10/25(土)16:00より、TOHOシネマズ 日本橋にて、『ピクミン ショートムービー』の上映が行われました。
上映後には、その生みの親であり、ゲームプロデューサー/任天堂(株)専務取締役の宮本 茂さんが登壇、(株)ドワンゴ代表取締役会長、スタジオジブリ・プロデューサー見習いでもある川上量生さんとのトークイベントを行いました。
その模様は、第27回東京国際映画祭 オフィシャル動画ニコニコ動画、ニコニコ生放送にて配信が行われました。
この日の宮本さんは、ピクミンのTシャツにブレザー姿で、「もっと子どもさんが多いと良かったかな。(上映を)針のむしろのような心境で見ていました」と感想を述べました。トークイベントはピクミンの貴重な映像等を挟みながら、約1時間行われました。
川上量生氏(以下:川上):テレビゲームの父である宮本さんとのトークは緊張しております。
宮本 茂氏(以下:宮本):(会場を見て)ゲームってこんな風に誰かに一斉に見てもらうってことが無いですよね。
(ニコニコ動画の生放送のコメント質問も受け付けると聞き)しんどいコメントも多いので(笑)、それに耐えられるか、ドキドキしています。
川上:3DSで動くピクミンの映像を見ましたが、劇場の大きなスクリーンで見ると全然印象が違いますね。なぜ、この「ショートムービー」を作られたのですか?
宮本:任天堂のキャラクターを使った映画を作りたいというお話しをずっといただいていました。
インタラクティブのゲームを作るという事と、映像で観客を説得するという事は全然違う仕事なので、興味はあるけどとても作れないです、作るのは難しいといってきました。
(他の誰かに)作ってもらうとなると、ゲーム以外の環境でキャラクターを説明されたり、詳しく設定をされてしまうと、どんなゲームを作るかわからないですよね。
例えば、マリオがピザが大嫌いだったとか設定されてしまうと、次からピザが好きなマリオのゲームが作れなくなってしまう。そんな制限が出来るのが嫌だし、ゲームのキャラクターというのは自分で遊んで、プレイヤーであるお客さんが自分で作っていくものなので、映画化等には興味ありませんでした。
川上:ゲームのオープニングムービーは宮本さんが作られている?
宮本:そうですね、ゲームの中を理解していただくために作っています。映画になると単独で面白くないといけない。それだけハードルが高い。
川上:今回は関わったのですか?
宮本:改めて作ってみてさらにハードルは上がりました(笑)
スーパーマリオはその画面でマリオが動いていますから、こんな人でしたよねとか色々わかりやすいですけれど、ピクミンていうのは、別の主人公がいるし、(ゲームの中の)ピクミンにも手を振ったりたくさんのしぐさをつけているのですが、ゲーム画面ではなかなか気づいてもらえないので、そのピクミンのキャラクターを見てもらうために、何かアニメーションを作った方がいいのかなと制作しました。
もう一つの制作理由は、中学まで4コママンガを描いててね。
ピクミンを映像化するなら、4コマとか短いものが合うのかなと思っていたのだけど、短編だと映画館で上映する流通がないし、任天堂にもそれを紹介する媒体がない。
でもニンテンドービデオをやったり、DSに映画配信を始めたり、自分のところに出口ができたな、じゃあ2・3分の短いものをいっぱい作ってみよう!と最初は意気込んで始めました。
最初はゲーム機で配信するために制作した映像でした。ゲームで描き切れないものを、サプリメントとして、3DDSで観てもらおうと、3D環境がちゃんと整っていますから、ムービーを作りませんかということで、別会社(3Dの制作会社)で始めました。
任天堂からは私一人で、社長には許可のハンコだけいただいて(笑)。
川上:宮本さんは絵コンテ等に関わられているのですか?
宮本:基本的には監督とスタッフさんがやってくれました。1本目は自分で、DSのうごメモ(うごくメモ帳 3D)で絵コンテを作りましたよ。
3分のものを10本作ろうとしていましたが、2本目は7分になり、3本目も…。
1本目はブラックな感じ、2本目は青空を描きたい、もう一つは子どもと親が一緒に見たときに、見ている親も思い入れてしまうような、自分の子供のころの経験や皮膚感覚を大事にしました。世界で公開するので、ラムネのビンを登場させて、日本ローカルのものを、世界に認知させてしまおうと。
川上:世界で知られているものじゃなくて、出てくるものを世界に認知させようという発想なのですね。
宮本:あと、世界向けなので、セリフをなくしました。セリフがないのは完成後は楽だけど、制作は意外と大変で苦労しました。
川上:僕はセリフがないのがすごく面白いなと思いました。任天堂のゲームって64の時から、変なことをしゃべるじゃないですか。しゃべってる感じだけ出してて、フルボイスでも出せそうなのに、あえて出していないですよね。
宮本:出してないですね。
いままでは、ローカライズいらずの国際戦略をしてきましたが、ピクミンの場合は日本文化を海外に輸出しよう、言葉無しで海外でどこでも見られる、親子でも楽しくみられる作品を、という贅沢な欲があって、その中にラムネのビンを出したのと、ピクミンのゲームを知っているとさらに面白いという映像を制作しました。
川上:僕は映像を見ていて、あるシーンでボタンを押したくなりました。ピクミンはボタンを押すゲームじゃないけれど。
宮本:次はボタンを押すシーンを入れようかな。映像に入り込むというと、海外の観客は逃げ回るシーンとかが好きですね。では、ワーッと逃げ回るシーンを作ろうと。今回の短編で最大では500匹のピクミンを出したので、これが制作期間が伸びた理由です(笑)。
川上:そのピクミンの動きはゲームから流用したのですか?新たに作成を?
宮本:ゲームからある程度参考にしたのですが、ムービー向けには、それ用に作らないといけないので、一から作成しました。基本のものを作れば、殴り書きのコンテでもある程度伝わるので、便利なのですが、あまり流用が出来ないです…
もしも、自分の考えを預けられる人が出れば、長編も考えたいですが…。
僕自身はアニメーションの監督として他の方が見たら、考えられない監督かもしれませんが、CGでやることで、やったことのない人でも出来るのかなと。
川上:ドンキーコングの時代は自分でドットを書いたりしていたのですか?
宮本:そうですね。ドットも自分で書いていましたよ(笑)
川上:アニメーションの動きというのは実際やってみていかがでしたか。
宮本:マリオは3コマ書けば走ります。そこを何とか6コマにとプログラマーに頼んでいたくらいメモリがなかったですから。やはり全編というのは大変ですね。
ゲームの中では無茶なことをするとプレイヤーがついて来れないのですね。でも映像だと、ギャグをどれくらい大胆にするべきかとか、無茶な動きを取り入れないと、流されてしまうので、途中でコンテを大胆に変えました。
アニメを作るというのも、色んな人にチャンスが出ていると思います。
ゲームソフトで協力できるような環境を整えられるといいですね。「“スーパー”うごメモ」を作りましょうか?
うごメモというのは、本当にアニメーションのツールになると思っています。小学生がうごメモで書いた絵コンテが、ハリウッドで100億円で実写化されたりとか、すごいですよね。
川上:それはぜひ、作っていただきたいですね!
トークはその後、川上さんがプロデュースする「山賊の娘ローニャ」のお話しや、会場から質問を受け付け、宮本さんが回答するコーナー等で盛り上がりました。
このイベントの模様は、タイムシフト視聴が可能です。
東京国際映画祭チャンネル