左から佐藤現さん、足立紳さん、伊藤洋三郎さん、早織さん、松浦慎一郎さん、武正晴監督
10/29(水)、日本映画スプラッシュ『百円の恋』の上映後、武正晴監督、女優の早織さん、俳優の松浦慎一郎さん、脚本の足立紳さん、プロデューサーの佐藤現さんのQ&Aが行われました。
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司会:あらためまして、第27回東京国際映画祭、日本映画スプラッシュ部門『百円の恋』の上映にお越しくださいまして誠にありがとうございます。ここからは、皆様から、監督、キャストの皆さん、脚本家の足立さん、プロデューサーにご登場いただきまして、ご質問を受け付けていきます。
先ほど舞台挨拶にはいらっしゃらなかった佐藤現さんに加わっていただきましたので、この作品に関わるきっかけと、GOサインを出す係でもあると思うのですが、どのようなところに魅力を感じてこれで行こうと思われたのですか。
佐藤現さん(以下、佐藤さん):僕は、松田優作賞を受賞した面白い脚本があるということで紹介を受けたのが、去年の夏頃だったと思うのですが、優作さんの名前があって。僕は松田優作さんに憧れてこの世界に入ってきたようなものなので、そんなものがあるのかということで、読ませていただいて。皆さん一緒だと思いますが、僕も惚れ込んでというか、しびれました。武さんは、ずっと一緒に作られていたということで、お二人を紹介いただいて、お会いして。今、オリジナルの脚本で映画を作るというのは、なかなか今企画が通りにくいということもあったのですが、そこはやはり、優作さんの名前というのをすごく武器にさせていただいて、さらに、周南や下松のフィルムコミッションにとてもご協力いただいて、なんとか制作が出来るようになったという経緯であります。
Q:監督とプロデューサーにお聞きしたいのですが、登場人物のほとんどが煙草を吸っているシーンがあり、それぞれに演出付けがあったと思うのですが、キャラクターと煙草の関連性について、メインキャストの部分でお話をいただけますか。
武正晴監督(以下、監督):これは完全に狙いで、最初からシナリオにも書き込まれていまして、家族というのを表現するときに、父親、母親、特に女性の多い家族なので、その煙草の吸い方とか、煙草を吸うということは、家族をキーワードにしてこだわりました。煙草の銘柄とか、各キャラクターにこだわったのは、私の演出です。僕らも煙草に対する経験値で、銘柄にこだわったということはありました。例えば、お母さんがハイライトを吸ったりとか。特に女性陣3人が吸うというのは、お母さんの吸い方を、2人が真似てみたりとか。それぞれの俳優と話をしながらやりました。
あともう一つは、煙草というものが、何かストレスを表しているということで。僕も煙草を吸っていましたし、よくわかるので。そのストレスというものが、だんだん無くなっていくということにはならないかなと思い、やってみました。
司会:佐藤さんは、お話しをする中で、このシーンは絶対に使ってほしいとか、このシーンは使うのをやめようかとか、そのような話し合いもあったのでしょうか。
佐藤さん:それは、ないですね。監督の演出、意図は、もちろん伝わっていましたし、それで制限をかけるとかそのようなことは全くなく、考えてもいなかったです。
Q:すごく素敵な作品をありがとうございました。悔しさと失恋を前にしてどんどんかっこよくなっていく、安藤サクラさんに感動して、途中からぼろぼろ泣いてしまいました。安藤さんがいらっしゃらないのがとても残念です。質問は、安藤さんの話になってしまい申し訳ないのですが、最後の方の体作りが凄いなと思っていて、すごくきれいな筋肉をしていらしたので、どれくらい役作りのためにトレーニングされたのかというのと、最初の方はゆるめの服装が多かったので、最初の方との変化があまりわからなかったのですが、実際にムキムキになっていったのかどうかを教えてください。
監督:実際に、初めてボクシングのトレーニングを始めたのは撮影の3ヶ月ぐらい前からなのですが、本人はもっと前からやっていたかもしれません。僕が初めてお会いしたのは、(撮影の)3ヶ月前でして、シナリオの中でどういう部分で、どういう風に見せていこうかという話をしているうちに、1ヵ月前になってきて。実際に見せるとなると食事のコントロールもしていかなければならなくて。長いスパンでいうと3ヶ月ですが、撮影自体は非常に短い期間でやっていたので、急激な変化は本人の工夫ですね。今日観ていても、人間の体ってすごいなと思ってしまいまして。僕らも実際に現場で見てびっくりすることがありまして、彼女なりのコントロールの仕方があったようで、たとえば、表情を変えていくときの弛緩する感じだとか、体のどこかのポイントを抜くと体がぬっと緩んだりとか、つまり、安藤さん自身がものすごく自分のことをよく知っているというか、見せ方も含めて。私たちはそれをどうとらえていこうかということを、ライティングも含めて、やっていきました。
ボクシングの試合前シーンでは、ロッカールームで最初に(安藤さんの)体を見たときは鳥肌が立ちました。また、そこでポージングや、どうしたら筋肉が見えるかということを相当研究してこられたと思います。僕らがそれをどう撮るかということだったので。ほとんど(安藤さんの)自己管理で。もちろん練習には付き合いましたが、それ以外の見えないところで相当やられていたのではないかと。僕らの知らないところで。松浦さんにも聞いてみたいですが。
松浦慎一郎さん(以下、松浦さん):監督もおっしゃっておられましたが、本当に、本人の努力としか言いようがなくて。これはもう女優、プロボクサー関係なく、プロボクサーでも与えられているメニューをこなしているだけじゃ、勝てないですし、自分の体は作れないし。見えないところで努力して、見えないところで自分で考えて行動してということができる方です。
監督:やはり目標かな。何かやるという目標があるから。
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松浦さん:エネルギーはすごく感じました。体作りひとつにしても、キャラクターにしろ、ボクシングにしろ。エネルギー量をうまく変換していった。
Q:前回のQ&Aに安藤さんが来てくださって、そのお話をしてくださったのですが。ボクシングを始める前のところから撮らなければいけないので、その段階ではちょっとポチャッとしていなければいけない訳じゃないですか。
監督:ただ、順撮りができなくて、中には同じ日に別のシーンを撮らなければならなかったり。彼女には本当に申し訳なくて。何かできないかと思って、たとえば、撮影の前に、松浦さんに来てもらってちょっと練習をやるだけで、彼女の目つきが変わったりとか。本当に人間の体ってこんなに変わるのかって。
司会:10日間ぐらいで、体重を絞ったと。
監督:いや、もっと短いかもしれません。もちろん、そういうふうにするという方法論だけではなくて、たどり着くもの、目指しているものがあるからできるんだなと。彼女のハードルが本当に高いので、こっちもそこまででいいよと言えないので。とにかく無限のハードルを作ってやってくれるので。もちろん新井さんもそうですけどね。新井さんも3ヶ月かけて一緒に練習していました。
松浦さん:そうですね。新井さんも一緒にトレーニングさせていただいて。僕もプロのトレーナーとして活動していた時期がありましたが、2人とも現役のプロボクサーよりも練習して、より研究して、むしろ表現するという捉え方、アプローチの仕方が、それ以上だったので。
監督:新井さんの対戦相手は、元日本チャンピオンですからね。あの方のパンチにめげないのでびっくりしたのですが。
司会:すごいですね。新井さんはもうボクサーの役はやりたくないって。辛すぎて。ササミを一生懸命食べて(体を)絞ったとおっしゃっておられました。
Q:最初の自転車を漕ぐシーンなど、何度も同じ曲が使われていたかと思うのですが、その意図を教えてください。
監督:台本を読んだときに、「一子のブルース」を作ろうと。これは台本を一読したときに聞こえてきまして。撮影に入る前に、「一子のブルース」を発注しました。出来上がった瞬間に、まだ画も見ていないのに、音楽が一発でものすごいものをあげてきたので。僕も60年代、70年代の映画で育っているので、ああいう映画のリフレイン、音楽のリフレインというものを、映画音楽として捉えて使ってみたい。これも音楽があがってきたのを聞いて、これは、最初から最後まで使えるなと。
Q:メインキャラクターの方だけでなく、たとえば、楽天イーグルスファンのお父さんだったり、ジムのオーナーの方が何種類ものカップラーメンを食べ分けたり、他のキャラクターにもすごく演出を感じたのですが、それは脚本の段階からなのか、それとも、監督の脚色なのかということですが。
監督:もちろん台本にいろいろキャラクターが書き込まれているのですが、ただその中でもっと色づけして、おっしゃってくれたようにお客さんが観たときに印象が残るような、そういう映画を観て育ってきたので、一回しか出てこない人でも、印象が残るというように。今回、非常に上手な方が集まってくれたので、僕としては何か細かいところまでやりたいなと。以外と映画というのは、具体的なディテールが残るもので、そういうものを大事にしたいなと。お父さん役の伊藤さん、何かあれば。
伊藤洋三郎さん(以下、伊藤さん):普段は監督がアイデアとか自分で言って勝手にやってOKということが多いのですが、今回は、武さんのほとんどブレない、でも、柔軟な演出なので。僕も最初は、楽天イーグルス?と。僕の中では大洋ホエールズで。監督はそれもよぎったらしくて、やっぱり楽天で行きましょうということで。全然楽天のイメージがなかったので、こうやってみるとあのカラーがいいなと。
監督:色ですよね。弁当屋のエプロンだとか。お店の黄色いユニフォームだとか、一子の白い衣装とか。今回ユニフォームものだなと思って。色はこだわりたいと思いました。早織さんは、キャラクターを作っていたときはどうですか。あなたも大分いじられましたものね。全然違う人ですものね。
早織さん:本当に。喧嘩してましたよね。別人ですね。
監督:オーディションでも怒っておられた?
司会:どうして早織さんにしようと思われたのですか。
監督:上手だったからです。この人には引き出しがあると思った。ただそういう役はやったことがなかったので。
早織さん:そうなのです。やったことがなかったのですが、二三子という人の気性が私はすごくよくわかったのです。
監督:じゃあ、ぴったりだったのでしょう。本当によかった。
早織さん:ディテールとして、眉毛を抜いて行ったのです。やっと生えてきたのですが。
監督:いちばんよく分かったのは弁当屋のときですね。「唐揚げ5個」とか言ってたとき、「この人、眉毛薄いな」と。見るとわかりますよ。俳優部さんとは細かいところまで。松浦さんとも、トレーナーがカップラーメンを食べているときに、同じアングルにして同じところに立ってもらって、いろいろ細かいリアクションを取ってもらって。この人、本当にトレーナーとしてよかったのは、実際の試合を本当に経験されている方なので、彼の声が試合中も的確で、我々は編集しやすかったです。
Q:ご自身では、どういう感じで演技をしておられるのですか。
松浦さん:環境は監督が作ってくださったので、芝居をしているようよりも、一子という存在をトレーナーとしてトレーニングしただけです。
監督:試合の時間と休憩の時間は、ほとんどリアルなのです。ほとんどアドリブなので。彼女に言っていることなど。そこが胸に迫るところです。
松浦さん:それをOKしてくれたのは監督ですし、安藤さんも本当にすごいなと思うのは朝から晩までずっと何回も撮影をやっているので、その集中力たるやすごいなと思いました。
Q:安藤さんが好きでこの映画を見に来ました。とてもかっこよくて感動しました。この映画は音楽も特色があると思うのですが、特に、テーマソングにインパクトがあるなと思ったのですが、どのような過程でクリープハイプに決まったのか、お聞かせください。
監督:コンビニのテーマ曲じゃなくてですね(笑)。台本読んでもらってからです。最初に、ここにいる俳優さんですとか、プロデューサーの方も、松浦さんも安藤さんも新井さんも、皆さんそうなのですが、台本を読んで気に入っていただいて、ぜひ作りたいと、あとは監督にお任せすると言ってくださった。エンディングの画は最初に思いついていて、一番最後に彼女がもっと危険な道を歩み始めるのだと。あの野郎と歩き始めてしまったら、おそらくもっともっと厳しい人生が待っているだろうと。厳しい道を進むというところに対しての何らかの応援歌を作ってもらえないかと話したところ、あのような素晴らしい曲があがってきて。彼は画をみていませんから、画を見ずに台本のイメージだけで曲を作ってくれたのです。「痛い、痛い」というのも、僕らは撮影した後に曲を聴いてびっくりしたのですが。ホテルの前での安藤さんが「痛い、痛い、ちくしょう、この野郎」と言うのはアドリブで、僕らも腹をかかえて笑ったのですが、あれとシンクロして(曲が)あがってくるのですよね。本当に才能が集まり出すといろいろなものが共鳴するのだなと。
Q:他のアーティストさんの候補はなかったのですか。
監督:候補というよりも、第一候補で決まったので、すごくこの映画に合うんじゃないかと思ったので、オファーをして台本を読んでいただいたらお受けいただいたという経緯です。
Q:自堕落だった一子ががむしゃらになっていく姿に心が動かされました。脚本を作るモチベーションについておうかがいしたのですが、登場人物が自堕落な底辺の方々が多くて、そうした底辺の方々が勝ちにこだわる様を描きたかったのかなと感じたのですが。
足立さん:まさに、今おっしゃられたことがテーマで、それにテーマにしようと思ったのはどうしてかな?
監督:僕は、その時に仕事がなかったので、もう一人仕事していない人は誰かいないかなと思ったら、足立さんが仕事をしていなかったので、喫茶店に彼を呼び出して、仕事している人だったら無償でやるのは可哀そうなので、お金のない2人が集まってコーヒーを奢り合いながら、いや、僕の方が奢ってもらったことが多いかもしれませんが、シナリオを作らないかと話をして。その時には話したのは、「どこにでもいる女が戦う話を作りたい」と。どこにでもいる奴でいいんだよ、僕らみたいな、と。今観て思ったのですが、俳優さんたちにもよく話したのですが、「どこにでもいる人をやりましょう」と。実は、僕らが知っている人を出して、知らない人は誰も出てない感じですね。意外と数は多いと思います。マイノリティーに見えるけれど実はマジョリティなのだと。そういうどこにでもいる人たちがいて、その人たちには、何か自分が目指している舞台に上がる権利ぐらいはあるだろう、それはどんな人間でも。叶うかどうかはわかりませんけれど、その権利を止める必要はないんだと。そして、それを止める奴もいないんだと。ただ、そこに向かうことだけは誰でもやれるはずだという思いでこの映画を作りました。足立さん、何かありますか?
足立さん:そういう思いと。あと、20年ぐらい前にこういうお店でバイトしたことがあったのと、8年ぐらい前に子供が生まれるときにお金がなくて、また似たようなお店でバイトしたときに、20年前と8年前とでは世の中の風景が違って見えたことにまず驚いた、というか、20年前は20歳ぐらいだったので、見えるものは当然違うのでしょうけれど。特に実際に経験した人たちが出ているわけではないのだけど、勝ちたいとか、変わりたいという感覚さえないのはまずいなと。勝ちたいと思ってほしいと願いを込めて書きました。
司会:タイトルは初めから決まっていたのでしょうか。
足立さん:タイトルは書き終わった後かな。
Q:いろいろな登場人物が魅力的で、どこかにいそうだなとキャラクターがよかったです。ひとりだけコンビニの廃棄を取りに来るおばさんが、ファンタジックな存在なのかなと思ったのですが、あのキャラクターを入れようと思った理由は。
足立さん:あの人のモデルは、あんなおばさんじゃないのですが、僕の周囲に若い子で、大ボラっぽいのですが、あながち嘘じゃないかもしれないというようなことをのたまう人がいて、そこから発想を得て書きました。
監督:僕もよく小田急線で出会う方がいて、地震の後、原発のことをよくいろいろと電車の中で発言をなさっていて、ああいう感じなんですけどね。根岸(季衣)さんにそれを話したわけではないのですが、根岸さんが読んだら根岸さんが知っている人をやりはじめて。いろいろな知っている人間が集まっているうちに、編集でつなげたら、すごくファンタジックな場面になってしまって。なんかあの人が妖精のような。よく足立さんと話すのですが、ああいう人たちに話しかけられる人と、話しかけられない人がいて、僕と足立さんは結構話しかけられるほうらしいです。だから妖精が見える人と見えない人がいるらしくて。最終的にはああいうつなぎになるとは思っておらず、すごくファンタジックな感じになったのは、演者の根岸さんの力だと思います。
Q:安藤さんと共演してインスパイアされたことがあれば教えてください。
伊藤さん:インスパイア。先ほどみなさんおっしゃっていましたが、男優は結構、昔からハリウッドのデ・ニーロ・アプローチみたいなことが流行るという、みなさんすぐやるけど、女優さんでは聞いたことがなくて、間近で見ていて、しかも彼女は初対面だったのですが、打ち上げのところで会ったら、全然別の顔だったんですね。すごくきれいな人で、映画では違うということではなくて、普段はすごく清楚できれいな人だなと思って。またあの中でも変わっていくというのがすごい人だなと。びっくりしました。
早織さん:私は現場で共演するときはほとんど話さなかったです。でも、話さなかったというのは、安藤サクラさんという女優をすごく信頼していたんですね。この言い方はおこがましいのかもしれないのですが、役者と役者としてかなり信頼していて、ボートの喧嘩のシーンもリハーサルはしたものの、やはり、現場でやってみないと分からないというところがあって、ある程度動きをつけたあとは現場でワンテイク、一発本番でやって。その時は本当にゾクゾクしました。楽しかったとしか言いようがないですけど。
あとは、数シーンお弁当屋さんで共演させていただいて、最後のリング上のシーンは撮影全体の一番最後の最後ですね。その時に久しぶりにリング上の安藤さんを見たときにただただ美しくて、その姿に脳天が痺れるほどあんなに感動した女優さんというのは初めて会いました。それから心底惚れましたし、大好きな尊敬している女優さんです。
松浦さん:ぼくは、芝居って技術とか理屈とかいろいろあるとは思うんですけど、もちろんそういうものもあった上で、安藤さんが腹のそこから吐き出してくるよう、滲み出してくるようなものを毎回ぶつけてきたんで、さっきインターバルのアドリブのことをおっしゃっていたんですけど、僕自身もそれにインスパイアされたというか、実際あれぶっつけで出てきた台詞なんですけど、やはり、向こうはそういうエネルギーが出てくる、こっちもここから出てくるものは考えてもいないものというんですかね、こっちも裸になれるというか、そういうものをやりながらすごく影響を受けました。
監督:本当にキャストもそうですし私もそうですし、スタッフもそうなんですけど、なんかみんな彼女に引っ張られるというか、新井さんも素晴らしいサポートをしてくれて、今日映画を観て本当に新井さんうまいなと、一子という存在を立たせるためにもものすごい細かいことをやってくれてるんですが、やはり、安藤サクラという人は女優を超えて人間力だと思いますね。女優魂とかいいますけれども、そういうものじゃなくて、やれるもんならやってみろというぐらいな、安藤サクラさんという存在ですよね。人間の力ですよね。シナリオあがってもこれを一体誰がやるんだろうとなった時に、安藤さんしかいないだろうと思っていました。彼女がオーディションに来てくれて、色んな人と会った中でやはり彼女がいいなという話になった時に、今日見ても思いますけど、安藤サクラがこの世にいなかったらどうしよう(笑)、と思うくらい、我々もまだ継続しているくらい彼女に影響を与えられたというか。そういう意味では良い作品に出会えた。僕も出会えたし、足立さんが書いてくれたので、良い作品に出会えたなと思っています。
Q:とても面白かったです、ありがとうございます。アドリブは作品の中でどれぐらいあるのでしょうか。何ヶ所かあれば教えてください。
監督:試合の松浦さんのああいうところはアドリブだと思うのですが。
Q:お肉を食べるシーンなんかもアドリブでしょうか。
監督:あれは全部書いています。ただあれも一発ワンカットというか、あれしかやっていないので、あれは俳優さんの呼吸です。書いてある台本に対しますけど、あの撮影場所の中で俳優さんのやるものを全部僕らが撮るだけで。ただ、全部書いてました。あの人たちが言っていましたが、非常に台本に忠実にやってくれています。ほとんどアドリブ無いです。それがすごく助かりました。
Q:箸が折れたのは?
監督:あれは僕の指示です(笑)箸を折れやすくして。初めは普通の箸だったんです。本番直前に割り箸に変えろと言って、間違えなく折れるじゃないですか。彼女もその話を聞いているので、やはりあそこに持ってくるんですよね。ただ、俳優さんに直接言うことはないのですが、スタッフの話をみんながよく聞いてくれているので、監督が何かを変えたときというのが、俳優さんは敏感に感じ取ってくれるので、それで演技を合わせてくれます。