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2014.11.10
[イベントレポート]
「人間は指標となるものを求めています。」コンペティション『1001グラム』-10/26(日):Q&A

 
1001g

©2014 TIFF

コンペティション『1001グラム』の上映後、ベント・ハーメル監督のQ&Aが行われました。
作品詳細
 
 
ベント・ハーメル監督(以下、監督):今日は皆さま、いらしていただき誠にありがとうございます。自分の作品を上映できることを光栄に思っております。実はこれまで、私の作品は全て日本で上映させていただいてます。過去4作品、こういったお付き合いができることも大変嬉しく思っております。
 
Q:ありがとうございます。非常にユニークであたたかい作品なんですけども、1kgの基準の研究所がパリにあって、という仕組みは実在するものと解釈してもいいのでしょうか?
 
監督:私はこの脚本を書くためにかなりのリサーチをしまして、パリにはあのような研究所が実在します。そもそもこの物語の題材というのは、数年前に私がたまたまラジオ番組で聞いた話に起因するのですけれども、そのラジオ番組はm(メートル)とkg(キログラム)の話をしていて、どちらもかなり不確実なもので、なかなか正確に測るのは難しいという話でした。メートルに関しては、波動を当てて戻ってくる時間を計測することで、正確な1mという単位を測ることに成功したそうです。でもまだ、正確な1kgを測るということには成功していなくて、毎年できるのではないかと言われていますが、未だに成功しておらず、その方法は見つかっていないそうです。
1mという単位も、1kgという単位も、125年前に原型が作られました。1kgに関しては、イリジウムとプラチナで作られています。1kgという原器が40個作られまして、パリに集まったそれぞれの担当者が世界各国に持ち帰りました。少なくともヨーロッパ諸国は遠いですので、汽車に乗って持ち帰ったのではないかと思います。それ以来、それが全ての原器というわけになりまして、それで毎年、映画で描かれていたように、それぞれの国にある原器がパリに持ち込まれて、それが測られるわけです。実際変わっているか変わっていないかは分からないのですが、パリの原器が増えたとか減ったとか、この映画の場合だとノルウェーの原器が少し減ったとかいうことになるのですが、そのようにして毎年、測定が行われています。
1kgは実用化され、普段の生活に使っているわけですよね。1kgという秤が正確でないと、例えばガソリンなどを測る場合、儲けたり、損をしたりする場合があるので、正確であるということがとても重要なわけです。私がとても面白いと思ったのは、1グラムにみんなこだわっているということで、そこからこのような映画を考え出しました。
 
Q:ストーリーももちろんなのですけども、画面構成や色使い、そういう風なところの演出をかなり意識されたのかどうかを、聞かせていただければと思います。
 
監督:素晴らしい質問をありがとうございます。かなり入念に色々演出して、プランして考えました。おっしゃる通り、この映画の冒頭はかなり冷たい感じがします。それは彼女の家であったり、研究所であったり、彼女自身の人生も冷たかったり、またノルウェーという場所柄そういったイメージがあるわけです。それで、パリに行ってパリの研究所もかなり冷たい感じがしますね。だけども、パリの街に出た彼女っていうのは、パリの街には茶色があったり、ゴールドがあったり、どんどん色が変わっていきます。それによってどんどん彼女自身も変わっていくと。そしてこの映画の中では冒頭の彼女のメイク、ヘア、洋服、そういった衣装もどんどん変えていって、あらゆる意味で入念な演出を施しました。簡単に言ってしまいますと、見てお分かりだと思います。彼女の内面の変化というものは、彼女の周りをとりまく環境の変化と一緒になって変化しているんだという演出をしました。
1001g2

©2014 TIFF

 
Q:画像が本当に美しいというのは皆さんと同意見なんですけれども、監督は絵コンテを描かれてそれを入念に再現するというような映像の作り方をされるんでしょうか。
 
監督:実はですね、ストーリーボードは僕はあまり描かないんです。特に複雑なシーンの場合は描くときもありますが、往々にしまして見取り図のようなものを描きます。そしてここにカメラを置いて、ここに主人公がいて、またここに家具があってという上から見たような目線のフロアプラン、見取り図を描くわけです。あとは、各ショットを本当に入念に撮影監督と話し合いながら決めています。カメラをどういう風な位置に置いて撮影するかを決めるのも場所が重要になってきます。私の場合はほとんどスタジオでの撮影はありません。実際の場所、ですからロケハンが非常に大変ですけれども、実際の場所を使って撮影をしています。それがカメラワークにもずいぶん影響を及ぼします。
 
Q:音楽の使い方にとても興味を持ちました。音や音楽をうまく使われていますが、演出を考えられたのでしょうか。
 
監督:はい、やっぱり音楽、そして音の演出っていうのは入念にこの映画の中でも、そして全ての僕の映画の中で行っております。特にですね、今回の作曲家っていうのはこれまでの3作の僕の映画にでも携わってくださったジョン・エリック・コーダさんという方にお願いしていまして、彼とは制作に入った初期の段階から入念に打ち合わせをしながら作り上げていく、という関係をもっております。そして、物語の中のあらゆる要素を入念に考えていきたいという風に僕は常に思っているわけですが、その中でもやはりサウンド・音楽というのは最もメインの要素だと考えておりますし、作曲家とサウンドデザイナー、あとは音響のスタッフに、常に密に連絡を取り合って仕事をしてもらうようにして、その関係を築くようにしてそれがとても大事だという風に考えております。
 
Q:非常に絵も音も入念に構築なさっているというところで、女心をどのように入念に研究なさったんでしょうか?
 
監督:実は僕の作品で女性が主人公っていうのは初めてです。ただ僕は彼女を一人の人間として考えました。それと同時にあの役っていうのはもしかしたら、女性でなくても男性でもそんなに変わらない、違った演出の仕方はしなかったかも、そんなに変わらなかったのではないか、という風に思います。女性の心についてはそれぐらいしかお答えできません。
先ほどから入念にいろいろと下準備をするという話をしましたけれども、下準備をすればするほど実際に撮影に入ったときは自由でいられると僕は感じるんです。準備が整っているから、心の余裕もできる。それでいろいろ「あ、こういうやり方もあるんだ」という風に、準備ができてるからこそ自由に新しいアイデアが生まれると思いますので、入念にちゃんとプランを立てていたらよりそのオープンな考え方をすることが出来る、そして自由になれるということが僕の信念です。
 
Q:野暮な質問だと十分承知した上でお聞きしますが、お隣さんがパイロットだった理由はありますか?
 
監督:他に良い職業はありますか?(笑)特に深い意味はなく、トポグラフィー(地形)といいますか、それが僕とても気に入っていて、それであまり深く考えず、彼をパイロット役という設定にしました。
二人の関係性の重要な点というのはその職業ではなく、話し合っても、彼は「時間がないから話せない」と言って、二人のコミュニケーションがうまくいかない、かみ合っていない。それである意味彼女の孤独っていうのをそこの中で表したいと思いました。彼は制服を着ていますけれども、それがパイロット(の制服)ですが、それが他の制服の人でも別に良かったと思うんです。ただとにかくその二人の話が成り立たない、コミュニケーションがかみ合っていないというところを描きたいという風に思いました。ですから、彼がパイロットということはこの物語上では重要ではございません。
 
Q:監督自身はどのような経歴を経て映画界に入られたのかお聞きしたいです。
 
監督:そもそも法学部でした。友人に法律を学んでいた人がいたので、法学部に入りました。その後文学を習い、それから映画のセオリー、フィルム・セオリーを学びました。
 
Q:最後に監督からお別れの一言をいただけますでしょうか。
 
監督:この映画は科学からはじまるように見えますが、最後までご覧になってわかるように、生きること、人生といったものを描いているつもりでおります。人間は指標となるものを求めています。それは人生の指標だったり、誰もが“死”というものに恐怖感を感じているということが言えると思います。その中で、自分たちがそれぞれ生きているということを描きました。でもまだ描き切れていないのかな、十分ではないのかなという風に思います。
 

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