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2014.11.11
[イベントレポート]
「最初から最後まで決してマリエは笑わないということを守りながら撮影を進めました。」コンペティション『1001グラム』-10/27(月):Q&A

 
1001gram

©2014 TIFF

10/27(月)、コンペティション『1001グラム』の上映後、ベント・ハーメル監督と女優のアーネ・ダール・トルプさんのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 

ベント・ハーメル監督(以下、監督):皆さん、今日は来場してくださってありがとうございます。この映画を上映出来ることを誇りに思っています。実は、私の作品これまで全て、4作ほど日本で公開されております。日本の配給会社ロングライドが配給して下さっているわけなのですが、この新作もこのような形でスタートを切り、来年には公開される予定です。大変嬉しく思っております。ありがとうございます。
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©2014 TIFF

 
アーネ・ダール・トルプさん(以下、トルプさん):実は私来日したのが今日なんです。数時間前に日本に着いたばかりですが、大変わくわくしています。新しいアドベンチャーが始まるような気持ちでいっぱいです。東京、そして日本というのは、ノルウェーでは大変評判がいいので、今回私が日本に行くということを言いましたら、みんなうらやましがっておりました。本当にありがとうございます。
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©2014 TIFF

 
Q:一応確認をしておきたいのですが、この測量研究所の世界というのは、実在するものなんですよね?もしそうだとすれば、監督はどのようにしてその存在を知られたのでしょうか。
 
監督:実は実際にこういう施設がありまして、原器を持って集まるわけですが、そもそもこのことについて知ったきっかけは、ラジオ番組でした。ノルウェーで、実際にキロとメートルを管理している施設がございまして、その話をしておりました。いかに、1キロという単位を正確に量ることが難しいかというお話をしていました。大変その番組には興味を持ちました。しかし、それから結構な長い時間が経ちまして。その後、たまたまメキシコに旅行に行った際に、オスロにあるその施設の建築家という女性に出会いまして、それで、その話をした所、「じゃあ、今度私の建てた建物にいらっしゃい。案内しますよ。」と言ってくださったので、実際にそこを見学することができたんですね。そしたら、ますます興味を抱くようになりまして、本当に素晴らしいスタートだったと思います。そして、そこの施設で働く女性を、そして彼女の人生を描く話を考えたわけです。この話は決して科学の話ではないです。彼女の人生模様を作品として撮りたいと思いました。
 
Q:日本でも、かつて人がキログラム原器を運んだということが語り継がれているのですが、個人がキログラム原器を持ち運んでいたシーンに驚いています。質問なのですが、映画の製作に当たって、分野のことを専門家が監修されたとか、参考にされたなどがあるのでしょうか。
 
監督:監修者はまったくつきませんでした。先ほども言ったように、実際の施設を見学させていただいたわけなんですけれども、そこで撮影の許可を得たんです。それは、ノルウェーの関係者が、とても私に信頼を置いてくださったことと、私自身が何度も誠意を持ってお願いしたことからだと思います。みんなが非常に気を使ってこの原器を取り出す過程にユーモアも感じるんですけれども、私は非常に真面目に捉えたつもりですし、リサーチをいたしました。パリのBIPMという施設も撮影許可が下りまして、撮影させていただきました。もし撮影許可が下りなかったら、私たちはああいったセットを組む時間はなかったですし、これだけ信憑性があるシーンが撮れなかったと思いますので、本当にありがたく思っております。
そして、実際の施設で撮影する他にも、私自身大変入念なリサーチをしました。それで色々勉強したわけなんですけれども、最終的にこの映画を観たBIPMの関係者からお墨付きをいただきました。唯一1点だけ、アボガドロ国際プロジェクトという話が出ますけれども、もう一つワットバランス・プロジェクトというのがあって、それをこの映画の中で言わなかったら「それもちゃんと言いなさい」と言われて、それだけです。後は全て許可を得ることができました。
ちょっと私からも質問をしてもよいですか。この映画の中で、原器を無くした国さえあるという台詞があるんです。それを聞いて、台詞に入れたのですが、BIPMのトップの方に確認したくて、ランチを食べに歩いてく途中で「それって本当ですか」と聞いたら、シーンと黙ってしまって答えてくれないんです。しばらく経って「Yes」って答えてくれたんですけれども、それしか言わなかったんです。どこの国か聞きたくて聞きたくて仕方なかったんですけれども、聞けなくて、食後に思い切って「それってどこの国なんですか」って聞いたら、またシーンとして。しばらく経って、ラテンアメリカの国の一つですとしか答えてもらえなかったんです。それが、すごく謎で。ご存知ですか。
 
Q:私も知らないです。通常ではありえないことですので。
 
監督:そうですよね。もう大惨劇ですよね。さらにリサーチを続けましょう。ありがとうございました。
 
Q:アーネさんにお伺いします。解釈を巡っては監督と議論されますか。それとも、アーネさんの自由にさせてもらえるのか。監督との関係をお伺いできますか。
 
トルプさん:マリエというキャラクターにとって最も重要なものは、思い切ってこれからの人生に踏み出していく、これからの人生を生きていこうという変化でした。そうした変化を強調するために、映画の中では決して笑顔を浮かべないということを一貫して意識するようにしました。監督とも、どれだけマリエが笑った表情をするかということを相談したんですが、笑顔を浮かべるということは自分の中の心情を開放してしまうということを意味しているので、映画の中盤で一度でもマリエが笑顔を見せてしまえば、その後私はどのようにマリエの感情を表現していけばよいのかわからなくなってしまう、なので最初から最後まで決してマリエは笑わないということを守りながら撮影を進めました。
 
Q:この映画では様々な都市が出てきますが、その中にドイツがあります。なぜドイツなのでしょうか。
 
監督:少なくともパリで撮影はしたのですが、実は屋内のシーンなども含めてドイツで撮影しているシーンが多くあります。例えばフランス人のアパートであったり、マリエの農園のヴィラであったり、病院のシーンやシャルル・ド・ゴール空港の設定で登場している場所も実はドイツです。もちろん我々も設定にマッチしないのであればドイツで撮影をすることはなかったのですが、作品に非常にマッチしたロケーションが見つかったため、ドイツで撮影を行いました。また私が30年以上一緒に仕事をしているパンドラという共同制作会社がドイツの企業であり、本作にはドイツの資本が入っています。そうした影響もドイツで撮影をすることになったひとつの背景であり、ドイツの資本がなければ本作は完成しなかったというのが事実です。
 
Q:本作も含めてハーメル監督は人生の切なさに寄り添って暖かさを与えてくれる作品が多いと思っています。その中でも特に、生真面目な人の中のおかしさといったものが本作や監督の以前の作品『キッチン・ストーリー』でも描かれていて、そうした部分が日本でも人気を博している理由だと思っていますが、そうした生真面目さというのはノルウェーの国民に共通した性格なのでしょうか。あるいは監督自身の性格によるものなのでしょうか。
 
監督:私はノルウェー人ですし、ノルウェーで生まれ育っているのでノルウェー気質というものをもっているのは当然なのですが、一方で日本人のDNAに似たような部分を持ち合わせていると思っています。何度も来日するたびにそうした部分があるのを感じています。一方で私はそもそも、映画の中でシンプルなストーリーを描きたいと考えていて、突き詰めていえばシチュエーションや状況といったものをシンプルに描きたいという気持ちがあります。そしてそれを描くためには「孤独」というものに焦点を当てるのが最も簡単な方法だと考えていて、大勢の登場人物が出てくる作品よりは、様々な要素を排除していくプロセスを映画制作の中で大事にしています。表面上はあまり面白そうな人生でなかったとしても、注意して見ていくとすごく共感のできることがあったり、発見できることは観る方々にとってとても素敵なことだと考えていて、そうした設定の作品を作れるよう心がけています。また「孤独」というものもノルウェー人が共通してもっているメンタリティのひとつだと考えていて、それは芸術作品などを通しても見て取ることができます。あとはよくジョークで言われるのが、ノルウェー人は「今日は自然の中でたった一人でいて本当に楽しかった」とよく言い、「今日は多くのみんなと一緒にいて本当に楽しかった」とは言わないんですね。そうした部分からもノルウェー人が孤独を好んでいるんだろうということがわかると思います。

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