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2014.11.04
[インタビュー]
「作品を書くときは、まず自分が感動すること。自分がストーリーを咀嚼していなければ相手にも伝わらないと思います」公式インタビュー コンペティション 『メルボルン』

メルボルン

©2014 TIFF

「作品を書くときは、まず自分が感動すること。自分がストーリーを咀嚼していなければ相手にも伝わらないと思います」――ニマ・ジャウィディ(監督/脚本)
作品詳細
 
メルボルンに留学する若夫婦の出発の日、アパートの引き渡しや後片付けで忙しい最中に、突然驚くべき事件が起きる。出発までの時間刻みのなか、若夫婦のモラルが問われていく緊迫の人間ドラマ。これが長編初監督となるイラン映画界のニマ・ジャウィディ監督に話を伺った。
 
――この作品の発想はどこから生まれて、育て上げていったのでしょうか?
 
ニマ・ジャウィディ監督(以下、ジャウィディ):数年前、海辺の別荘である夫婦の眠っている子供を預かることになって私と1歳の子供のふたりきりになったことがありました。時間が経っても子供が起きないのですごく不安になり、もしも子供が起きなかったらどうやって説明するのだろう――その思いが強く残り、この映画の発想になりました。
 
――メルボルンへ向かう当日に事件が起きる設定にした経緯を教えてください。
 
ジャウィディ:短い期間で撮影をすることを念頭に置いていました。低予算の映画ですから、ひとつのアパートのなかで展開する設定にしました。さらにスリルを生むために、展開するストーリーを時間刻みにした方がいいと考えました。爆弾が爆発する前の、カウントダウンのような効果を画面に生じさせたかったのです。
 
――問われるのはモラルですね。ふたりの登場人物の行動を納得させるためにどのようなことを心掛けましたか?
 
ジャウィディ:作品を書く時に、まず自分が感動すること。自分がストーリーを咀嚼していなければ相手にも伝わらないと思います。すごく苦労しました。スリルを維持しながらモラルを問いかけるのは難しい作業でした。ただ、書く時点で苦労したので、演出はむしろ楽でした。人間のモラルを扱うのは本当に神経を使います。
 
――脚本にはどれくらいの時間がかかりましたか?
 
ジャウィディ:11か月、約1年近くかかりました。撮影はおよそ51日間です。
 
――製作費はどうやって捻出したのでしょうか。政府からの補助がありましたか?
 
ジャウィディ:最初は脚本を政府関係のファンドに持っていきました。脚本は好評でしたがファンドの出資金額が少なかったので、プロデューサーが民間銀行から借り入れてくれました。100%自己資金です。
 
――作品の若夫婦のように、海外に出るケースは実際にイランには多いのですか?
 
ジャウィディ:イランでは若い夫婦が海外に勉強に行くというのは稀ではありません。
 
――モラルの話ですが、世代によってモラルの認識は違っていくと思いますが、監督の同世代と年上では認識は違うのでしょうか?
 
ジャウィディ:モラルや責任感は、自分の世代、さらに若い世代はどんどん希薄になっています。父の世代は社会や国に対しても、すごく責任感を持っていました。例えば戦争が起きた時、私たちの父は戦争に行って国を守りました。若い世代には同じことができないのではないかと思います。責任感が緩くなっているということは言えます。このことが100パーセント作品に反映されています。
 
――出演者はどのように選ばれたのですか?
 
ジャウィディ:脚本を書く時、役者をイメージして書く監督もいますが、私は逆で、登場するキャラクターのイメージしか考えないようにしました。書き終わった脚本を前にして、この役を演じられるのは誰かと考えたのです。リアルな演技をする役者の名前を並べて熟考し、男性はペイマン・モアディで、女性はネガル・ジャワヘリアンを選びました。
 
――緊迫感を出すために、演出は細かく指導をされたのですか?
 
ジャウィディ:脚本をものすごく細かく書きこんだことが役に立ちました。ひとつのセリフに関しても、すごく詳細に仕草など記しました。その記入があったから、現場では苦しくありませんでした。撮影に入る前、全スタッフに、リアルに撮るために存在を意識させないようにお願いしました。脚本にも最初から最後までメッセージ性のある台詞はひとつもありません。現場も日常的な雰囲気のなかで行うことを心がけました。
 
――この作品は順撮りですか。ラストの長回しは最後に撮影されたのですか?
 
ジャウィディ:実は、順撮りで撮りたかったんです。リアルさを出すために必要だと思いました。でも残念ながら女優が途中で病気になり10日以上入院していたので、順撮りが70パーセントほどできていたのですが仕方なく別のシーンを撮りました。しかし、ラストシーンはそのまま最後に撮影しました。
 
 
取材/構成:稲田隆紀(日本映画ペンクラブ)

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