10/27(月)、ワールド・フォーカス『シーズ・ファニー・ザット・ウェイ』の上映後、ピーター・ボグダノヴィッチ監督のQ&Aが行われました。
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司会 矢田部PD:本当に歴史的な瞬間だと思います。皆様大きな大きな拍手でお迎えください。ピーター・ボグダノヴィッチ監督です。
ピーター・ボグダノヴィッチ監督(以下、監督):はじめまして。まだちょっと眠いんですけど。昨夜ロサンゼルスから着いたばかりで、すごく長いフライトだったので。でもここにおります。皆さん来ていただいてありがとうございます。
司会 矢田部PD:ピーター・ボグダノヴィッチ監督、この場でお迎えできて、これほど光栄なことはありません。本当にありがとうございます。
監督:親切なお言葉をありがとうございます。ここに来られて嬉しいです。黒澤明と溝口健二の国に来られて嬉しいです。
Q:今回も脚本を書かれているとのことですが、すごく芸達者な方々をキャスティングされていて、日本では当て書きと言うのですけど、役者さんを想定して今回この脚本を書かれストーリーを組み立てられたのか、その辺りを教えてください。
監督:当て書きはしていないです。これは2000年、随分前に書き始めたもので、当時前妻のルイーズ・ストラットンと書きました。当時は友人のジョン・リッターというすごくいい俳優を想定していました。すごく面白い、ファニーな俳優ですが、彼が突然亡くなってしまったので、中断しておりました。その後オーエン・ウィルソンという俳優を知りまして、すごくいい役者さんですし、スター性がある人だと思ったので、彼にやってもらいたいということでお願いしてみたところ、幸運にもやってくださるということだったので、お願いしました。その後はいろんな役を決めていきました。
Q:監督は広い世代の役者さんたちとお仕事なさっていらっしゃいますが、今回の映画にも色々な世代の方が出演しています。若い方からかなりベテランの俳優さんまでいらっしゃいますが、こういった世代の人たちが混ざった状態でお仕事なさるのはいかがでしたか?
監督:私は役者さんたちと仕事をするのが大好きで、映画を作る上で一番楽しいのは役者さんたちの仕事だと思っています。特に感心したのはオーエン・ウィルソンです。彼は素晴らしい役者で、コミカルなこともできるし同時にスター性も備えている人だと思います。イジー役をやったイモージェン・プーツも本当に素晴らしいと思います。強いキャラクターを持った女優さんだと思います。また、セス役をやったリス・エヴァンスや他の人も皆素晴らしくて、とても楽しく仕事をしました。全く問題はありませんでした。私が、私が、というディーバのような人は誰もいなかったです。
Q:本当はこういう質問をしてはいけないかもしれませんが、前作から結構時間が経っていたと思いますが、この期間監督は何をされていたのでしょうか。それと、今日新しい映画を見せていただいたばかりですけど、次の新作を見るにはまたそのくらい時間がかかってしまうのか、ということを伺えればと思います。
監督:私、すごく忙しかったのです。前回、劇場用長編としては『ブロンドと柩の謎』というものを作りましたが、それ以外にもすごく忙しかったのです。「Who the Hell’s in It」というタイトルのインタビュー集の本を出し、その後2つテレビをやりました。1つはミステリーで3時間くらいのもの、もう1つは2時間ものでピート・ローズというアメリカの野球選手についてのテレビ物をやりました。『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』というテレビシリーズで俳優として7年出演しておりました。その一部を今回の映画でも出しました。それからドキュメンタリーも2本撮り、1本は4時間のトム・ペティとハートブレイカーズについてのドキュメンタリー(※「Tom Petty and the Heartbreakers: Runnin’ Down a Dream」)、もうひとつは「ジョン・フォード byジョン・フォード」というものです。実は1970年代初頭に作りましたが気に入らなかったので、今回やり直してリカットということで、新しいバージョンを作りました。ということで、寝ていたわけではないんです。自分でも忙しかったと思います。次回作ということですが、コメディでファンタジーの要素も入った『Wait for me』、「私を待ってください」というタイトルの作品で、幽霊や映画人が出てくるといった内容になっています。来年の3月くらいに作れればいいなと思っていますので、今回ほどお待ちいただかなくて結構だと思います。
先ほど話したインタビュー集ですが、「私のハリウッド交友録 ~映画スター25人の肖像」という邦題で日本でも翻訳出版されております。まだ売っていますのでぜひ買ってください。私が仕事をしたいろんな人、ジョン・ウェインからケーリー・グラント、オードリー・ヘプバーン、マリリン・モンロー、いろんな人についてのインタビューが載っていますので、ぜひ読んでください。日本語というのは(英語を)訳すと長くなるらしくて、元々の英語本もすごく厚かったですが、さらに厚い本が日本語で出ましたので、ぜひ買ってください。
Q:この映画の撮影中にあった、面白かったエピソードをお聞かせください。
監督:すごく忙しかった、29日間でニューヨークで撮ったので時間がありませんでしたが、作ること自体は楽しかったです。特に面白かったエピソードは思い浮かばない。大変だったのは、リス・エヴァンスがやったセス・ギルバートの役のキャスティングが難しかったことです。撮影する前の日まで見つからなかったんです。でもリスが見つかって本当に良かったと思いますし、彼が見つかったのは偶然というか事故のようなものだったんです。映画を作るのに忙しくて面白いエピソードが見つからないので、ごめんなさい。
Q:最後に有名な超大物監督が出てきますが、その監督を起用した理由と、その監督が3本立てを見に行くと言っていましたがその3本は何なのか教えていただけますか。
監督:あの台詞は彼の映画の中の台詞だったと思います。私も知らない、「映画を見に行こう」という台詞があって、それを使いました。彼は私の友人でかなり親しくて、彼の家に泊まらせてもらったことも何度もあります。彼は私の映画の中でもオードリー・ヘプバーンが主演した『ニューヨークの恋人たち』が大好きだということで、私も自分の映画の中で一番お気に入りなんですね。二人でお気に入りが一致したということで仲良くなりました。その最後は有名な人が出てきて終わるということだったので、今回もそれがいいんじゃないかという話になり、それなら有名な映画監督かスターに出てもらおうという話になり、監督だったら皆が一番顔を分かっていて有名な監督といえば彼だよね、ということで、友達なので彼に電話をして話をしたら「いいよ」と言ってくれました。その電話の2日後に撮影がありました。私たちが有名な監督を出したいと思った時にいろんな人の顔を思い浮かべましたが、彼が一番おかしいというか面白いだろうということで彼に決めました。
Q:2つ質問があり、1つはキャスティングですが、オーエン・ウィルソンとジェニファー・アニストンをこの役に選んだ決め手は何だったのでしょうか。もう1つは、オードリー・ヘプバーンやマリリン・モンロー、黄金時代の彼女たちと仕事するのはいかがでしたか。
監督:オーエン・ウィルソンに10年前に会ったときに、昔ながらの映画スターだと思いましたし、同時にコメディアンでもあり、何でもできる人だなと思いまして、友達になりました。友達になってこの役をやってくれと説得しましたが、かなり時間がかかりました。でも最終的にOKしてくれたという経緯です。ジェニファーに関しては、最初は主演の奥さんの役をオファーしましたが「嫌だ、私はカウンセラー役をやりたい」という風に言ってきました。多分、脚本の上でカウンセラーの方がファニーだったから、もっとおかしい役だったからだと思います。『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』を見てオーウェンとジェニファーの二人が好きだったので、奥さん役にいいなと思いましたが、本人はカウンセラー役がやりたかったということで、そちらをお願いしました。オードリー・ヘプバーンは、本当に聖人のような人です。本当に特別な人だと思います。中も外も美しい人で、一緒に仕事をするのがとても楽しい、全くわがままなところのない素晴らしい人です。マリリン・モンローとは一緒に仕事をしたことがないんですけど、アクティング・クラスで一日だけ一緒になったことがあります。彼女は黒いセーターを着てこの辺にちょっとフケがあったんですけど、リー・ストラスバーグを神様のように見つめていました。で、私はじろじろ見ちゃいけないと思って、さっきやってしまいましたけども、ちょろちょろと見ていました。それだけだったのですが、あの16歳の私のその時の経験だけです。で、残念ながら一緒に仕事をすることはできなかったのですけれども、先ほどご紹介した交遊録の中に最後の章に彼女について書いています。彼女について自分が思っていることと、そのアクティング・クラスについてのことを書いています。
司会 矢田部PD:ありがとうございます。貴重な時間というのは早く過ぎてしまうものですね。最後に監督から一言だけご挨拶を頂戴できたら嬉しいです。
監督:特に最近、ニュースを見ていますともう笑えない話ばかりなのでこういう時代にこそコメディを作って笑うというのが私の仕事だと思っています。