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2014.11.11
[イベントレポート]
「米は単なる食べ物ではなくて、タイ人のルーツ」CROSSCUT ASIA『稲の歌』-10/27(月):Q&A

thesongsofrice

©2014 TIFF

10/27(月)、CROSSCUT ASIA『稲の歌』の上映後、プロデューサーのピムパカー・トーウィラさんのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
Q:ピムパカーさんは、日本では山形のドキュメンタリー映画祭で審査員をつとめられ、それから福岡の映画祭でご自身の監督作の『ワン・ナイト・ハズバンド』という作品が上映されました。それからイメージフォーラムフェスティバルでも受賞されるなど、幅広く活躍していますけれども、この映画に関してはプロデューサーになります。ご挨拶を一言お願いします。
 
ピムパカー・トーウィラさん(以下、トーウィラさん):皆様こんにちは。東京国際映画祭に参加することが出来て、とても嬉しいです。ウルポン監督は公私共にお忙しくて、来ることができなくて残念がっていましたけれども、皆様によろしくお願いいたしますということで預かってきました。
 
Q:ウルポン監督のスタイルは、ノーナレーションのドキュメンタリーということですけれども、映画の背景をお伝えいただきたいのですが。この舞台はタイのどの辺りの場所なのか、それからお祭りが出てきますけれども、どういうお祭りなのか、その辺を簡単に教えてください。
 
トーウィラさん:この映画のことを語る前に、ウルポン監督の映画の撮り方をまずご説明します。ウルポンさんはチェンナイというタイの北部の町に住んでいまして、この前の1作目が”Stories from the North“という作品でした。チェンナイに住む農民の生活を、ショートフィルムで撮ったものを1つの作品にまとめたものです。
その次の2作目に『稲作ユートピア』という作品を撮ったのですが、これは農民の生活を映画で記録したいという気持ちで撮りました。田んぼを借りて、2つの農家の家族の元に行って、一年中稲作をやってもらいました。そのときのいろいろな出来事を、作品に収めています。そして、3作目の『稲の歌』ですが、これは監督がバンコクで大学院の卒業制作として作った作品です。
最初監督は、稲作の歴史を映画にしたいと思い、タイの各地に行ってリサーチを重ねました。東北部に行ったり、南タイに行ったり、中部に行ったりしました。その結果、やはり稲作の歴史というのは、まだうまく作れないテーマであるという結論に達しました。そこで、稲作にまつわる各地の歌、例えば子供が歌っていたり、色んな状況で歌っていた歌をモーラム(伝統音楽)というかタイ民謡というか、お祈りの歌などもこの映画の中でまとめました。
各地で撮影してきて話し合いながら編集をしたのですけれども、これをすべて歌で構成するのは何か違うと思いました。歌で全部ストーリーを作るべきではないと思いました。そこで、稲作にまつわる文化を取り入れたらどうだろう。その1つの要素が歌であるという結論に達しました。そしてその編集、修正をしていきました。ウルポン監督の意図としては、2作目と同じような内容にしたくないとおっしゃっていました。2作目はテーマがはっきりとしていたのですけれども、今回3作目は考えながら実験していき、むしろどちらかというと観察者の視点で作りたいと思いました。
そしてそのドキュメンタリーの中で、撮影している自分の気持ちも記録したいと思いました。なので、撮影で、キャメラを立てているだけではなく、ステディカム、手持ちのキャメラで撮りました。次第にテーマに近づいて撮っているうちに、いきなりハプニングが起きたりする、自分の実体験、その場の実体験を取り入れました。
実際数件にまたがって撮っています。地域によって稲作に関する風習文化という様々なものがタイにあるからです。たとえば水牛の競争は、タイ、バンコクの近くのチョンブリーで撮りました。また、稲作にまつわる風習というのはタイの東北地方でしっかり引き継がれているのです。ロケット祭りは2箇所で撮りました。おばあちゃんがフラフープをしているモーラムという伝統的な踊りなどは、やっぱり東北地方でローイエット、アムナートチャルーンいうところで撮りました。マノーラという天使の踊りは、はっきり南タイの特徴を表しているのですが、ソンクラーというところで撮っています。もちろん監督の実家であるチェンナイでも撮影しています。タイ国政府官公庁みたいな、タイ国文化を映したかったわけではないのですが、たまたま稲作にかかわる精神性を表すようなお祭りを探したときに、各地に散らばっていたということです。この映画の中に稲を強調したシーンはなく、どちらかというと稲作にまつわる生き方や、稲作に関する歌などが見られます。やはり、社会の中にある文化・風習は、タイの中では稲作文化が息づいているということなのです。稲は、米は単なる食べ物ではなくて、タイ人のルーツであるという考え方です。
 
Q:丸いロケットと直線型のロケットがありましたけれども、あのようなロケットという文化、火薬を使うような文化は危険が伴うものだと思うので、しっかりとした品質管理や、あるいは一種のコミュニティーのようなものできちんと管理されているのではないかなという気がしています。花火に近いものだという気がしたのですが、日本では花火を上げるときには、過去に起こった記念のことや、あるいは自分の願いというものを、花火に込めて打ち上げたりするのですが、ロケットに対して、タイの方の精神、気持ちというのはどういう願いをかけているというものがあるのでしょうか?
 
トーウィラさん:いきなりロケットを上げているわけではなくきちんと意味があり、御布施をする意味があります。もしくはロケット祭りというお祭りなのです。タイ人の稲作文化に関係する行事として、雨乞いの意味があります。品質管理のことですけれども、火をつけたときにみんな逃げ方は良く分かっています。最後のところで危なかったのですけれども、ウルポン監督はもっと近寄って撮りたがっていましたが、落ちてきたら怖いと言っていました。そして地方でも、ロケットに火をつけたり形は違いますがロケットに火をつけたり、何か火をつけて雨乞いをする風習化がいっぱいあるのですが、タイ人は色んなものを空に飛ばしてお願いするという行事が多いです。補足説明ですけれども、ロケットを飛ばすことは競技でもあり、誰が一番高くまで飛ばせるかといったイベントになります。
 
Q:この映画を撮影するのはとても大変だったと思いますが、この中の色々な出来事を収めるのにどれぐらいの期間がかかったでしょうか?先ほどオブザーバー、観察者として映画のストーリーを転換していく、というのがありましたが、なかなか自分の意図通りに話が進んでいかなかったこともあったと思います。そういう苦労された点も教えていただきたいです。
 
トーウィラさん:まず、ウルポン監督の撮影スタイルですけれども、どこでお祭りがあるのかは事前に知っているので、その場所にリサーチに行きました。その事前リサーチしたときに、ある程度地域の方と出会っているのです。ロケット祭りもかなりたくさんの場所に行って、たくさん撮影をしましたが、その中で一番良いと思う映像、フッテージを選んでいました。それから最後のロケット祭りでは、自分の実家の先代で行われているロケット祭りなので、自分も知っているお祭りだから、どこまで近づけるかというさじ加減は良く分かっています。あと、ソムタムの歌を歌うところ、他にも有名な歌がありますが、権利が大変なので別の歌を使っていて、村人に音楽をかけて踊ってもらう、ミュージックビデオのようなスタイルをとっています。彼のスタイルとしては見てきたものを記録していますが、撮ったものはすべて一回撮って、また同じ場所に戻って撮って、など撮り直したところもあります。今回この作品のリサーチから撮影まで二年かかっています。リサーチの時からある程度映像を撮っていますし、本撮影でももちろん撮っています。やはりすごく撮影に時間をかけているのです。やはりステディカム、手持ちのキャメラで撮ることがほとんどでしたし、良い映像を撮ろうと思ってとてもスローで撮っています。

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