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2014.11.12
[イベントレポート]
「夢と現実がごっちゃになったような。ああいうフェリーニが大好きです」日本映画スプラッシュ『チョコリエッタ』-10/29(水):Q&A

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©2014 TIFF

10/29(水)、日本映画スプラッシュ『チョコリエッタ』の上映後、風間志織監督のQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
風間志織監督(以下、監督):どうも、こんばんは。風間と申します。本日は観ていただけてとてもうれしいです。どうもありがとうございました。
 
司会:風間志織監督といえば、日本の自主制作映画界において、今もって旗手でいらっしゃいます。風間志織監督の久しぶりの長編劇映画でしたので、東京国際映画祭で紹介したいと思っておりました。この日を迎えられて本当に嬉しいです。
 
監督:ありがとうございます。
 
司会:いつぐらいからこの作品を着想をされました?
 
監督:着想は7年、8年くらい前です。
 
司会:どんなきっかけだったのでしょうか?
 
監督:まずこの原作自体は90年代くらいの作品で、ずっとあの原作者の大島さんとお友達で前から読んでいました。それでアルゴピクチャーズの方が「これは映画化したいんだ」という話をしていまして、「え、じゃあ私撮る、私撮る。」というのが本当に最初のきっかけです。
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©2014 TIFF

 
司会:具体的に本格化したのは?
 
監督:それは本、シナリオを書いてからです。
 
司会:監督といえばデビュー作であった『冬の河童』で田辺誠一さんを世の中へ送り出した新人発掘の名手でいらっしゃいますよね。今回のお二人、どういうきっかけでキャスティングされたのでしょうか?
 
監督:森川さんは髪の毛を切ってくれる女優さんということでオーディションをして出会いました。菅田くんの方は、事務所経由で菅田くんがこの時期空いてます、という話が来たので頼みました。
 
Q:撮影は去年?
 
監督:去年(2013年)の8月20日ぐらいからです。9月の十何日まで。
 
Q:映画に大変終末感が漂っていますけれども、最後に希望のようなものを見出したのですが、監督はこの映画で観た人が希望を持つような内容にしようとお考えになりましたか。
 
監督:希望を持てないと多分生きていけないから希望を持ってほしいという願いが込められているけど、希望を持てというような命令形の作品ではないです。
 
Q:基本演技については監督のほうから指示があったというよりは、主演のお二人に任せるというスタンスで撮っていたという風にお伺いしましたが、監督の予想を大きく超えてというか、監督が予期していなかったような演技を見せてくれた、というシーンがありましたらぜひ教えていただきたいです。
 
監督:そうですね。予想を超えたような。最初の森川の暗い顔とか予想を超えるような暗さでしたよね。すごいなこの暗さはと思いました。ああいう顔いいなと思うんですよね、なかなか他の作品はそこまで暗くいかないですからね。
 
Q:監督が原作を読んでこの映画で一番描きたかったシーンというのはどこになりますか?
 
監督:一番描きたかったシーン。絶対に外してはいけない台詞というのは、この作品の中で「だって映画は永遠だから。」という台詞だけは外しちゃいけないと思いました。やっぱり言葉の世界だからそれをどう映像にするか考えるけれど、そのときに絶対この映画から外しちゃいけない、という方向を考えますね。この映画が撮りたい、とかではなく。
 
Q:2人で旅をしているシーン。バイクに乗っていくところなど、原作とは話が違うのは敢えて監督が?
 
監督:そうです。やはり映画だからロードムービーにしていこうかなと。でも原作のテイストは変えないでできるだろうと。ちょっとふざけちゃうのも、映画的な感じで真似してみたりしてみよう、とか。そういう方向に、笑いもとれるし良いんじゃないかな、くらいのちょっと楽しいシーンも入れようとやりましたね。
 
Q:バイクで知世子が「森に行かないで。」という風に言っていて、原作だと正宗先輩が怒って帰って行って一切振り向かないという風になっているのですけれど、映画だと知世子のことを見ているじゃないですか。それは、意図的に?
 
監督:そうですね、原作だと正宗は自分はもう枯れているんだと思い込んでいて、一切人にも手を出さない人なんです。だから突き飛ばしたりもしていないんですよね、知世子を。それを今回、やっぱり人と人が動くから、そういうアクションを入れてみようと思って。それで怒って突き飛ばすと。突き飛ばしちゃったらやっぱり振り向いちゃうんじゃないかな、という感じですね。そういう正宗なんじゃないかなと。今回菅田くんがやるのはそういう風になっていったということですね。
 
司会:俳優二人を動かしてみて膨らんでいったものというのはたくさんありますか?
 
監督:リハーサルを3日か4日やったのかな。撮影に入る1ヶ月前に。そのときに、増えた台詞などがあります。あとシーンも1個か2個増えたかな。そんな感じですね。
 
Q:四日市のキリンに見える鉄塔とか桑名の商店街とか映っていたのですけども、それは原作の大島さんが名古屋の出身だから名古屋で撮ろうという?
 
監督:そうです。まずそこですね。
 
Q:原作で知世子はいきなり髪を短くしたりとか、そういうイメージは掴みやすかったのですけど、正宗は目がすごく強いというのと、身体がすごく大きいという描写くらいで、どのようにしてこういったキャラクターを創り上げていったのかと。あと洋服が結構渋いというか、それはおじいちゃんの影響があるのでしょうか。
 
監督:そうです。その通りです。正宗は本当はもっと背が高いですよね、原作でいうと大男なんです。多分190センチくらい。でもそこまで大きい子でいい人がいなかったので、そこはもう原作から離れようということで新たな正宗を創っていこうと思ってやりました。
 
Q:すごく気になったのが堤防で知世子に「あなたの本当の名前は?」って聞かれたあとにずっと足元を撮るじゃないですか。自分の文字通りの道を探そうとしているのかなとか、進むべき方向がそこで見えなくなっちゃったのかな、という風に感じたのですけれど。
 
監督:そういうことだと。あれは原作にあります。知世子がいなくなっちゃってから正宗がずっと自分の足元を撮り続けるというのが原作にありまして、すごくそこが面白いなと思ってやりました。恐らくそういうことなんだと思います。私もそのように理解して撮りました。
 
司会:おじいちゃんが中村敦夫さん。これはいいなと思いました。渋いですね。中村敦夫さんといえばあの『木枯らし紋次郎』とか、渋い日本のベテランの俳優さんですね。
 
監督:ええ、もう本当にギリギリに、撮影に入ってから決まりました。うん、違うかな。撮影に入る前かな、忘れちゃった私も。
 
司会:すごくいい錘になっていますよね、作品のなかで。
 
監督:そうなんです、本当に。良かったです。
 
Q:今回編集も担当されたと思いますが、3種類くらい映像があります。どのくらい編集に時間がかかったのですか?
 
監督:撮影自体を分けていなかったので、グシャグシャっとした中でやるしかなかったので、それぞれという分け方はあまりないです。
 
Q:正宗が撮る映像を先に撮って同時並行で?
 
監督:ほとんど同時でした。前の日に撮ったものを次の日に撮るとか、そんな感じでバタバタしたコンパクトな撮影でした。
 
Q:一番監督が気に入っているシーンはどこですか?あと、その2人を見て増やしたシーンというのはどんなシーンだったのでしょうか?
 
監督:「俺は絶対長生きしてるからな」っていうところは、正宗で一番好きです。先ほど話していた叫ぶシーンというのはあそこです。そのリハーサルで、そこでやったときに「ああ、正宗くん何の心配も要らないな」とそのときに思いました。知世子のところは、本当に彼女は大変で、肉体的にも精神的にもちょっと押すと倒れちゃうような中でやっていたんです。そういう中で最後に「私は野良犬だよ。」とか、あの辺を増やしました。言わせてみたいなと思って。普通に言うんじゃないなって、臭くなく。そこが好きですね。
 
Q:2人してフード付きのつなぎのような服を着ますよね。あそこのシーンですけれど、鼻血を2人で出すシーンがあって、瓦礫が出てきたような気がするのですが、映画祭のお祭りのときでこういう質問はちょっとあれですけれど、やっぱりそういうのを連想するということですか?
 
監督:そうです。実をいうと設定が最初に2010年と出てきます。2010年の11年後なのです。なんだっていうくらいちょっと近未来ですけれど、本を書き換えたのが、2年前。撮影したのが1年ちょっと前。まだこんなにひどくなるとは、実は思っていなかったのですけれど。この国自体が。このままいくとひどくなるなと思って、もう地震1個起きたら日本中原発がいっぱいあるわけですから、どこでも爆発してどこでもああいう状態になる。で、もう皆平等に被爆していると。でも誰も「放射能」という言葉は使わない。東京では特にそうだった。「放射能」という言葉は使わない。普通にあるけれど使わない。ちょっと行くとそこに境界線があるように見える。見えるけど本当の境界線じゃないかもしれない。と、いう中でこれからは暮らしていくんだろうと。でも、誰もその話はしない。名前は言ってはいけない。っていう世界に普通にニコニコして暮らしている、というのを想定しています。
 
Q:主演のお2人の方が手を振るのがすごく可愛いのですけれど、何か意味はありますか?
 
監督:あれは本人たちに聞いてほしい。あれ、流行ってたの、あの二人で。異常にウケていて。「じゃあそれやってよ。」ってやってたのですけれど。今いたら聞けるのだけれどね。
 
Q:お母さん役が市川実和子さんですけれど、すごく顔の造形が似ているというか、全く親子として違和感がないなと思いました。あれはこだわったキャスティングだったのでしょうか?
 
監督:そうです。その通りですね。
 
Q:森川さんが決まってから?
 
監督:そうです。その次に。(市川さんが)2番目です。
 
Q:正宗先輩がすごく優しくていいなと思いました。ホテルでベッドの間にカーテンみたいなのをして「私今日はもう帰らない」って言ったら正宗先輩が急にガバッて起きて、一瞬パッて見るじゃないですか。あのシーンはやっぱり、そういうことを考えたという設定ですか?
 
監督:そうそうそうそう、そうです。
 
Q:一瞬考えたんだけど、でもやっぱりダメだなって、そういうことですか。
 
監督:そうです。
 
司会:ぜひ『チョコリエッタ』をご覧になった方々で、フェデリコ・フェリーニの映画をご覧になったことがない方がいれば、ぜひこの週末にでもレンタルビデオで借りてご覧になってみてください。フェリーニの『道』とか他の作品を見て、『チョコリエッタ』を見てみると、なんとなく世界観が近いなと気づくと思います。この作品を見たときに、ずいぶん長いこと『道』(フェデリコ・フェリーニ監督)を見ていなかったので、これは、と思いながらしばらく観ていて、「これ全部作り直してるんだ」ということに途中まで気づかないくらいうまかったです。
 
監督:そう、それはそこに座ってるカメラマンの石井さんのおかげです。最初のワンカット目が本当にそっくりですよね。もう、最初のワンカット目だけが似てれば、それでいいんですよ。
 
司会:本当にお見事でした。監督はフェリーニがお好きですか?
 
監督:すごく好きです、子供の頃から。『道』ではないですけど、『8 1/2』みたいな夢と現実がごっちゃになったような。ああいうフェリーニが大好きで。
 
司会:村上淳さんが(作品中で)『アマルコルド』を見てますもんね。
 
監督:そうそう、あれも原作と変えたんです。元は『甘い生活』だったんです。でも『甘い生活』じゃないんじゃないかなぁって思って、『アマルコルド』に変えたんです。
フェリーニ作品の夢と現実が入り組んじゃう感じとか、私はもともとそうした作品に惹かれて映画が好きになりました。一旦そうした作風から離れたりもしましたが、もう一度そこに戻ろうかなと思って。
 
司会:ここ最近の日本映画を観ていて、そうした昔の名作へのオマージュと作品の中身がきっちりマッチしてる作品はなかなかないと思っていました。もちろん引用があったり、似てるところがある作品はありますが、全体的にパクってる(笑)作品はなかなかなくて、その辺が開き直っててすごくいいなと思いました。
 
Q:質問ですが、撮影していてここは使いたかったんだけど使えなかったな、というシーンはありますか。
 
監督:シーンとしてはなかったです。撮影したシーンをたくさんカットしちゃうことは映画にはよくあるらしいですけど、私の映画には今までないですね。撮ったものはほぼ使ってます。

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