10/27(月)、アジアの未来『メイド・イン・チャイナ』の上映後、キム・ドンフ監督のQ&Aが行われました。
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キム・ドンフ監督(以下、監督):こんばんは。今この会場にいらっしゃる観客の皆様は、韓国映画が好きな方、そしてまたキム・ギドク監督の作品が好きな方ではないかと思います。わざわざ時間を作って見に来てくださいまして、本当にありがとうございます
司会:日本でうなぎは食べられましたか?
監督:私はこの映画が終わってから、ウナギは食べていません。あまりにもたくさん殺してしまったので(笑)。
日本ではまだ食べたことがないんですけども、お弁当によく一緒にのっているというのは聞いた事があります。お刺身などと一緒に出てくるというのを聞いた事があります。韓国ですと、炭火焼きにして食べたりとか、汁物、鍋物にして食べたりする方法があります。
司会:キム監督は『レッド・ファミリー』の時にプロデューサーとして来日されまして、今回は監督ということですけども。元々はイギリスで勉強してこられたということなんですよね。
監督:そうです。イギリスで映画の勉強をしていました。ですが、元々日本でアニメの勉強をしたいと思っていました。その前にイギリスにたまたま行って、ロンドンの街がとても気に入ったので、結局長く滞在することになり、そこで勉強も済ませることになりました。
司会:韓国の若い監督、留学組結構いらっしゃいますけども、イギリスというのはどうですか?結構いらっしゃるんでしょうか?
監督:韓国はハリウッド映画が好きな人が多いということもありまして、留学となると、アメリカに行かれる方が多いんです。なのでイギリスはあまり多くないです。たまにフランスに行かれるかたもいらっしゃいます。芸術映画、アート映画が好きな方は、ヨーロッパで勉強されている方もいらっしゃいます。
Q:作品で扱われている原産地偽装について、実は日本でもご存知の通り、同じようなことが、中国産ものを日本産と偽って流通させるようなことが起こっていますが、これは韓国でも実際に起こったことをモデルにされているのでしょうか。それとも日本で起きたことをモデルにしているのでしょうか。
監督:このシナリオはキム・ギドク監督が5年前に書かれたものなんです。この映画に出てくるような違法なウナギが流通しているという実際の事件が韓国であったので、それを土台にキム・ギドク監督が書かれました。現在も韓国で、違法なウナギが流通しているというニュースはよく上がっています。なので、日本での事例を参考にしたというよりは、韓国での出来事をモデルにしたと言えます。今回のこの『メイド・イン・チャイナ』なんですが、実はキム・ギドク監督が自ら演出しようと思っていたのですが、今回私が演出することになりました。普通は助監督に任せるときは、おっしゃるように商業性の高い作品を任せることが多いのです。でも今回の作品は、商業的な作品というよりも非常にメッセージ性が強い作品だったと思います。
Q:今回の問題も、韓国で起きた食品問題から発想したということでしたが、個人的に思ったのは、中国という存在がすごく前にきている、というか主題のひとつだったと思います。製作陣ももちろん韓国人です。しかし中国人というキャラクターを前に出してきたのは、さっきのお話にあったメッセージという意味ではどういった意味があるのでしょうか。
監督:皆さん安いウナギがあったらまず疑った方がいいと思います。この映画のタイトルは『メイド・イン・チャイナ』なんですけども、『メイド・イン・チャイナ』そのものを描いたというよりも「メイド・イン・コリア」を語りたくてこの映画を撮ったというのが正しい言い方になるかと思います。中国の方をキャラクターとしてメインにしたのは、コミュニケーションの問題、言葉が通じないという問題を描くためでした。その点では、中国に限らず、韓国と日本も同じことが言えると思います。日本と韓国も歴史的な問題が背景にありますので、なかなかコミュニケーションがとれない状況にあるような気がするんです。韓国は韓国で、北朝鮮という問題がありますので、あまり中国と交流していないという、そういったこともメタファーになっています。
Q:中国語の台詞を練習させるのにかなり苦労したのではないかと思います。後半になると中国語がかなりうまくなっていますが、元々朝鮮族で中国語ができたのか、どうやって主人公を選んだのか知りたいです。
監督:今回映画に出ている俳優さんたち、全員中国語が出来ない方ばっかりでした。なので、全て練習していただいて、演技に臨んでいただきました。おそらく、私の考えでは、中国語が判る方が聞いても正確に聞き取れるものになっていたのではないかと思います。それくらい俳優の皆さんがとても頑張って、練習してくれました。キャスティングしているときに、中国語の演技は心配しませんでした。俳優さんたちはきっと皆うまく演じてくれるだろうと信じていました。ですが、何より心配だったのはウナギの演技でした(笑)。でもそういう意味では、ウナギも演技が上手だったと思います。
Q:主人公の女性が乗っている車が、韓国製のヒュンダイなどではなく、レクサスだったのが気になったので、何か意図があったのか教えていただきたいです。
監督:特別な意図があったわけではなく、映画のなかでこの女性は、違法にたくさんのお金を稼いでいるというバックグランドがあったので、ちょっといい車に乗せてみたいと思いました。
Q:ありがとうございます。もう1点、キャスティングのことで、主役の2人はどのような点が決め手で選ばれたのでしょうか。
監督:今回先にキャスティングが決まったのは女性主人公だったんです。彼女は以前、ドラマで知っていました。ただ、ドラマで見せてくれた彼女の役所は、大体明るい役だったり、はつらつとした役、それから都会的な役が多かったです。でも今回の映画を通して、彼女の新しい演技を引き出してみようと思って彼女にお願いしました。またパク・ギウンさんの方は彼は演技がうまいというのは知られていることなので、彼ならできると信じてお願いしました。
Q:女の人の表情の変化がとても印象に残りました。あの女の人は、どこにいったのかと。
監督:どこに行ったかというよりは、誰に電話をかけたのか、ということがとても重要だと思います。
Q:では、誰に電話をかけたのでしょうか?
監督:それは、皆さん、各自のお考えにお任せしたいと思います。
Q:撮影に使われたウナギは、中国産ですか、韓国産ですか?
監督:中国産と、韓国産が混じっています。
Q:それはどういう使い分けをしたのでしょうか。
監督:そういった使い分けはしませんでしたが、本当にたくさんのウナギを手配しなければなりませんでした。ウナギは1日くらいで死んでしまうので、とにかく私にとっては手に入れられるだけ最大限に手に入れるのが重要でした。そして映画に使われたウナギは、最後全部エキスにしました。
Q:ちなみに、何匹くらい?
監督:300匹、400匹だったと思います。
司会:監督はキム・ギドク監督の助監督もずっとやってらっしゃって、『絶対の愛』(キム・ギドク監督)の助監督もされていますよね。杉野希妃さん(『絶対の愛』に出演。今回監督作『マンガ肉と僕』を出品)とは接点はありましたか?
監督:当時、私が助監督を勤めていて、その作品に希妃さんが出演してくれたんですね。出演者の女性の小さな役ではあったのですが、一つ彼女が演じてくれる役があって、そこでお会いしました。去年はコンペティションに出品された作品を希妃さんがプロデュースされていて、私もやはり、コンペティションに出品された作品のプロデューサーを勤めていました。そして、今年は同じくアジアの未来のセクションで、お互い監督として映画祭に参加したので、私は彼女のことをライバルだと思っています。
司会:去年は杉野さんは『ほとりの朔子』、キムさんは『レッド・ファミリー』でプロデューサーを。今回はお二人とも監督デビューという。面白いですね。
監督:確かに、そういう意味でもライバルだと思います。
司会:では、最後に一言。
監督:今、『レッド・ファミリー』は東京の全域で上映されていて、非常に反応がよいと聞いています。この『メイド・イン・チャイナ』も日本で公開されて、いい反応が得られたらいいなと思います。