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2014.11.11
[イベントレポート]
「最も恐ろしいものは、自然に対する「攻撃」です」アジアの未来『ツバメの喉が渇くとき』-10/28(火):Q&A

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©2014 TIFF
左からムラット・バスマンさんとムハンメット・チャクラル監督

10/28(火)、アジアの未来『ツバメの喉が渇くとき』の上映後、ムハンメット・チャクラル監督とプロデューサーのムラット・バスマンさんのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 

ムハンメット・チャクラル監督(以下、監督):皆さんこんにちは。日本に来られて大変嬉しく思っております。子供の頃から日本については特別な思いがありまして、特に環境及び人間に対する、日本人の皆様方のご配慮は、世界でも非常によく知られているものです。同じ基軸の良心を持つ、皆様方に出会えて大変光栄に思います。この映画の元となるものは、実際にあった話になっておりまして、ところどころ映像の質が悪いところは、ドキュメンタリー映像として実際に撮ったものになります。その素材の元に、ひとつのフィクションを組み立てて作ったので、部分部分そのようになっております。皆さんご存知のように、我々や皆様が心配していることは、自然に対する、破壊行為、攻撃であります。今日最も恐ろしいものは、テロということになっておりますが、実際に最も恐ろしいものは、自然に対するこの「攻撃」です。この攻撃というものは、今後未来におきまして、この世界で生きるものを危険に陥れてしまうものです。私たちの国、トルコにおきましては、様々な河、谷、そして海岸で、この映画に類似する危険が差し迫っています。そのなかで私たちは暮らしているのです。
この映画の舞台になったところは、私が幼少時代を過ごした土地になります。この10年来、私を含めまして、このような抵抗運動が進んでおります。映画の部分部分に、この5、6年間に撮った様々なドキュメンタリー映像がありますけども、それを今回新しい映像と合わせまして、シナリオを書き、この作品をつくりました。従いまして、映画にかかる費用は全て、自己資金から賄ったものです。それも限られたものでした。国家、政府、企業からは一切の援助はなく、自分の資金でプロジェクト化した作品です。制作にかかった期間は2ヶ月間、人員は僅か5人です。そして、撮影の終わり頃になって、資金がつきて継続が困難になってしまいました。そこで、友人のムラットさん(共に登壇しているプロデューサー)の援助を受けて、制作を完了することができました。
この映画での私の目標は、私の故郷で戦っている人々の声を、世界の人々に伝えることです。非常に予算は少なくて、様々な条件は限られていますが、それでもこうして世界の人々に伝え、皆さんとお会いすることができました。このことを分かち合いながら。以上、今のところ私からはこれくらいですが、皆さんからご質問があれば喜んでお受けしたいと思います。
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©2014 TIFF

 
ムラット・バスマンさん(以下、ムラットさん):ムハンメットさん、それから私の妻も来日していますが、こうして皆様とご一緒になれまして、とても嬉しく思っております。今回来日は初めてですが、実は私たちは皆様のことをとてもよく知っております。いろいろな国に行って参りまして、世界各国に日本人の方がいらっしゃいますので、私たちは皆様の事をよく存じ上げております。私もムハンメットさんと同郷でして、彼のいた地域の状況をよく知っております。ムハンメットさんほどではないのですが。
この映画の実際のオーナーは、ムハンメットさんです。私には少しお金がありまして、このお金を水力発電の件について使おうか、それとも映画に提供しようか、ということで、映画に提供させていただきました。この映画を製作することができてとても光栄です。この映画のオーナーは、ムハンメットさんなので、彼が皆様の質問に答えてくれればと思います。
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©2014 TIFF

 
監督:ここでひとつ、申し上げたいのですけども、映画の登場人物である顎ひげのハミットさん以外は、実際に抵抗運動に関わり、尽力された村人の方々です。他にプロの俳優はいません。実際の人々を一同に会して演じてもらうのには様々な苦労がありました。また気候も苦労の種でした。ご覧のように雨の多い土地で、太陽の出ることがあまりないなかで撮影をしました。この5人の編成チームでやったことで色々な苦労もありましたけども、最後に映画を完成させることができました。ちょっと考えてみていただきたいのですけれども、まず皆さんのために朝食を用意します。そして車で皆さんを山の中に連れて行って演じていただいて、仕事が終わると下りてきて、夕食の支度をして、さらに寝具の支度もして皆さんに寝ていただく。撮影期間中、色々と台所仕事もしたわけです。
村人の方々と一緒に仕事をするうえで一番大変なところは、太陽が出てようやく天気がいいとなると、皆さんご自分の畑に行ったり、菜園の仕事をしたりしなければならないで、それをやってもらっている間、しばらく待たなければいけないという事が何度もありました。出演していただいた皆さんと、皆さんのサポートのおかげでこのチームでまとまって、映画を完成させることができました。皆さんに感謝を申し上げたいです。そして、会場の皆さんにも、私からご挨拶を申します。ありがとうございました。
 
Q:村人に出演してもらったとおっしゃっていたのですが、村人は、自分たちの村のことを扱ったから、出演料いらないよ、ということはあったのでしょうか?それから、妨害工作みたいなことはあったのでしょうか。こういう批判的な映画は結構嫌がらせを受けるような先入観があるのですが。
 
監督:ありがとうございます。いろいろな圧迫がありました。映画の制作は商業映画の制作ではないかという心配をされていました。これは奉仕活動の一環であり、私は元々ドキュメンタリーの映像を撮っているものですから、それをドラマ化したいという思いに基づくものでした。悲しみや辛さを表現して、世界に対して紹介するという目的があったのです。村人の方々は、演じたからといって出演料をとるということはありませんでした。それでも、我々の方では、出来る範囲に限るということで一定のサポートはさせていただきました。
確かに、自然がとても美しいです。もっと美しくすることもできたでしょう。しかし、予算の問題があって、撮影監督となるキャメラマンに撮影をお願いすることができなかったので、このキャメラマンもアマチュアの方です。
 
Q:監督に伺いたいのですが、シナリオの構成についてです。90分ほど圧倒的な美しさの風景と、自然の音が入って、残りの20分ほどでやっと抵抗運動の話が出てきました。その全体のバランスとして、この構成はショックがあったのですが、シナリオを作る最初から、その狙いはあったのでしょうか。
 
監督:ありがとうございました。こう申し上げましょう。この地域で最初にキャメラを撮ったときは、ドキュメンタリー映画にしようと思っていたのです。ですが、後になって考え直しまして、ドキュメンタリーにすると、観客の数がそれほど確保できないのではないかと思いまして、ドラマに転向しました。というわけで、私の手元には十分なドキュメンタリー映像の素材がありましたので、ゆっくり座って熟考しつつシナリオを書き始めたということになります。そして、村人の方々に演じていただくのにあたり、台詞を覚えて対話するということが大変難しかったので、皆さんのありのままのやり方で、会話してもらったというのがほとんどです。モノローグ等々、台詞に忠実にやったというわけではなかったのです。こういうことがあったので、本来の計画よりも7シーン少なくなっています。その代わり、皆さんのありのままの会話を入れたということになります。
 
Q:ありがとうございます。日本は環境に配慮する国だと先ほどおっしゃいましたけど、我々もダムを作り、発電所を作り、空港を作り、ということできたわけで、この問題は非常に普遍的なテーマだという風に思います。
 
監督:そもそも受けた傷、悲しみというのは国を問わず、誰しもが同じです。環境問題について思った懸念というものですね。現在トルコでは、ありとあらゆる谷川のところに水力発電所が作られています。東黒海のところ全長55kmしかない河で、37個もの水力発電所が作られているというのが現状です。そしてこの抵抗運動があったことが功を奏して、計画中の37個のダムのうち、現在できているのが14個にとどまっています。ですから我々も抵抗運動を続けていきます。
 
Q:出演者のうち、ハールンという顎ひげの長い老人だけ俳優に頼んだということでしたが、それはどういう理由からなのでしょうか。
 
監督:ハールン役のハミットさんですけれど、彼は昨年イスタンブールで起きたゲジ公園のデモ事件でも抗議活動で活躍した人で、この映画で扱っている東黒海地方出身でもあります。アマチュアの人たちに演じてもらうのは大変難しくて、みんなの背骨となってもらう人が一人必要でした。それで彼を採用しました。そのためにも非常に神秘的な人が必要でした。ハールンさんですけれど、そこの出身でありながら25年間も故郷に戻っていないという方でしたので、この実際のことも話の中に入れてストーリー化したわけです。彼がみんなの師匠という位置づけになっています。注目してくださったかもしれませんが、ここで扱ったテーマの一つである水力発電の問題だけでなく、そこの固有の文化を守るということがあります。映画の一部で話されていた言語である古代ギリシャ語は私の母語でもあります。それを守るということです。なぜならばそこに水力発電ができれば、地元の人々の間で大きな移住が起きて外地に散らばってしまい、言語や伝統が人々とともになくなってしまいます。このことが分かっているからです。

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