左からクラウディオ・ノーチェ監督とアドリアーノ・ジャンニーニさん
10/29(水)、コンペティション『アイス・フォレスト』の上映後、クラウディオ・ノーチェ監督と俳優のアドリアーノ・ジャンニーニさんのQ&Aが行われました。
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クラウディオ・ノーチェ監督(以下、監督):みなさん、たくさんいらしてくださってありがとうございます。このように東京に来られて非常に名誉なことだと思っております。この映画が満席で見てもらえるということはイタリアでも難しいことなのに、皆さん来て下さって本当にありがとうございます。
司会:ジャンニーニさん、初めまして。壇上で初めてお会いするのですが、髭がなくてめちゃくちゃかっこいいですね。
監督:東京に行くまで髭を生やしておけと言っていたんですが、彼は剃ってしまいました(笑)。
アドリアーノ・ジャンニーニさん(以下、ジャンニーニさん):こんばんは。ここに来られて非常に嬉しく幸せに思っております。上映中にドメニコ・ディエーレなどキャストのみんながメールをくれたのですが、その分も皆さんにご挨拶したいと思います。エミール・クストリッツァはメールをくれなかったのですが(笑)、同じように皆様にご挨拶申し上げたいと思います。
司会:ありがとうございます。クラウディオ監督、これは実際に起きた事件をもとに作られたのか、脚本を手がけられていますので、脚本を書かれたきっかけを教えてください。
監督:この物語は完全にオリジナルストーリーでして、実際の話や原作本があるということではありません。この脚本のアイディアですが、ジャンル映画を撮ってみたいと思ったのですが、例えばホラーとかスリラーとかそういったタイプの非常にしっかりした構成の意味をもった作品を撮りたいと思いました。それに加えて、現実問題、いまイタリアが抱えている問題、移民・入国出国の問題などのアイデンティティの問題を扱いたいと思いました。
司会:キャストがとても魅力的でジャンニーニさん、クストリッツァさんなどをキャスティングした理由を教えてください。
監督:まずはここにいるアドリアーノについてお話します。彼については最初のストーリーを決めるもっと前に、キャスティングを考えていました。その人物がロレンツォというこの映画の中の人物になっていきました。実際に彼に会って思ったことは、彼はもちろん素晴らしい役者だったんですが、彼と一緒に役を作っていけるのではないかと思いました。というのも、彼の目はとても悲しみをたたえていて、彼はいつも世界に微笑みかけているんですが、その奥に悲しみを抱えていて、その様子がロレンツォの役にぴったりなのではないかと思い、役を作っていきました。
クセニア・ラパポルト、彼女の役ですが、彼女に関しては非常に才能豊かな女優さんだと考えていたことと、いろんなシーンについて完璧でした。ラナという悲しみを自分の中に隠している人物ですが、見る側がそういう人物としてラナを感じられるようなものを彼女は持っていました。それは、何を隠しているかというと、それは真実だと思いますが、彼女を選んだときに、ラナのどういった過去を持っているかという背景は考えないようにしようと思ったんですね。というのも、下手なバックグラウンドの説明よりも彼女の顔や表情が表してくれると思ったからです。
それから、ピエトロに関してですが、オーディションから選びました。最初は、非職業俳優の旧ユーゴスラビアのイタリア語を話す若い子を使おうと思ったのですが、なかなか見つかりませんでした。それから若いイタリア人の役者を使うことも考えたのですがなかなか見つかりませんでした。最終的にこの作品に出ているドメニコ・ディエーレに出会ったときに彼がこの役にふさわしいと気づきました。ドメニコは非常に若いですが、自分自身も知らないような彼の顔と彼の体、体についての仕事もかなりしているので、自分自身も知らない大きな力を持っているような役者だと思います。
そして、エミール・クストリッツァの選択というのは、なかなかたどりつきませんでした。アドリアーノとクセニアについてはすぐに思いついたのですが、エミールの役については辿りつかなくて、イタリア人を考えたのですが思いつきませんでした。それである時ぱっと思いついて、クストリッツァがいるぞって思ったのです。そのときにはみんなが失神しそうになって・・・と言うのも、クストリッツァに辿り着くためにどうしたら良いか分からなかったのです。非常に有名な監督ですし。それで彼に会いに行って、映画の話をしたら、彼がやると言ってくれたのですね。というのも、この作品は自分のバックグラウンドと同じものがあり、国境という意識があって、旧ユーゴスラビアのことなど、彼自身のバックグラウンドがこの物語に入っているからと言ってくれました。
Q:発電所という場所に何かシンボリックな意味合いがあるのか、ということを聞きたいです。もう1つ、女性警察官がとても魅力的で強烈な印象が残ったのですが、彼女はコンファダールという役回りよりも2人のメインの主人公のうちの一人として独立した強烈なキャラクターを持っていると思いますが、どのようなことをイメージしてキャラクターを作ったのかということをお聞きしたいと思います。
監督:まず最初の質問ですが、もちろん発電所というのはシンボリックな比喩的な意味を持っています。というのは、自然がさえぎられる場所なんですね。ロケーションを探しに行ったときに、山は非常に感動的で原始的な力強いものがあるわけですが、それをロープウェイで登っていったときに、突然壁が現れるんですね。壁にさえぎられて、そこが国境と考えられるのではないかとそのとき思いました。そこに超えるべきものがあって、その向こうには夢のような世界が広がっている、そういう感覚を持てるのではないかと思いました。
それで、映画の中で発電所が止まるわけですが、その時にこれがセコンドにとって発電所は心臓・心と同じ意味合いを持っているわけです。セコンドにとっては過去が彼を捕まえに来た、そういう感覚にとらわれたことを意味しています。これまで無視していた過去が彼を捕まえにやってきた、発電所が止まったということはそれを意味しています。
それから、クセニアを演じたラナですが、さっき言いましたように、ラナという人物はクセニアと一緒に育ったわけです。この人物を作り上げるにあたって、彼女と一緒に仕事するのは簡単ではなかったです。というのは、彼女はロシア出身で、スタニスラフスキー風の役作りをすることに慣れていて、この人物を完璧に理解しなくてはならない。役柄の好きな本だとか、ありとあらゆる彼女の情報がなきゃいけない、という風に仕事に取り組んできていました。それを全く自分はゼロに戻してしまったので一緒に役作りをしていこうと言ったわけです。それで、彼女は受け入れてくれたのですが、彼女の直感を信じて役作りをしていきました。それから、彼女はこの映画の中でインプロヴァイゼーション(アドリブ)をしてくれて、これまで彼女はそのような仕事のやり方をしていなかったので彼女にとってもはじめての経験で、自分にとってもとても素晴らしい経験でしたし、彼女にとっても非常に良い経験であったことを願っています。
司会:ジャンニーニさんにも伺いたいと思いますが、非常に難しい役柄で善になるか悪になるかわからない役柄だったと思いますが、どのように考えて役作りをされたのか教えてください。
ジャンニーニさん:クラウディオと一緒にこのような複雑な役柄を作ったわけですが、複雑なのですが、他の人物とは違う点がありまして、それは非常にハッキリしているのですが、彼はメランコリーと夢の部分を持っているんですね。他の登場人物は別の感情で突き動かされていますが、彼はハッキリその2つによって動かされている。クラウディオはこの映画の中で非職業俳優と俳優を混ぜて使ったのですが、非職業俳優は土地の人間でしたし、彼らと一緒に仕事をするということは役者として非常に難しいプロセスでした。
監督:1つ付け加えたいのですが、ロレンツォに関しては非常にポジティブな人間なわけです。この映画の中では良い意味でも悪い意味でもごちゃ混ぜになって実際に良く分からないような感じになっているのですが、その中で非常にポジティブな人間だと言えます。セコンドに関しても、彼は実際にアンチヒーローなわけですが非常に苦しい思いをして、ただの悪いだけの人間ではないことがあると思うんですね。ロレンツォはセコンドとこの街の非常に暗い世界の中で、セコンドの犠牲になって、セコンドが人形使いのように彼のことを動かしていくわけですが、そのセコンドに関しても、移民たちに国境を越えさせて、夢に向かっていくことを助けていくわけですね。その夢というのは実は彼自身の夢でもあったわけです。
たぶん、ロレンツォは非常にロマンチックなカウボーイで、暑いところにいたいんだけれども寒いところにいて、馬がほしいけれどもスノーモービルに乗っているという人物だと思います。