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2014.11.13
[イベントレポート]
「朝から晩まで女の反省を聞き続けた」日本映画スプラッシュ『滝を見にいく』-10/30(木):Q&A

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©2014 TIFF

10/30(木)、日本映画スプラッシュ『滝を見に行く』の上映後、沖田修一監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
作品詳細
 
 
沖田修一監督(以下、監督):『滝を見にいく』監督の沖田修一と申します。今日は最後まで付き合って見ていただいて、ありがとうございます。
 
司会:そもそも、このおばちゃんが滝を見にいくという、この発想はどこから出てきたのかを教えていただけますか。
 
監督:最初は3人のおばさんたちがなんだかんだ言いながら最後滝を見るだけの映画があったら、なんとなく面白そうだなあとアイデアとして思っていました。今回オーディションでという話になったときに、もっと多いツアーみたいな形でできるなと思って、それをやっていったら7人になりました。
 
司会:これは7人が映画として座りがいいので、ということではなくて、落ち着きどころを探していったら7人になったということですか。
 
監督:はい。20人くらいでやってやろうかとも思ったんですけれども、一人ひとりがわからなくなっちゃうんで、これではしょうがないなと思って、7人くらいがちょうどいいかなって。あと菅さん役の黒田君もいるので、なんとなく8人でっていうことで。
 
司会:7人プラス1が揃ってから、脚本を詰めるというプロセス?
 
監督:はい、半分ぐらいは。脚本の流れはありましたが。流れっていっても、紅葉狩りに行って迷って帰る、というだけですが。15文字くらいですね。シンプルなので。その中でどういう人がどういうことをして、ということを、オーディションでみなさんにお会いして、そのまま脚本を変えていくという感じだったと思います。
 
Q:すごく素敵な作品をありがとうございました。全然接点がないような7人が仲良くなっていく姿が、『七人の侍』よりかっこいいと思いました。
気になった点が2点ありまして、オーディションで配役を決められたというのは前から伺っていたのですが、アドリブはどのくらい入っているのか、脚本で書かれていたのかなっていう点。2点目は、おばちゃん一人ひとりにすごくキャラクターがあったと思うのですけれども、沖田監督が普段おばちゃんを観察されていたのか、それとも沖田監督の才能なのか。

 
監督:少しでも楽しんでいただけてよかったです。まず野宿するシーンは、火を起こしたりするので、基本的には脚本通りにやっているのですけれども、火がつかなかったときにこうしたらいいんじゃないかとか、それぞれ前で話しながらやっていったので、台本に基づきながら、いろいろと色づけていくという感じだったと思います。食べるものもいろいろあったので、「キノコありましたー」とかも、最後そういう声があったらいいかなとか言いながら、付け足しながらやっていったという感じです。
持ち物とか、そうなんですよね。着る服装とかも、迷うはずがないと思っているんで、端の二人以外はあるまじき服とか履いていたりするんですけれども、荷物とかも少なかったりして、恐らくバッグに入れて行ったかとか考えながらやっていったんですけれども。お菓子を持っているというのは、夜を明かすときにいいなと思って。バスの中でゆで卵とか食べてるじゃないですか。本当に分からないんですけど、自分だけの遊びなんですけれども、ゆで卵に塩とかだけ持ってるとか、そういうのをいちいち考えるのが面白くて、それぞれのバッグの中を、美術の方と話しながら、タッパーの中にこの人は梅干を入れているとか考えながら、やっていました。映っているのと映ってないのがあると思いますけれども。
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©2014 TIFF

 
Q:すごく一人ひとりが、おばさんというか女性の部分がすごく出てて、よく若い男性の監督がこれを作られたなと思いました。身近にモデルとなる女性がいらっしゃっいましたか。
 
監督:ありがとうございます。僕もおばちゃんたちというより、女性たちと呼んでいたんですけれども、ポスターにおばちゃんと書いてあったんで、僕もすっかりおばちゃんと言うようになりました(笑)。自分と性別も年代も違う人の台詞を書くのが楽しかったんですよね。よその国を書くというような、本当に想像しながら書いていたので。それをまたこの皆さんに話してもらったりしながら、こういうこと言うよねとやっていたんですけれども、太極拳だったり、家でごろごろしてるよとか、そういう部分は実際分からなかったですが。僕の身の回りだとやはり母とかになってしまうので、うちの母のイメージが何分割もされてできているなともうすうす思っています。家にずっといるので、映画の中で旅をさせたみたいなところがあるのかなと思います。
 
司会:オーディションで、たくさんの女性たちにお会いになって、そこで相当エキスパートになられたと伺ったんですけれども。
 
監督:朝から晩まで女の反省を聞き続けたので(笑)。おかしくなるかと思いました。結局結構気を使っちゃうんですけれども、気を使うとオーディションにならないと思って、いろいろと事細かに子どものこととか結婚のこととか病気のこととかすごく聞いて。そういうオーディションだったので、ちょっとカウンセリングみたいになっていました(笑)。
 
Q:今回の映画で、これに一番注目してほしいところはありますか。
 
監督:ありがとうございます。一番好きなシーンはたくさんあるのですけれども、僕は草相撲をしたりするシーンとか蛇を捕まえたりとか童心に返っている、迷っているのが楽しくなっちゃうおばちゃんたちの一連のシーンがわりと好きで、本当にのんきというか、小学校6年生のような。草相撲ってあったなとか、あんなことしてたなと思って。
 
Q:草相撲はアドリブですか。
 
監督:いえ。最初台本を書いたときは虫を戦わせるシーンを書いたのですけれども、さすがにちょっとそれは撮れないなと思って、その辺の草で遊ぶみたいなことで思い出して、アッと思って書いたんです。そんなシーンが好きです。
基本的には、これはずっとシーンが山の中なので、朝から晩まで山の中で撮影しているので、果たして体力的に大丈夫なんだろうかというのはあって、その辺が大変でした。ちょっと撮影するだけでも、登って撮ったりするので。その割には、最高齢の徳納さんは撮影時79歳でしたが、走っていくロングショットも全力で走っているんですよ。79歳が山道を全力で走っていたのです。すごい元気だなと思いましが、逆にかなり心配だった部分でもあるかなと思います。
 
司会:ずっとある程度の期間合宿をなさっていたと伺ったのですけれども、7人の方々のチームワークといいますか。演技経験のない方もいらっしゃると思いますし、単純にいきなり合宿しろといわれて、仲が悪いグループができちゃったりとか、そういったようなことはどうだったのでしょうか。
 
監督:そんな派閥ができるような時間もなかったんじゃないかな、ご飯食べて撮影してご飯食べて撮影して、で。みんな仲よかった、みんなでこれをつくろうっていう一丸になってる感じがあって、こっちも負けないようにしようと思いながら、女性たちの前に立ってたような気がします。
 
Q:撮影日数はどのくらいですか。
 
監督:11日ちょっとですね。
 
Q:ずっと山ごもりですか。
 
監督:はい。
 
Q:かなり天候に左右されてしまうんじゃないかと思うのですが、どうでしたか。
 
監督:2日間くらい、雨が降るといって、初日に台風が来るっていってましたね。結構やばいよってことになったりしました。ロングショット、割と長いカットで、みんなが歩いてきて迷ってくまでを一連でやっているんですけど、それが本当に雨が降っちゃったりしながらやったので、機を見計らってやるとか自分で判断して撮ったりとか、翌日に繰り越して撮ったりとか、雨と戦いながらやっていました。雨でもいいかなってシーンもあったので、開き直ってやりました。
 
Q:今回の作品を作るにあたっての心境だったりとか、今後の作品に対してのこういうのが作りたいとかがあったら、お伺いしたいです。
 
監督:その時々、次何を撮ろうかとなったとき、やっぱり面白そうだなあって思えるものが、いくつかあります。僕が考えていることと、プロデューサーとか映画をつくる会社の方が考えている企画だったりとか、その時々ですが、自分がわいわい面白がれる要素があるかないか。『滝を見にいく』は「監督が好きなものを作ってください」というのを受けての作品だったので、「じゃあ」と思って。好きに作ってくださいというのは怪しいんじゃないかなと思いましたが。そんなことはまるでなかったんですけれども、本当に自由に作らせてもらいました。
僕はだいぶ前は自主映画をやっていて、お父さん役とかお母さん役とかやっぱりいないんですよね。プロの卵はいないし、知り合いはいないし誰かのお母さんに出てもらったりするんですよね。そうすると、そのお母さんがいい芝居をしたりするんですよ。そういう楽しみをもう一回味わいたいみたいなところはあったのかなとは思います。もちろん、大きなプロの現場でもあるんですけれども、今回は1回これで撮ってみてもいいんじゃないかなって開き直りが、こういう映画があってもいいんじゃないかなって思って、やらせてもらった感じがあります。今後も基本的には変わらないんですけれども、どこかしらに「くだらないところがまたあるなあ」と思ってもらえるような映画を続けられたらと思っています。「沖田印が全くないじゃないか」というものにならないように、頑張りながらやろうかなと思っています。
 
司会:何かこの作品で新たにつかんだものってありますか。こういうことってできるんだ、新たな演出の引き出しが増えたとか、この先に生かしていけそうな新たな経験値になったとかということはありますか。
 
監督:いいおばさんたちの女優さんたちなら知ってます(笑)。演出の部分は分からないですね、そんなことはないのかもしれないけど。あとあとわかるかもしれません。
 
Q:観ていてとても暖かい心になるんですけれども、こんなに暖かくしてくれるコツってあるんでしょうか。
 
監督:ありますね、そんなに考えてないからだと思います(笑)。暖めようとか思ってないからだと思います。基本的にはそんなに優しくて暖かい映画を撮ろうと思っていないんですけれども、よくそんなふうに感想をいただくので。間違いなくこの7人が遭難して死ぬ映画ではないので、そういうところであんまり無理してないのかなと思います。映画が押し付けがましいと、逆に嫌気がさすというか、ちょうどいいぐらいのなかなと。あまり考えないようにしていますが、変な答えになってしまってすみません。
 
司会:よく耳にするのが、とってもシリアスな映画は現場は明るくて、コメディタッチの映画の場合は逆に現場がシリアスになっていると聞くことがあるんですけれども、沖田組のいわゆるコミカルな面での雰囲気はどういった感じですか。
 
監督:僕も他をあまり知らないんですけれども、基本的には明るい方だと思います。ピリピリは全然してないかな。僕がゲラゲラ笑っていると思うんで。1回自分が笑ってNGってことがありました。さすがに本当に嫌な顔をされました。そんな感じで撮ってるから、暖かいっていわれるのかな。
 
司会:目に浮かぶような感じが少ししますが。監督の奥様は7人の女優のうちどの人がタイプですかって。これは、どうなんですか。
 
監督:これは、え(笑)、どうなんですかね(笑)
 
司会:完全に困っていらっしゃいますね(笑)
 
監督:いない!
 
司会:いない?!お母様の7つの分身ということのほうが。
 
監督:そうですね。考えたこともなかったです(笑)
 
司会:ありがとうございます。
 
Q:監督は今回の東京国際映画祭で、観てお気に入りの作品とかありますか。
 
監督:この間『紙の月』は観ました。他に観たいのは、ジャン・ピエール・ジュネですね。『メルボルン』も観たいですよね。すみません、観てないものばっかりで。

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