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2014.10.30
[イベントレポート]
「この作品は梅本洋一さんへのオマージュです」コンペティション『来るべき日々』-10/25(土):Q&A

 
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©2014 TIFF

10/25(土)、コンペティション『来るべき日々』の上映後、ロマン・グーピル監督と女優のサンダ・グーピルさんQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
ロマン・グーピル監督(以下、監督):ワールド・プレミアということで、普段は会場で見ないのですが、初めて観客のみなさんと一緒に観ました。観ないではいられないような気持ちになりました。そしてすごかったです。日本語字幕と英語字幕が両方入っていたので、私は演じておりましたが、下手でも目立たなかったと思います。みなさん、字幕をしっかりご覧になっていて。
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©2014 TIFF

 
Q:サンダさん、一言いただけますか。
 
サンダ・グーピルさん(以下、サンダさん):こんばんは。東京には初めて参りました。とてもうれしいです。みなさんと一緒に、出来上がった映画を初めて観ました。
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©2014 TIFF

 
Q:非常に高度で複雑な構造を持っている作品だと思います。最初見ると、ドキュメンタリーとフィクションの融合とも思ったのですが、実は完璧に計算されたフィクションであろうと思うのですが、これは完全な脚本があるのかどうか、あるいは、どのように作られたのか教えていただけますでしょうか。
 
監督:映画の構造について、最初はシナリオを書きましたが、文学のような感じのものになりました。そして9つのポイントを書き出しました。愛、お金、両親、子どもたちのことなど。映画の最初から最後までの間に、9つの点が順々に、そして、繰り返して出てくるような感じで、9つ、9つ、また9つと繰り返されるように作ろうと思いました。最初の1分があり、その1分の答えが9分後に出てきて、さらにまたその9分後に出てきてというような感じにしようかなと思ったのですが、あまりにも大変だったので、きっと見ている人も大変だろうと思い、そうした構造はやめました。しかし、この作品は、映画の持つ力を発揮している作品だと思います。フィクションとして作られ複雑な構造になっているのですが、映画に出てくる人物像が、その力を発揮するがゆえに、たとえば銀行に勤める女性は、その人物像の力が発揮されているがゆえに、お金に力が見えてくるし、プロデューサーの女性は、人物像が力をもって演じられているがゆえに、アイデアというものが生きてくる。その中で、さらに実際の私の家族のアーカイブ映像を入れ込んでいって、そのうちに、映画をフォローしたくなる、そういう映画の力が現れてくるわけです。最初は文学のようなシナリオがあったのですが、映画自身が持っている力がどんどんその映画を作っていくような映画になっています。
 
Q:前作は子どもたちが自由闊達に生き生きと描かれた作品『ハンズアップ!』で、今回は老人が力強く描かれています。劇中オリヴィエ・マヌエラについての言及もあったように、監督の中で老いに対する意識が強くなっているのかなと感じて、そのことについてどう思っていらっしゃるのかなということをお聞きしたいです。それと、映画のキャラクターから、もしかすると、内的要因もしくは外的要因で、グーピル監督って映画がもう撮れなくなっているのかなと。そしてそのことでフラストレーションが溜まっているのかなと映画を見て感じたのですが、そのことについてもお聞かせください。
 
監督:まず一問目に対する答えですが、私について言えることは、前作で失敗したことや、前作に対する抵抗みたいな感じで次の作品を作ります。それによって、前進をすることをやっています。実際には同じようなことを映画で語ることもあるのですが、前作に対して、対抗させるような感じで、一種の戦いのような感じで作品を作っていきます。それから、死とか老いに対する考え方ですが、私の人生においては、残りの人生が今まで生きてきた人生よりも、何をやっても短くなる年代になってしまいました。もちろんいつ死ぬかわかりません。明日死ぬかもしれませんし、長生きするかもしれませんし。長生きするとしても、残りの人生の方が今までの人生よりも短いのです。ですから当然老いについては考えます。そこで考えるのは、何を次の世代に残すか、伝達、トランスミッション。そして抵抗。それは私の今まで撮ってきた映画のテーマです。抵抗とトランスミッションは。それから、今、映画を撮るのは難しいというのは確かです。そして死について映画を撮るのは本当に難しく、というのも、死は世界中のすべての人が迎えるものです。ひとりとして迎えないということはありません。それをお互いに共有するにはすごく難しい題材だからです。
 
Q:2回ほどピアノが落ちてきたり、車がぶつかったりするシーンがありましたが、それもやはり監督の死に対する考えなのでしょうか。
 
監督:なんとなくみんながシーンとして、まじめな悲しい雰囲気になってしまっているのですが、映画を撮るにしても、人生にあって、死を真剣に取り上げすぎないことも大切だと思います。もちろん死は脅威ではあるのですが。でも常に自分の上ではなく、隣に落ちてくるものでもあるという、そんな冗談をこめてあのシーンにしました。フランスのアニメ映画と同じようにアーティストの団地にピアノがバーンと落ちてくるなんて、ちょっと冗談で不条理な感じが面白くていいんじゃないかと思います。冗談ですから、あまり真剣に考えないように。先ほども述べたように、前作に対抗して同じことをしないように次の映画を作っているのですが、質問に対する答えも同じだということに気づきました。次の質問に答えることによって、前の質問と矛盾したことを言っていたりするのですが、あまりまじめに捉えないでください(笑)。
 
Q:ご自分の葬式を演出している場面についてですが、それまでの展開とか、家族のフッテージを撮っている様子とは違って、演出するときはそんなに専制的で、独裁的な人なのかと驚きました。もちろんギャグな場面なので、わざとそういうキャラクターになっているのか。実際に映画の演出をするときは、ああいうキャラクターなのか、奥さんがご覧になった姿も含めてお伺いしたいです。
 
監督:家内には話させません。というのは、実際には撮影に立ち会っていて、かつ妻ですから、この映画の状態よりももっと酷い状態です(笑)
 
Q:そのシーンについてご質問が出たので、聞かざるを得ないのですが、映画監督としての自分を殺すというのは、映画引退宣言ともとられかねないと深読みしてしまうのですが。
 
監督:これは空想のシーンでありまして、自分の葬式を自分でみることができるなんてちょっとすごいじゃないですか。夢のようなことだと思います。映画監督だからこそ、自分の葬式に何人の友人が来てくれて、友人はどんなふうに泣いてくれて、家族はどんなふうになるのか、正確に知ることができます。映画ですから、その力というのは通常より10倍も力強く感じられるわけです。それとともに、自分はこれからもたくさん映画を撮りたいけれど、時間は多くないということも感じられるわけです。このシーンに関しては、先ほどの質問にもまじめに答えたいと思うのですが、このシーン自体は、撮影の最後の最後に撮るつもりで、技術の音響の人とか、助監督さんやみんなに恨みをはらそうと思っていたのですが、出演する俳優さんの都合で最初の週に撮らなければならなくなって、私の撮り方はまだ抑えた感じになっています。そして、今回東京国際映画祭での出品を受け入れたというのも、自分の友人の笑顔を思い浮かべ、友人に紹介できることをすごく誇りの思い、楽しみにしていました。その友人というのは、以前夕食をともにしたこともあり、「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」を作った方で、最初の監督作を批評してくださいました。日本語はわかりませんが、日本語の字を見ているだけでとても美しいと思ったことを覚えています。その後『ハンズアップ!』でも話をしてくれて、そのときに奥様の坂本安美さんともお会いしました。今日は、坂本さんとその息子さんと夕食をしました。というのも、友人である梅本洋一さんは亡くなられたからです。日本へ来ることを受け入れたのは、彼のおかげで、彼に会いたかったから、みんなに会いたかったからで、この作品は彼へのオマージュです。彼の映画へのかかわり方、映画の愛し方が好きだったので、今回、日本へ来たいと思いました。
最後になりますが、今晩、ちょっと怖いです。というのも、私は、家内の裸をあんなに大きなアップで見たのは初めてだったので、今晩どうなるか心配です。(一同笑)

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