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2014.11.11
[イベントレポート]
「モノにその人の存在は残っているのか」日本映画スプラッシュ『知らない町』-10/28(火):Q&A

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©2014 TIFF
左から富岡大地さん、柳沢茂樹さん、細江祐子さん、大内伸悟監督

10/28(火)、日本映画スプラッシュ『知らない町』の上映後、大内伸悟監督、女優の細江祐子さん、俳優の柳沢茂樹さんと富岡大地さんのQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
Q:皆さま本日は東京国際映画祭にようこそいらっしゃいました。Q&Aを始める前に皆さまに一言ずつご挨拶を頂戴できますでしょうか。
 
大内伸悟監督(以下、監督):この作品の監督を務めました大内伸悟と申します。皆さま今日はお忙しい中、平日のお昼の時間にお越しいただきありがとうございました。この作品を作ったきっかけは、私が3歳頃に祖母の家で見た幽霊というのがあって、それがどうしてもひっかかっていました。今はもうそんな幽霊のことは信じてはいないつもりですが、ただ何故恐怖感のない時期に、あそこまでステレオタイプな幽霊を見たのかな、本当にその幽霊はいないのかなという謎がずっと気になっていたのが作るきっかけになっています。
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©2014 TIFF

 
細江祐子さん(以下、細江さん):中沢亮子役を演じました細江祐子です。本日は最後までご覧いただきありがとうございます。少し分かりにくい作品かとは思いますが、観る時、時間によって色々な捉え方が出来る作品だと思いますので、楽しんでいただけましたら幸いです。本日は有難うございます。
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©2014 TIFF

 
柳沢茂樹さん(以下、柳沢さん):板橋優二役の柳沢茂樹です。今日は本当に有難うございました。
 
富岡大地さん(以下、富岡さん):海老原肇役の富岡大地です。今日はどうも有難うございました。
 
Q:とても新鮮で哲学的な、存在とは何なんだろうかと踏み込んでいこうとする、今のインディペンデントの作品では見られない大胆なテーマの世界を描こうとしているところに感動しました。ラストのリリシズムのような美しい展開も非常に胸に沁み、観れば観るほど面白くなっていく作品だと思います。質問なのですが、色々と時空を超える、パラレルワールドなのか解釈は様々かと思いますが、ひとつ象徴的な装置がソファーなのですが、このソファーの意味、どのようなモノとして扱われたのかお伺いします。
 
監督:あのソファー自体は、私も実際一番はじめに出てくるあの部屋で使用していたものです。そしてあのソファーを私より前に使っていたのは、今日も来場している友達から譲り受けたものです。その友人は私の住んでいたマンションに捨てられていた、粗大ゴミの中から拾ってきたという経緯がありました。まさにこの話とリンクするところがあるのですが、最初に誰が持っていたかとかが、彼女の前に誰が持っていたのかが分からない、不思議だなというところがありました。そのソファーは今また別の友人が使用していますが(笑)意味についてですが、このようなエピソードがあるように、モノはモノですけど、それ自体単純に、ここにあるソファーはただのソファーなのか、それとも誰かが使っていたことがそのモノに対して何か意味があるのかというか。簡単にいえば、モノにその人の存在は残っているのかということだったりします。そのソファーに限らず部屋などにも言えることで、この作品のテーマに通じるところがあるのかなと思います。
 
Q:役者の皆さんにお伺いします。この作品は長い年月を経て撮影されていたとお伺いしましたが、撮影の間、映画の全体像についてどのくらい皆さんがご理解していたのでしょうか。
 
富岡さん:撮影期間が3年で編集期間が1年でした。また最初の3年の中に1年の間があって、それで撮影が全部完結しました。最初の1年目、初めて撮影に立ち会った時にまだ台本は完成していませんでした。その時点でもどうなるのか分からず、改めて1年後に撮影を再開した時に、最後の15分のシーンが脚本に書かれていました。その時点で私は、素直にこれはどういうことなのかという質問をしました。監督からは言葉で伝えることは難しいものだということだけを理解し、楽しんでやらなければならないことをただ演じました。
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©2014 TIFF

 
Q:優二を演じた柳沢さんは、ちょうど二つの世界の境界線にいるような重要な役なのですが、そのような役を数年にわたって、どのようなイメージを持ちながらやられていましたか。
 
柳沢さん:意外と難しい感じではなく、ベースは優二なので、そこから逆に後藤と入り混じったような感じを、あまり表現しすぎてもそれは監督の目指すところとは違うのかなという話もありました。意外とその部分は混乱しませんでした。
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©2014 TIFF

 
Q:細江さんはいかがでしたか。
 
細江さん:私も撮影の途中まで、他の方のシーンの台本は読んでいなかったり、ラストの台本も撮影の時になっていただいたので、先の展開が読めないままお芝居をしていました。ただ監督とは、やろうとしていることがとても抽象的だったので何度かお会いして、なるべく監督の世界観に一緒に入れるように色々お話をさせて頂きました。監督から保坂和志さんの小説を薦められ何冊か読み、人の感情とか、私は彼が亡くなって悲しいとかよりは、人がいる空間、部屋、時間というものを監督は大切にするのだなと感じて、なるべくそういうモノに自分も目を向けながら、お芝居するようにしました。なかなか難しかったです。
 
Q:空間が大事となった時に人間である役者は、どこにいればいいのだろうかというところ葛藤しますよね。
 
細江さん:そうですね、自分である境界線というか、日常は私個人として活動していて、この作品は私である私とかいうよりも、その境界線が色んなところで超えていて、自分もやりながらそこは難しいながらも面白かったです。とても哲学的で、考えながら演じるのが楽しかったです。
 
Q:監督としてはもしかしてそんなに確固とした完成形のイメージが最初からなかったのかもしれません。作りながら構築していった部分もあるかと思いますが、役者の皆さんとはどのようなコミュニケーションを取りながら、作品全体のイメージを伝えようとなさったのでしょうか。
 
監督:出演者によって違いますが、細江さんの場合は事前に何度かお会いし、こういうことを考えていますというのをお話しし、また1,2回ほどどのような感じでお芝居をされるのかというのが見てみたくて、演じていただいたこともあります。基本的には、役者の皆さん出来る方と信じているので、現場で実際に演じて頂きました。
 
Q:最後の15分間というのはいつの段階で撮影をしたのでしょうか。
 
監督:最後の15分というのは最後の最後に撮影したものです。というのも、3年目にどうしても撮り切れなくて、もう1日だけ欲しいと頼んで1か月後に撮ったシーンなのです。その間、なぜそうなったかと言いますと、実際3年目のそのシーンを撮影する時、台本これで大丈夫なのかなということになり、またこれを演出出来ないなということになりました。今でもこの演出が正しかったのかは分かりませんが、そういった経緯もあり最後に撮影しました。
 
Q:その最後の15分はいつ思いついたのでしょうか。
 
監督:本当に最後の最後ですね。
 
Q:最後の15分間のところに石橋英子さんの音楽が使用されていました。なぜこの音楽を使用したのでしょうか。
 
監督:石橋英子さんの音楽を使用しましたのは、元々私が好きだということもあり、台本の段階でこの曲を使いたいなと思っていました。その音楽を想像しながら最後のシーンを撮っていました。
 
Q:この作品を撮影するのに3年という長い期間を費やしていると伺いましたが、それに何か意図はあるのでしょうか。それとも何か事情があったのでしょうか。
 
監督:アクシデントというのか、本来ならば2010年のはじめに撮影した時に、3ヶ月から4ヶ月おきに撮影をしたいなという希望はあったのですが、自主映画で撮影しているのもあり、お金があまりないということ、撮影した後に台本をどんどん変えていかないとこれは面白くならないな、ということがありました。その感じでやっているうちに、1年おきの撮影になってしまいました。
 
Q:彼のことを「後藤くん」と苗字で呼んでいたこと、名前で呼んでいないことに何か意図はありますか。
 
監督:普段わたしも「大内くん」と呼ばれることが多いので、日々の生活の流れが作品に反映されているのかもしれません。意図はありません。
 
Q:かなり難しい映画だと思いました。途中から優二くんと後藤くんが入れ替わるというか、『マルホランド・ドライブ』(2001)のような感覚を思い出しました。
 
監督:初めて言われた解釈です。なるほどと思うところもあって、このように色々な人に見ていただけるということは、そういうことに尽きるのかなと思います。質問にあった当初の意図は前回のQ&Aでも話はしたのですが、正直なところ、天から降ってきたイメージなのですが、無理やり、意図をこじつけることは出来なくないのですが、前回のQ&Aでそれを話してしまうと面白くないよね、ということになったので。特に意図はありません。
ここまで言ってしまったのでお話したほうがいいですよね。この話自体は、人がいた場所や部屋に何か残っているのか、ということを繰り返し話しています。部屋に限定された話は何度もしていて、でも詰め切れてはいない部分はあるのですが、このことは街(100年前、明治時代、江戸時代にいたヒトの詳細は分からないけれど、確かにいたということ)ということにもそういったことはあるんじゃないかなと考えていて。地図に○をつけていくことで、痕跡を追っているということを考えていました。
 
Q:役者さんに質問です。男性と女性も髪型も服装も似ていて、正直なところ画面に映ってすぐ人物を判明することが難しかったです。そういった髪型や服装を似せたのは意図があるのでしょうか。
 
監督:この質問についても意図せずと答えることもできるのですが。確かにそうなんです。編集している時にこれはヤバいな、分からないかもしれない。特に外国の方が観た時に分からないなという嫌な予感がしていたのですが、そういったことで何か意図があったわけではありませんでした。
 
Q:監督、この作品、今後の展開を含めて、最後のお言葉頂戴できますでしょうか。
 
監督:東京国際映画祭の上映はこれで終了になりますが11/29に多摩市で行われるTAMA CINEMA FORUMという映画祭のTAMA NEWWAVEというコンペティションでも上映されることになりました。今日ご覧いただいて「良かったよ」という方はお知り合いの方に宣伝をいただけましたら嬉しいです。
今後の新しい作品については今計画中です。人物像を考えている段階で、荒川を舞台にする予定で考えています。荒川でゴミを掃除している人をテーマにしたいです。

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