンであったり、リズムであったりと、相当うるさく細かく言って、そのことで逆に役者さんの自然な魅力を制限してしまっていた部分もあったと思うので、この作品を撮っていく中で、役者さんに任せていったほうがより良くなっていくんだろうなと感じていったというのは、正直なところです。前半と後半で演出が違ったという、自分でもよく分からないことが沢山ありながら撮っているという立場なので、この作品を撮りながら勉強させていただいたという形です。 
 
Q:前半と後半で演出が違ったとおっしゃっていましたが、撮影時間自体はどのくらいあったのでしょうか。
 
監督:2ヶ月くらいですかね。女性をメインで撮ったほうが2週間と、少し期間をあけて、男性を2週間撮りました。実際は、1ヶ月とちょっとくらいですが、期間でいうと2ヶ月くらいです。なので、季節が繋がらなくて困ったなという…(笑)
 
Q:80分にするにあたって、新たに追加したところは?
 
監督:元々の120分の段階から、冒頭と最後のところも決まってはいたのですが、自分の考えとしては120分のものにしたから、その長さも込みで作っていきました。なので、付けたしたというわけではないです(笑)。全体の映画の中でも撮り方が違うシーンがあるので。そこをよいと捉えるか、課題と捉えるかも、まだ少し判断がつかないところです。
 
Q:このお話というのは、何をきっかけに思いついたのでしょうか。
 
監督:元々は、もっとコメディを作りたかったんです。今までは暗く重い作品が多かったので、コメディタッチのものを作りたいという気持ちがありまして。それで良い役者さんとも会えたし、やろうと思っていたのですけれど、撮る直前に自分の大事な友人を失ったりだとか、悲しいことがあったりしたので、またかなりヘビーな方向に行って。最初にやりたかったこととブレた部分も少しあったりします。思いついた経緯ですが、「愛の小さな歴史」という、エッセイか何かがありまして、ミナトさんという写真家の方の本があってですね…。
 
Q:港千尋さん!
 
監督:そうです!その方の本で。僕が凄く好きな本なのですけれど。全くストーリーと関係ないエッセイなんですけれど、題名が凄く素敵だなと思いまして。題名から物語を考えることが凄く多いので。「愛の小さな歴史」といったらどういう話だろう…と。例えば、僕が生まれるに至るまでも、おやじとおふくろがどういう風に出会って、どういう風に乳繰りあったのかっていう(笑)。そういう事についてを描いたら面白いのではないかというのが自分の中にありましたね。
 
Q:少し先々のことを聞きたくて、今回複数の物語が絡みあって、前回の作品である『Plastic Love Story』も恐らく3つのストーリーが絡み合って、という感じだと思うのですが、先々もそういうようなストーリーをやっていかれたいのかという質問と、自主制作映画団体 Tokyo New Cinema への想いというか、どのような団体のにしていきたいのかということを聞かせていただければと思います。
 
監督:難しい質問ですね(笑)『Plastic Love Story』という僕の前の作品なんですけれども、今年の頭に公開した作品で、それとこの作品はたまたまそうでしたが、それはボクが長編を作る能力がなかったからで、短い話をいっぱいぶっ込めば長編になってなんとなくかっこつくんじゃないかな、という浅ましい考えでもあったので(笑)。ちょうど今撮影中なのですが、今日撮影して参ったんですけれども、今撮っている作品は、もうまさに、一人の男の一つの物語で。でもこれは自分のこだわりとかではなく、作品のアプローチや題材によって変わるものだと思います。ここにこだわっているというわけじゃない。
だから次の作品はまた一人の物語ですし、ただ、こう大勢の人間がそれぞれ展開されていって、そのそれぞれがすごく、何て言うんですかね、世の中というのは一人で成立しているものではないので、色んな人が出てくるという、色んな事情で色んな物語があって、そこでぶつかりあう、みたいなものをなるべく濃く描いていくと何か群像劇みたいになってしまう。そういう映画が自分も好きですし、そういうものに近いものを、もうちょっと出世していっても撮っていくかもしれないんです。
製作段階といいますか、自分の映画を作らせてもらっていて色々と今は昔よりもお金をかけないで自主制作で作品を作れる時代になってきていますので、昔だったら2000万のところがいまだと200万でできたり、それが良い悪いっていうのは難しい問題だとは思うのですけれども、それを言って良いのかは難しいですけれども、そういう手に届く額であれば大きい企業からの協賛がなくても、こういう力のある俳優さんと一緒に撮らせていただけるという、新しい一つの形だと思うんです。だから、それをやってくださっている方がいて、撮らせていただいて。もうちょっと予算を増やしていただきたいなっていうのが正直なところで。これなんか100万円ぐらいで撮っているのですけれども、もう少しあったら、もっと良いものが作れると。
誰か!
すみません、以上です。
 
Q:それは切実な思いだと思います。去年もスプラッシュ映画に出展していた監督さんも、そろそろ次のステップに進むためには、やはり1000万円のところに行かないと頭打ちだということをおっしゃっていました。
 
監督:少しでも興味を持ってくださっている方がいらっしゃれば、ちょっと覚えていてください。
 
Q:前半の質問に絡めて、ちょっとどろっとした群像劇がお好きということで、そういうのを目指せたら、とおっしゃっていましたが、何か監督の名前とか作品名とか、イメージするものを挙げてもらえますか?
 
監督:本当に色々あるんですけれども、どうですかね?群像劇でということですかね?『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』という映画は凄く好きでしたね。あと、群像劇とは違いますけれども、『犬神家の一族』とか。要するに大勢の人間がワーッと出てきてという、それぞれの事情があって、という。
僕はずっと映画ばかりが好きで観てきたのですが、大河ドラマや歴史が好きで。大河ドラマって一年間に50話あって、主人公以外もかなりフォーカスされている。そういうものの影響といいますか、ああいうものでしか出せない面白さっていうのが。最初に良い感じの爽やかなやつが、終わりの頃にはとんでもないやつになっているというか。そういう面白さが自分の中で影響を受けているのではないかという気はします。矢田部さんがいるからって言うわけじゃないんですけれども、『ソフィアの夜明け』と言う東京国際映画祭で何年か前にグランプリ(2009年・第22回TIFF)をとられた素晴らしい作品があるのですが、ああいうものを作りたいと思っています。素晴らしいですね。
augustintokyo2

©2014 TIFF

 
Q:今までの作品と比べて新境地かなと思ったのが、音楽の使い方です。劇場で見るのには効果的だったと思うのですが、今までどっちかと言ったら、音楽にはストイックな印象があるのですが、今回の作品の狙いといいますか、音楽の使い方についてコメントいただけたらと思います。
 
監督:ストイックというのは、制限して使っていたという意味ですか?
 
Q:そうです。例えばコーディングにしても音が少なくて、だからこそ音響効果といいますか、響きがとても印象的でした。
 
監督:感傷的に使っていないということですかね?
 
Q:そうです。
 
監督:感傷的に使ったのは、元々こういうシーンを思いついたというのが前提にあったので、特に深い考えがあって音楽を使うぞ、という意味ではないです。今まではオリジナルの音楽を使っていたということですけれども、ラフマニノフの交響曲という、それぞれに思い出がある、知っている方にとっては思い入れがあると思うので、そういうところは意識しました。音楽って自分の感情と結びつけることが出来るので、僕もラフマニノフの曲などをよく聞いていたな、という思い出が残っているわけです。そういう万人にとってイメージがあるものを使うというのは非常に難しいものですけれども、だからこそ既存の曲でしかできないアプローチというものがあるわけです。人間にとって、誰かにとって、ある特別な体験というものが音楽に影響を受けたりするっていうのが、まず既存の音楽でしか出来ないですね。だからそういう意味でかなり感傷的に使われているのかなと思います。
 
Q:オリジナル音楽といいますけれども、中川監督の中では感傷的というのはネガティブな意味ではなくて?
 
監督:もちろん。
 
Q:ポジティブな「感傷的」というかんじですか?
 
監督:そうですね。音楽を使っている映画は結構好きで、音楽でワーッてする映画が好きなので。『砂の器』みたいな。ああいうものも好きなので。
 
Q:大切な役割を果たすのが光石さんと池松さんという達者なベテラン・若手俳優さんがいらっしゃいますが、彼らとはもう、長くお仕事をなさっているのですか?
 
監督:もともと池松君に関しては前の前の作品ぐらいで、学生時代に撮った映画に出てもらった経緯があったので、そのつながりです。この企画もキャスティングやアイディアやアドバイスをもらって、色々な人を紹介してくれたりしたので、キャスティング担当ではないですけれども、キャスティングマネージャーみたいなことを池松君がしてくれました。脚本にも意見を言ってくれて、池松君はそういう意味で友達といいますか、そういう友情もあってということでやってくださって。光石さんに関しては、ピアノを弾いているキザな男が出てくるじゃないですか。あの人をもともとオファーする予定だったときに、事務所が同じで光石さんもちょうど若い監督の作品をやりたいということおっしゃっていたみたいで、脚本読んでいただいて、これだったら出てもいいと思ってくださったのか、というのは分からないですけれども、出てもらって。今回が初めてでした。
 
Q:そうなんですね。光石さんはまだご覧になってない?
 
監督:早く見てほしいですね。大好きな俳優さんだったので、すごく緊張しました。
 
Q:酔いつぶれたときの呆然とした顔が素晴らしくて、すごく良いですよね、あれはどう引き出したんですか?
 
監督:いえ、あれは引き出していないんです。完全に光石さんが凄いだけです。やるぞ、となったときに、顔真っ赤だったじゃないですか?一滴ももちろん飲んでないですよ。それまで散々、僕はミーハーだからショーケンが大好きなんですけど、「話したことあるんですか?!」みたいな話をしていたんです。そしたら、じゃあ準備が出来たので入ってくださいとなって、用意、と言うまでは顔は普通だったんですよ。スタート、と言った瞬間真っ赤になるんです!
 
Q:信じられないですね。
 
監督:そうなんですよ。あぁ、これはやっぱり次元が違うなあというか。あれは1カットでほとんど撮っているので、ただただ凄いと言いながら僕は見ていたので、何もやってないです僕は。ひっくり返って頭をぶつけて、さも頭が痛いかのようにみせるのですが、たぶん当たっていないのです。大変なことをしてしまったんじゃないかなあって焦るぐらい痛そうにお芝居をしてくれて、やっぱりすごいですね、ああいう人は。
 
Q:それでは、これからの作品なども含めましてどうでしょう。最後に一言いただけますでしょうか?
 
監督:まだ決まっていないのですけれども、必ずロードショー公開すると思います。今まで3作品ロードショー公開していますし、来年の、夏が恋しい気分になってくる時期に公開したらいいのかなって思っていますので、5月、6月、7月ぐらいにどこかでやりたい。今までは東京都内がメインだったのですが、日本の各地で観てもらえるようにしたいと思っています。もし面白いと思ってくださっているようであれば、その際に良かったって言ってくださったらすごく助かります。
 
Q:是非応援したいと思います。そして今撮影中の今後の新作のことについても、少しお話ししていただければと思います。
 
監督:そうですね、素晴らしいんですよ。今撮っている作品が。公開するのは来年の年末ぐらいになるとは思うのですが。
 
Q:ということは、来年もまたここで?
 
監督:それは僕が決めるようなことではないのですが。選ばれることだから、何とも言えないです。しかし、呼んでいただけるのであれば、更にレベルアップした形で戻って来られると思いますし、ある男の人が友人を失ってからどういう風に立ち直るのかではなくて、生きていくのかという物語。少しはこの物語とも関係があるのですけれども、今の日本ではこんな映画があるのかという風になっているはずなので、ちょっと期待してもらえると。名前だけでも覚えていただけたら、調べてくれたら出るはずなんで、よろしくお願いします。

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