左からクリストファー・ドイルさん、ステファン・ホールさん、エレナ・カザンさん、ケヴィン監督、アンドレ・プエルトラノさん、マルチェロ・ブッシさん、ヴィム・ナデラさん
10/24(金)、コンペティション『壊れた心』の上映後、ケヴィン監督、俳優のアンドレ・プエルトラノさんとヴィム・ナデラさん、プロデューサーのステファン・ホールさん、俳優のマルチェロ・ブッシさん、撮影監督のクリストファー・ドイルさん、女優のエレナ・カザンさんのQ&Aが行われました。
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矢田部PD:Q&Aがどのような展開になるのかあまり予想がつかないのですけれども、大きな拍手でお迎えください。ケヴィン監督、アンドレ・プエルトラノさん、ヴィム・ナデラさん、プロデューサーのステファン・ホールさん、マルチェロ・ブッシさん、クリストファー・ドイルさん、そしてエレナ・カザンさんです。どうぞ。
椅子が一個足りないんですが、クリストファー・ドイルさんを座らせないためでしょうか(笑)Sorry, it was not intentional.
クリストファー・ドイル撮影監督(以下、ドイルさん):責任者は誰だ?社会がいけないんですね、僕のイスがないのは。I’ll be a good boy.
矢田部PD:ありがとうございます。改めまして、ケヴィンさん、この作品をワールド・プレミアとして東京に持ってきてくださって。本当に刺激的な作品をありがとうございます。ケヴィンさんからみなさんに最初の一言を、改めていただけますか?
ケヴィン監督(以下、監督):みなさんどうでしたか?どう思います?女性からの質問しか受け付けたくないのですけれども。
ドイルさん:その後ろの女の子に質問してもらいましょう。
Q:(男性)簡潔に質問をしたいんですけど、いろんなところで聞かれていると思うのですけど、浅野忠信さんを起用した経緯を教えてください。
監督:私自身が浅野さんのファンだったからです。一番最初に彼を見たのが、『殺し屋1』だったのですけれども、その後もいろんな映画をたくさん観ました。
ドイルさん:あの浅野忠信さんという世界で一番素晴らしい俳優と働きたくない、とおっしゃりたいんですか?
Q:ケヴィンさんから浅野さんに依頼したのですか?
監督:そうです。『モンドマニラ』。私の前の作品ですけれども、それを彼に観てもらいました。その後に依頼しました。
矢田部PD:ありがとうございます。先ほどそちらでも手がすぐに挙がったと思うのですが、こちらの通路沿いの、また男の方でケヴィンさんすみません。
ドイルさん:また男ですか?
矢田部PD:はい。その通りのリアクションで。
Q:男ですみません。ただのクレイジーな映画なのかと思ったら、計算的なクレイジーですごく面白かったです。
監督:新しいジャンルですよ。ハリウッドで新しいジャンルとして確立したいと思います。
ドイルさん:墓場に行ったらどこにいるかって分かりますよね。まあ、どんな映画なのか分かると思いますけど。
Q:一つだけ分からないところがことがあって、鞄を持った大柄の男性の白人の方が出てきましたが、あの意味を教えてください。
監督:白人って覚えてないんですが、どの白人ですか?
ドイルさん:僕だけが白人だったんですよ。あの映画で(笑)
監督:ではクリスさん、演技の説明をしてくれますか?(笑)
ドイルさん:あの植民地の隠喩になっています。たまたまそこに白人がいたので使いました。
監督:そこに登場してくるキャラクターについて質問がある場合はこう答えます。キャラクターが出てきたのは殺すか殺されるためで、そこでコインを投げて殺すか殺されるか決めたわけです。
Q:ありがとうございます。
監督:あなたそんなに若いのにそんなに知的なことばかり言っちゃあダメですよ。映画楽しみましたか?
Q:とても楽しかったです。
監督:じゃあ、ガールフレンドに言ってください。楽しかったって。
Q:あの大きな声で叫びたいと思います。帰ったら。
監督:そのシーン撮影してもいいですか?スローモーションで撮影したいです。
ドイルさん:面白くなってきましたね。じゃあこれ脚本書きましょう。
矢田部PD:非常に若く有望な映画批評家の卵と言っていいでしょうか。ジャーナリストの卵なのでいじめるのはこのくらいにしておいてください。はい、続きましていかがでしょうか?
Q:個人的に一番気に入った部分はどこですか?
ドイルさん:これはケヴィン監督以外、特に俳優に聞いた方がいいんじゃないでしょうか。
アンドレ・プエルトラノさん(以下、アンドレさん):彼らと一緒にいるとき僕はあんまり話さないのですけど、正直なところを申し上げますと僕は実はプロの俳優ではないのです。だけど、ケヴィンに声をかけられて浅野忠信さんが出るとかクリストファー・ドイルが撮影だと聞いて、じゃあちょっとやってみようかなと思ったのですが、一番気に入っているのはあの彼女をビンタするところですね。
エレナ・カザンさん(以下、エレナさん):あれは大変でした。彼がすごく戸惑っていたから「いいから。いいから。もっと叩いていいから」と言ったら本気で彼叩いたんです。頭がくらくらしたのだけども、なんとその部分はカメラに収まっていなかったんですね。
ドイルさん:僕はケヴィンを殴るのに忙しかったから。みんなお互いに殴り合ってたんだよ。
ヴィム・ナデラさん(以下、ヴィムさん):僕が一番好きなパートは、私が赤い下着だけをつけているシーンがあるんですけども、そこが一番好きです。しかし編集でカットされてしまいました。なのでDVDで観てください。
ドイルさん:私が一番気に入っているのは友達が何かを一緒にシェアしようと声を掛けてくれる。そのこと自体が本当に嬉しいです。お酒を一緒に飲もうと誘われたのかと思ったら映画撮影でした。まあ、いつもこうなんですけど。
Q:非常に序盤は観客を突き放しつつも最後の最後に違和感を解消していただくという、ちょっと感動しております。演者さんの方に聞きたいのが現場ではどういう演出がなされていたのかお尋ねしたいです。
監督:言語ということで言いますと日本語以外タガログ語もありますし、音楽の中の言語を考えますとドイツ語とかフランス語も入っています。まあそれは言葉なんですけども私にとって映画というものは台詞、まあモノローグっていったものだけではなくて色でありイメージであり音であり、何を聴くか聴かないか、何を観るか観ないか、そのチャプターとチャプターの間にあるもの、あるいはスペースとスペースの間にあるもの、そういったものです。
アンドレさん:ケヴィンにもクリスにも「とりあえず、リラックスしろ」という風に言われました。それからケヴィンにはよく「クレイジーに行け」と言われました。それから「流れに乗って」とも言われました。あと一番言われたのが「とりあえず、やってみろ。Go for it.」と言われたんです。例えば殴るシーンでも、ビンタをしたりするシーンでも最初はおずおずとやっているのですが、段々本気になって殴り合ったり、とかいうことがありました。
エレナさん:シーンのことは、「どういうシーンにしたいか」というのは分かっているんです。どんな気持ちを伝えたいかということも分かっているのですけど、言葉が違うということでもっと面白くなっていったと思います。その心で何を感じているのか、というのはそれで分かると思いました。
ドイルさん:なのでアメリカのアクターズスタジオに行かないでフィリピンのワザックスタジオに行きなさい。タダで使ってあげます。
ヴィムさん:私はケヴィンさんと仕事をするのはこれが3作目なのですが、『モンドマニラ』ではマスクを被っていたのでキャストとは言えないかもしれません。ケヴィンというのはあの反構造主義、反ナラティブ、反プロット、すべてのものに反対なんですが、ただ役者のことは大事にする人で、役者のためのアクターズディレクターというか役者のための監督ということで、役者に任せてくれるんです。全体にこういうことをしたいと、最初はこうで最後はこうだということは言ってくれますけども、その間は完全に役者に任せてくれるというやり方なので、私は彼をとても信頼しています。
Q:音楽についてお聞きしたいのですが、考え方をお聞かせください。
監督:撮影する前にメインのモチーフになっている曲を既に作曲していました。その後に他のミュージシャンを呼び入れていろんなメロディを解釈してもらったり、他の曲を取り入れていったりしました。これがその音楽的なストーリーなんですけれども、もっとエモーショナルな感情的なレベルを付け加えていこうと思いました。音楽を楽しむために次回はぜひ目を閉じてこの映画をご覧になっていただきたいと思います。